2017-12-05 / 東京の地図が書き換わる

11月21日の昼便で日本へ向けて出発。何に驚いたって、JFK空港の保安検査場で素通りしろと言われたこと。「Go, Go, PC, Phones, Everything, Inside!」という調子で、靴も脱がず、カバンから電子機器も取り出さず、セキュリティシアター(360度スキャンされるやつ)もなし、コートだけ脱いでゲートをくぐるのだが、ゲートのランプも点灯していない。こんなザル状態の保安検査、日本の国内線でだって受けたことがない。JFKの、国際線ターミナルだよ? 一応、事情をざっと検索してみたのだがとくに言及している記事も見つからず、緊急で決まった現場職員のストライキか何かなんだろうか? と心配になる。それか、乗客にまったく気づかれないかたちの新しい監視システムを試験運転中だとか? 結局、最後まで謎のままだった。並ばずに済んでラッキーだったけど、毎回こうだとそれはそれで不安だ。

機内では『ワンダーウーマン』と『キング・アーサー』を観る。どちらもそれぞれに素晴らしい映画、おすすめ。とくに『ワンダーウーマン』は前評判がよかったので相当期待値を上げていたのだが、「肉体的快楽論」のくだりと、「それでも、私は行く」とノーマンズランドに飛び出して行くところはやっぱり、グッとくる。ラスボスにだって改変できたはずのドクターポイズンを巨悪として描かないのもよい。あと観ながら思っていたのは「永野護は、つまり、コレをやりたかったんだよね?」と。ラキシス@WW2ベルリン攻防戦の話です。ほらー、長期連載でダラダラやってる間にハリウッドに先越されちゃいましたよー、でも私はコレあなたの漫画で読みたかったよねー、と残念な気持ちになる。

『キング・アーサー』は、ただのガイリッチー映画だった、が、それがいい。すごくいい。もとの物語に思い入れが薄いぶん、『シャーロック・ホームズ』より好みだったとさえ思うのだが、興行的には振るわなかったのだろうか……。ガイリッチー、このノリでミュージカルかオペラの映画を撮ってほしい。あと一応アニメ版『打ち上げ花火、〜』も観たんですけど記憶から消しておきます。私は岩井俊二はセーフもセーフなんですが、そこに大根仁と川村元気が乗っかって実写がアニメになるとこんなにもアウトになるかと絶句した。「岩井俊二ファンは観ないほうがいい」と言われていたのはこういうことか。英語字幕付きで見ていたのでセクハラネタが一層キツい。松田聖子も観月ありさも松たか子の無駄遣いも要らんやろ、「打ち上げ花火」という言葉から想起される記憶には奥菜恵の映像だけ残しておきたいよ私は。

22日夕方着、竹葉亭でうなぎを食す。年に一、二度、帰国時だけ、きちんとした店で節度ある量のうなぎを食べる、と決めていて、他ではいっさいの鰻食を断っている。絶滅させたくない好物だからです。ガイドブック片手に辛抱強くテーブル席があくのを待っているアジア系観光客、さすがにやりすぎだろ時流を鑑みろよってくらい無節操に贅沢うなぎディナーを満喫している日本人サラリーマンに混じって、いろいろ物申したいことはあるが黙々とお重だけ食べて帰って寝る。

転居して2年以上が経った。東京も、もうすっかり「知らない街」という感じがする。たとえば人とごはんを食べるときは大抵、お店を選んでもらうようにしている。私が行きたい懐かしい店は、もうなくなっていたり、だいぶ味が変わったりしているかもしれない。「到着した晩に銀座でうなぎを食べる」というのは完全に旅行者としての習慣で、東京在住の頃には竹葉亭ってもっと特別な日の敷居が高い店という認識だった。そうやってゆっくりと自分の中で東京地図が書き換わっていくのを感じる。前に来たときはまだオープンしていなかった銀座SIX、あるいは、すっかり外装が新しくなり舗道も含めて「ネオ・花のみち」の様相を呈している日比谷シャンテなどを見上げて、ちょっと怖いような気分になる。どちらも、帰国前に足を踏み入れてみたら何も怖いことなかったけどね。六本木も同じで、「ここは昔、これこれこういう用事でしょっちゅう通った裏の近道」ということを歩くとハッキリ思い出すのだが、そのことが今の自分の人生と直接結びついてはいない感じ。なるほど、みずから選んで場を移し、そして一定の時が経つと、こんなふうに過去を置き去りにすることもできるのか、と吹っ切れたような思い。

