ザ・インタビューズ転載日記(好きな食べ物)

一番好きな食べ物をひとつだけ挙げるとしたら?



「パクチー」「鴨肉」「ユッケ刺し」「砂肝」「ピータン」「長芋」「慈姑」「百合根」「じゅんさい」「なめこ」「南瓜」「茄子」「パプリカ」「タピオカ」「黒酢」「ヨーグルト」「うなぎ」「あなご」「こはだ」「活タコ」……などと鮨屋のネタ札のように読み上げていけば無限に思い浮かびますが、「好きな食べ物を」と言われてこれら「食材そのもの」を挙げるのは、ちょっと何か違うような気がしてしまいます。

では「満願堂の芋きん」「一六タルト」「まるごとトマトゼリー」「八竹の茶巾寿司」「麗郷の芥子で食べる白髪ネギ」「目黒とんかつとんきのキャベツ」「さんばんのメンチカツのソースでクタッとなったところ」「大学生協で売ってた中華おこわおにぎり」「PRONTOにあったガスパチョ風パスタ」「札幌のあのなんとかいう喫茶店のランチプレートの脇についてくるうどんみたいに太いナポリタン」などと個別具体的に挙げればいいかというと、それもちょっと何だかズレているように思います。

あるいは「十割蕎麦」「パッタイ」「ミーゴレン」「ソーキそば」「フォーボー」などと一般化して答えることも可能でしょうが、どんなに好きなメニューでも、不味い店のそれなら別に好きでも何でもないですよね。ていうか私、iddyのプロフィール見たら「好きな食べ物」の欄に「そば湯」って書いてある……そう、どんなに蕎麦が美味しい店でも、最後にそば湯が出て来ないと本当にがっかりしてしまって、二度と行きませんものね……。

ことほどさように考えれば考えるほど難しい質問なので、ひとまず「ぎゅうひ」と即答いたします。

ぎゅうひ。どうですか、ぎゅうひ。考えてもみてください、ぎゅうひより素敵な食べ物がこの世にあるでしょうか、いや、ない。そうでしょう。味がどんなお菓子だろうと、ぎゅうひ入りなら、それだけで幸福。もちろん、ぎゅうひ単体ぎゅうひそのものでも幸福。餡とかアイスとか包んでる奴らは甘い、甘すぎる、そもそも私は甘党ではないのだから、中身よりもぎゅうひのほうが大事です。中身を捨ててでもぎゅうひを堪能したいです。わざわざぎゅうひ入りと謳うからにはぎゅうひ9その他1くらいの割合であるべきだ。ああ、ぎゅうひ。求肥と書いても幸福。牛皮と書いても幸福。ぎゅうひ、と音に聞くだけで幸福。ぎゅうひ、と口にすればさらに幸福。くるみゆべし、と言っても幸福。生八橋、と言っても幸福。羽二重餅、と言っても幸福。みつ豆の上の緑とピンクのやつ、と言っても幸福。ああ、ぎゅうひ。ここまでくると、食感がぎゅうひっぽければ、いっそぎゅうひじゃなくても幸福。ふまんじゅうも好き。大根餅も好き。じつに素晴らしい食べ物だと思います。おうちにぎゅうひがないときは、自分の耳たぶを触って食べた気になっています。願わくは花の下にて全身すっぽりぎゅうひにくるまれたままいつまでもいつまでも安らかに眠り続けていたいです。