23日、余力があれば午後までコミティアへ行きたかったのだが、そんな余力は、もちろんなかった。アメリカでは絶対に食べられない繊細に和風アレンジされた中華料理を食べ、kamuroへ立ち寄って夫婦で眼鏡を新調。のち六本木でオトコのカラダ*チャンネルの生放送番組「【文庫化記念特番】岡田育✕金田淳子✕二村ヒトシ*オトコのカラダ*生放送 #10」を収録。うっかりしてたらタイムシフト視聴の期限を過ぎていた! ので、自分で見返せてはいないのだが、結構面白い話ができたんじゃないでしょうか。収録前、こりゃもう飲まなきゃやってらんないね、とスタッフと一緒に近所のドン・キホーテまで酒を買いに行ったのだが、あまりの物量に涙が出そうになる。帰国時には必ず立ち寄るビックカメラやロフトでも思うこと、ただただ「すごいな、日本」という感想です。業務用のポテチとか、米国産とは比べ物にならないほど食べやすいビーフジャーキーとか買い込む。結果的に、飲みながら放送してよかったと思う。

収録後もそのまま、同じ場所で打ち合わせを兼ねたグダグダの慰労会。モニタとして使っていたテレビにNETFLIXがつながるのをよいことに『ハウスオブカード』のセンチネル軍事大学回を流してもらい、「アンダーウッド夫妻はやおい」をプレゼン。吹替版って初めて観たけどこっちもエロいな。ところでフードファイターとして名を馳せる文庫担当編集Kさんの配偶者の話になり、なんと私が高校生の頃から知っている男の子と大学同期同士で結婚していたのが彼女だと判明、めちゃくちゃ驚く。ちなみに、オカキモチ関係者で東宝ミュージカルの話が通じるのはKさんだけ。番組中では二村さんが酔って大変なことになっていたが、慰労会の最後は私もすっかり泥酔して「育三郎もいいけど! 禅ちゃんも! よろしくお願いします!」と泣きついていた。

というわけで、文庫版もよろしくお願いします! 12月21日発売! 番組内で本邦初公開した美麗な表紙もそろそろお目にかけられるはず!

『オトコのカラダはキモチいい』(2017)

このあと新潟と佐渡を回る旅、関西出張という名目での『レディ・ベス』大阪遠征、太地くんの王座就位式、その他のもろもろを終えて帰国。相変わらず時差ボケがひどいので小出しにしておく。新潟へは久しぶりに将棋竜王戦を観に行った。決定局ではないけれど、羽生永世七冠が生まれるその直前の姿を生で観られて本当によかったです。改めて、おめでとうございます。

2017-11-20 / 四谷、もつ鍋、時差のない暮らし

ちょっと日本行って帰ってきました、今は12月5日。また日記をためていたので思い出せる範囲のことを書いておく。
11月のサンクスギビング前、時事的な需要もあり、久しぶりに『日の名残り』や『美女と野獣』など昔懐かしい映画を観る。それぞれ感想はTwitterに書いたりしたので割愛。初見の夫の感想が面白い。夫はずっと『HOMELAND』の二匹目のドジョウを狙ったような、精神を病んだ腕っぷしの強い女主人公が謎を解くような新作ドラマばかり観ている。どの女も同じように精神を病んでいるので私には区別がつかない。最近の流行りなんだと思うが、「精神を病んでいても、病んでいるからこそ、物語の主人公になれる」というストーリーが一般視聴者にもてはやされるのは現代社会の闇っぽくもある。
はてな編集部からお声がけいただき「SUUMOタウン」に寄稿した〈昼はコドモ、夜はオトナのものとなる「四谷」 飲んで飲まれて歩いて帰れる街で暮らした日々〉という記事、あっと言う間に300以上のブックマークがついて驚く。あんまり大した内容じゃない……というと謙遜が過ぎるかもしれないが、もっとずっと実用性の高い記事が多いなか、ごくごく私的な体験だけを書いてこれだけ多くの人に読んでもらえるというのは驚きとともに嬉しい気持ち。そして断言できる、バズッたのは、はてな編集の「編集」の力です。打ち合わせや下調べから校閲、遠隔指示での写真撮影、クライアントチェックに至るまで、ものすごく質の高い編集を手がけてくださって、久しぶりに大船に乗った気持ちで原稿の手直しができた。そういうことを感じるのが、紙の雑誌媒体ではなくウェブ媒体、しかも、はてな!! ということに隔世の感がある。
ちなみに通っていた女子校の所在地について書いたのは今回が初めて。『ユリイカ』志村貴子特集と併せてお読みいただければ、だいたいどんな雰囲気の中で思春期を過ごしたのかおわかりいただけるのではないだろうか。ずっと出身校名を伏せているのは、基本的に学園内情についての取材禁止という校風が続いていて、私が何か書くことで現役の在校生たちに迷惑がかかってはいけないから、というだけのことなんだけれども、さすがにそろそろ時効なんじゃないかと思って書いてみた。こういう機会があると吹っ切れて、『ハジの多い人生』とか、今から全部書き直したくなるね。
その他には、渡辺千賀さんの米国養子事情についての記事から、あれこれ考えたり
17日は、佐久間裕美子さんと唐木元さんとランチ、ブルックリン「NORMAN」にて。食について意識高くならざるを得ない事情のこと、ニューヨークのまだ知らない場所について、女子校生活が人生に落とした影について、などなど。日が傾くまでしゃべっていた。のち、友人宅で餃子ともつ鍋を食べる会。しこたま酔った。もつ鍋は「博多トントン」のテイクアウト。夕方、店内へ引き取りに行ったら待ち行列のできる満席、もうもうと湯気の上がるなかどのテーブルももつ鍋に舌鼓を打っており、「えっ、換気……うわ、カナダグースとかモヘアとか着てる人いますけど……」と心配になったのだが、翌日の匂いが怖くてもつ鍋が食えるか、というあの日本人と同じ感覚をニューヨーカーもとっくに身につけているのかもしれない。いや服装は考えたほうがいいと思うけどね。
19日から20日にかけて、『オトコのカラダはキモチいい』文庫版の入稿責了を終えて、すっかり日本語脳に。昼夜逆転でSkype会議をしていたりもしたので、これでは、ほとんど日本にいるようなもの。21日の朝便で出発してからもまったく時差に悩まされることはなかった。むしろ帰ってきた今がキツいです。というわけで次回は日本滞在記。
 

2017-10-29 / 我ら息絶えし者ども

25日はデザイン仕事の打ち合わせのあと、「英語圏で仕事する際のモヤモヤについて日本語で愚痴をこぼすプロフェッショナルの会」というようなものへ参加。今回が二回目なのだが、みんな話が面白い。とくに、若手経営者たちの生々しい話を聴けるのがいい。「人を雇う」というのは、私はたぶん今後もしないことなのだけれども、人を雇っている人たちの言葉は、やっぱり重みが違うよな。誰かの人生を背負って働く人々は、掛け値無しに尊敬できる。一方、大きな看板を背負って雇われながら働く人たちも、ただ雇われているという以上の使命感を持って働いていて、その感じについてはかつて私自身も熱く抱いていたものなので手に取るようにわかり、直に触れるととても懐かしい。初めて行くラオス料理の店と、テーブルにエイ革を張ったカクテルバー。
26日は講演会のリハーサルがあり、直前に結構頑張ってスライドを作ったら、それで半日も過ぎてしまってびっくり。もう一つの心配していた仕事はつつがなく終わりに向かっている様子。立派なマントルピースのある独身女子の部屋へ上がり込んで、豪奢なすき焼きをごちそうになる。
27日はファッションドローイングワークショップへ。とある人へ『オトコのカラダはキモチいい』を手渡しに行く。そこでの立ち話から生まれた「#日本の漫画とファッション」という研究プロジェクト、一も二もなく実施決定。「こういう話をするといいのでは?」「この漫画のこと忘れてない?」といったご意見ご感想、以下のTwitterにリプライするかたちでコメントをいただければ反映させます。そのうちアンケート調査などもしてみたいけれど、まずは勉強会の開催ですね。


ここまで連日、日本語で日本人と話す日本語漬けの日々。本当はよくないんだよなと反省しつつも、一つ一つを足がかりに、英語圏オーディエンスに向けてできることを積み重ねていきたい。時間がたっぷりあるだけでもダメ、黙々とインプットするだけでもダメであり、もちろんだから、闇雲にアウトプットしているだけでもダメなんである、たぶん。


28日は、月末で閉まってしまうガヴァナーズアイランドを再訪。ピクニックポイントは「パンプキンポイント」と名称を変えていて、島内至るところにカボチャが転がって、大人も子供も仮装して、トリックオアトリートを満喫していた。我々ものんびりそれに参加していたのだが、途中で停めておいたレンタル自転車を盗まれてしまう。若い黒人男女のカップルで、途中で追いついて問い詰め、「こちらが金を払ってるんだから今すぐ返せ、この番号の自転車に紐づいた支払い証明のチケットもあるんだから!」と怒ったのだが、ものすごく堂々と表情一つ変えずに「これは私たちが買ったんだ」と虚偽の主張、挙句にスマホで私の顔を動画に撮り始め、最終的には漕いで逃げながら、半笑いでこちらに向かって侮蔑音を鳴らす始末。悪ガキは悪ガキだなぁ。キツネ目のジェスチャーこそされなかったが、アジア人のオバハンなんかに逃げ足で負けっこないと思ってるんだろうし、仲間内に動画をシェアして笑い者にするんでしょうな。
もちろん狭い島内のことなので、貸出所へ出向いて正当性を訴えると話が通り、ちょっとディスカウントで精算を済ませてのち、屈強な男性係員が「どっちへ逃げた?」とだけ訊いて、自転車でスッ飛んでいった。本物の捕物帳はここからだ。しかしまぁ、見つけたその場で自分で「口論」に勝って引きずり下ろせなかったのは、やっぱり無力さを感じますね。そんなのこれからも一生ずっと、無力感に苛まれながら生きていくんだろうけど。日本語圏では私だって日本語ネイティブの若者というだけで万能感を持っていたのだから仕方ないが。
言われてみれば私、英語で「議論」はさておき「喧嘩」をしたことがない。こんなときいつも、クラスメイトの子がボーイフレンドとの至極どうでもいい痴話喧嘩を重ねながら、どんどんスピーキング上達していったのを思い出す。ネイティブの人々は「恋愛ついでに英語を上達させようというのは絶対によくない、時間を無駄にするだけ、ちゃんとした有償の先生につくほうがずっと近道だ」と言うんだけど、それはさておき、口喧嘩スキルを上げる機会だって必要だと思うんだよなー。若者に怒鳴り散らされてちょっと怯んでしまったのだが、正当性はこちらにあるので、あそこで怯まないスキル、本当に大事なのよ。

日曜は朝から天候が崩れた。日本も台風らしいが、こちらもなかなかの暴風雨。週末かけて『ハウスオブカード』は最新最終回まで追いつき、ついでに夫のオットー氏(仮名)のために「秋のエリザベート祭り」を開催。帝劇『エリザベート』2016年版(Black)宝塚歌劇『エリザベート』1996年初演版と特典の歴代「死ねばいい」ダイジェスト映像(そんな趣旨ではない)、ついでにネットに落ちていた石川禅フランツの扮装映像やら、山口祐一郎と井上芳雄の「闇が広がる」やら、あれこれ見せる。前回の「夫を育てるミュージカルDVD祭り」は今年の7月4日よりも前だったようで、次回はまた少し時間を置いて、『王家の紋章』でも見せたいなー。『レディ・ベス』も映像化が決まって嬉しいですね。
「やっぱり万里生はお歌が上手だねぇー」と言われるたびに「でも禅ちゃんはここもっとミラクルメイクでマザコン皇帝っぷりと演技込みの総合力では負けてなかったから! ちょっと戦争とか指揮してみたいボクちゃんのもぎたてフルーツ感やばかったから!」と何度も何度もうるさく言ったせいだろうか。成河ルキーニが出てくるたびに「成河! 成河! 成河! 成河!」とオタ芸していたからだろうか。あるいは夫婦で闇広ダンスの練習を強要し、一発宴会芸「山口祐一郎の真似」(見えない緞帳衣装を揺らしながら両腕を大きく広げてベイマックスを抱きかかえるように前後にニャンニャンする)まで仕込んだせいだろうか。それとも、轟悠ルキーニと無印良品の部屋着姿の夫を見比べて「ちょっと何なの、同じボーダー柄でもこの着こなしの差! まるでダメ、全然違う、同じ男なのに! って理事様は女だけどな!」とdisったからだろうか。「君、さっきから『うわぁ〜、お花様きれい〜』しか言ってないですけどな、冷静に考えてもごらんよ、20年前に息子ルドルフ役だった香寿たつき様が、20年後に姑ゾフィー役やってんのに、お花様はお花様でずーっとシシィなの、怖くない……?」と怪談を語ったせいか。
最終的に夫は疲れ果てて夕方から知恵熱を出して寝込んだ。悪夢に魘されているようだった。ごめんね。オットー氏のためにしたことよ。すべて彼のためにしたことよ……。

2017-10-19 / 絶やさない

このところ在宅作業が続いていて、日記を書くモチベーションがまるでないのだが、「日記をやめる」ことができない、という感じの病に罹患し続けているので、何かしら書く。絶やさない。何もしないけど絶やさないことだけをする。

10月8日は「Elsie Fest 2017」というフェスに行ってました。ダレンクリス主催、セントラルパーク開催、「ミュージカルオタクのためのワールドハピネス」という感じの規模。いや、盛った。規模は京浜ロックフェスティバル。究極のインドア派であるブロードウェイオタクたちが集って「ドレミの歌」で大合唱したり、アランメンケンメドレーに狂喜したり、そんな音楽イベントです。基本的にノリは「再結成だよ! 『Glee』ファン感謝祭」であり、私はちょっと正直そこには乗り切れなかったんだけど(だって隣で大号泣してる子とかいるんだもん……じつは全話観てないとか口が裂けても言えんわ……)、隅々まで本当に楽しかった。夏っぽいイベントはもうお腹いっぱい。打ち止め。

13日の金曜日、ファッションドローイングワークショップのあと、QUADシネマで映画『TOM OF FINLAND』を観る。夜はミッドタウンに移動して、「Basso56」という店で11月に登壇する講演会の打ち合わせ。『TOM OF FINLAND』はもしかしたら今後、日本語字幕付き配給上映がないかもしれないと思って慌てて観に行ったのだが、フィンランド語のパートが多く、そこは英語字幕がつくので、とても観やすかった。そうか、ヨーロッパの映画とか、もっと映画館に観に来ればいいんだな、英語字幕ついててアメリカ人も英語字幕で観るんだから。と当たり前のことに気づく。最初の二年間はそんなこと考える時間もなかった。映像が美しいんだけど、お話はとてもベタに作ってあって、私はそのベタさがとても好きでした。マイノリティとアメリカ、祖国と約束の地、死と未来。『アリージャンス』のことなど思い出す。

14日はパーソンズ美術大学の同窓会と称して、総勢7名の宴会。「Tableside」でハッピーアワーのグラスワインを飲み、「UpState」で牡蠣を2ラウンドしてフェトチーネで〆、「Vaci e Vendetta」でダラダラ二次会のち、0時閉店間際の「Van Leeven」に駆け込んでジェラート食べるという、イーストヴィレッジのはしごフルコース。大人数で「UpState」なんて狂気の沙汰だと思ったが、6名席までなら意外と行けた。「Vaci」は架電など不可能なので、会計後にダッシュで先回りして円卓席を確保、他のメンバーにはLINEで位置情報送って追いかけてきてもらう。ということをしたんだよ、と夫に言ったら「編集者という病……!!!」と爆笑される。まぁたしかに、なんで私が後輩たちのために走り回ってアテンドして「接待」してんのかよくわからん。でも「Still House」の前辺りを走ってるとき、CM撮影の現場に入ったとき以来の「わたし、生きてる……!」という実感に襲われたので、まぁ好きでやってんですな。全員から「どの店も美味しくて、いいエリアですねー」と言われたので「接待」大成功、満足である。だが「Vaci」はオペレーションが最悪だから土曜の夜でも必ず空いていると踏んだだけで、事前に予約さえ取れたならもっといい店はいっぱいある!

「Van Leeven」のパンプキンスパイスは、「スーパーヒーローに、変!身!すぅ!る!」(by小沢健二)と歌いたくなる味。昔も書いたかもしれませんが、ハロウィーンって結局、コスプレパレード以上に「香り」と「味」だよなぁ、まぁ、クリスマスも突き詰めるとそうだけど、クリスマスについては終了後も余韻が長く(なんなら冬の間じゅうずーっと)続くので、ハロウィーンとサンクスギビングをテキパキ過ごしながら期間限定フレーバーを早めに堪能するというのは、この国においてとても貴重な、季節を感じられる行為。

どこででも話しているのは、「女が性を語ること、女が女の手によりメディアを編んでそれをブロードキャストすること、すべてが社会の意識変革につながると信じている」というようなこと。そんなの当たり前じゃん、と言われるかと思いきや、日本語でも英語でも、まだまだ伝わらない部分が多くて歯がゆい。先日、ある日本人女性から「セックスの話は、夜に酒を飲まないとできない」と言われて、大変カチンと来た。仲の良い相手だから思わず声を荒げて、「昼日中からセックスの話ができないのはなぜなのか、あなたにそれを『できない』と思わせているものの正体は何なのか、胸に手を当てて考えてみてほしい。『婦人公論』の編集者だった頃から、『オトコのカラダはキモチいい』の文庫化作業をしている今まで、私はずっと、その『何か』と戦い続けている」と答えた。いつか伝わると嬉しい。そんな気持ちのなか、はるばる日本から川上未映子責任編集『早稲田文学 女性号』をようやくゲットしたので、これからじっくり読ませていただきます。



昔やって全然うまくいかなくてやめてしまった「tweetのよりぬき」でもしてみましょうか。クリックするとそれぞれのスレッドに飛んでいって、ちょっと引くほどの長文が読めます。秋の夜長にどうぞ。

▼一般人の承認欲求が加速し続けるとどんなババアが生まれてしまうのか想像もつかないという話。

▼池上線が無料乗り放題になったときの五島帝国臣民(東急電鉄沿線住民)の話。

▼BLの話。昔、「BL苦手な腐女子」を名乗っていたことがある。今も気持ちはあまり変わらない。

▼最近、自称オウンドメディアから目を疑うような依頼が増えていてその「裏」を想像した話。

▼日本人女子が海外で受けるナンパについての考察。

▼岡村靖幸が(意外にも)息が長くずっとかっこよく居続けているという話。

▼秘密選挙と、投票行動をSNSで書くことについて。

▼オタクあるある、としての「二次元限定性癖」の話。主に近親姦について。

▼HIPS「夜をぶっとばせ」が、『オトコのカラダはキモチいい』の原点だったのでは? という話。

▼「登場人物として神の設定に背く」のは楽しい、という話。

▼「VR技術に期待すること」と「面白さ」の難しい関係。

▼ストリートスナップを受けて咄嗟にポージングするのは無理ゲー、という話。

▼精神科医と、精神疾患治療中の18歳女性との性行為は「醜聞」か? という話。

▼「死んだら書簡やゲラよりもtweetを有難がってほしい」という話。

▼骨格診断から、おしゃれ日米比較のような話。

▼Adobe Senseiによって変わるのは「プロ養成学校の教師(せんせい)」、という話。

▼ヤンキース田中の通訳の話。

▼愛し愛されて生きる帝国劇場と石川禅、という話。

▼「CDを聴く」行為のボーホー性を、ボーホーでも億劫がるようになる、という話。

▼ジュリー下戸さんがヴィトンの財布を買ったので、私も買い物の話がしたくなった話。

以上。どれもちょっとしたコラムくらいの長さがあるんだから、全部ブログに書けばいいのにね。でもブログにいちいち書いてる暇がないくらいには、目の前のことに貧乏暇無しなんですよ。本当に。

2017-09-04 / フリーランス1年生

■サイト更新について

またしても数ヶ月のご無沙汰、皆様いかがお過ごしでしょうか。前回更新時、フィードが不調と書いたのですが、記事のアーカイブ構造がガタガタになっていたことに気づかず放置したまま4ヶ月近く経ってしまいました。申し訳ない。パーマリンク設定をいじるのと同時に、要らんプラグインを入れたり抜いたりしたのがまずかったみたいです。公式サイトとは名ばかり、本人がWordpressでシコシコ作っているので何卒ご容赦ください。子カテゴリのリンク(当ページでいう左側の赤文字の幾つか)が稼働してない不具合は確認しています。その他、過去記事などのリンク切れがあったら教えていただけると助かります。本当はもうちょっとブログっぽい作りにして、もっと気軽に更新したいのだけど、そういうのは TwitterInstagram でやっています。

これを機に、今まで自動生成していた記事一覧を捨てて、ゼロから作り直しました。 ここね 。じつは私、2012年以降、仕事の全容をどこにもまとめていなかったんですね。正確に言うと、何か露出があるたびブログをこまめに更新することでそれに代えようとしていたのだが、結果はご覧の通り……。なので、一念発起して新規スプレッドシートを作成したよ。毎年の確定申告や年賀状送付のときにやるべきアレです。昔はスケジュール帳を見れば一目で把握できたんだけど、2015年に同じスケジュール帳で大学時間割を入れるようになってから、いろいろ崩壊したよね……。とにかく、見栄えよく自動生成すると自分でもそれが絶対だと思ってしまい、うっかり抜け落ちた情報に気づけないのがマズい、というわけで結局手動で並べ直しました。21世紀とは思えない。こちらも、手作業につきまだ完璧には反映できていないのだが、指差し確認しながら徐々に手を入れていきます。それにしても、2012年ってもう5年も前なのか。年取るわけですな。

■近況について(日本フリーランス5年生)

日本語圏では、一番大きいのは『オトコのカラダはキモチいい』の増補改訂版文庫を刊行すべくあれこれ計画中です。フライングで書誌情報が出てしまったようだが、さすがにあの刊行日程では出ないかな。で、ご注目いただきたいのは、文庫版が出てしまうということは、親本を購入することができなくなることを意味するんですね。雲田はるこさんの美しい装画にくるまれた、大きなサイズの単行本、在庫僅少となっております。買うなら今です。ここから!!!! あと外国語翻訳版のオファー、引き続きお待ちしています!! 私が英語で自己紹介すると一番食いつかれるのがこの本の詳細です、自慢じゃないけどめっちゃ需要あると思います!!

『オトコのカラダはキモチいい』(2017)

また、「キノノキ」で『天国飯と地獄耳』が再開して、今のところ順調に連載しています。もともと紙の雑誌『新潮45』に連載していたものですが、もう少し原稿がたまったら書籍にする予定。あとは、講談社「現代ビジネス」やKKベストセラーズ「BEST T!MES」などにも不定期で寄稿しております(本当は定期でなければいけない)。それから、「cakes」で秋から新シリーズの連載を準備中。そして「note」も整備して、有料コンテンツ始めようと思っています。しばらくお待ちください。『女の節目』書籍化が止まっているのはそろそろマズい。というのと、あともう一つ進行中の企画もある。「学校が!」という言い訳はもうきかないので、2015年夏からもろもろ滞っていたものを再スタートさせたいところです。

■近況について(米国フリーランス1年生)

今年5月の大学卒業からいろいろありましたな……。まず、二箇所勤めていたインターン先のうち、一つを円満退職して、一つとフリーランス契約を結びました。よそからもちょこちょこ臨時の声掛けをもらっては、新人グラフィックデザイナーとして活動しています。アパートメントの契約更新もして、幸い恐れていたほど家賃も上がらなかったので、もうしばらくはニューヨーク拠点で働きながら暮らす予定。「住むからにはアメリカ社会に爪痕を残す」が目標だったので、無署名とはいえ、手がけた仕事が実際に世に出ていくのは嬉しい限り。学生時代とはまた別の充実感があります。

学生ビザで米国滞在している留学生たちは「OPT (Optional Practical Training)」といって、大学卒業後、専門技能に関連した仕事に就くことができる。というか、これはむしろ「学業の延長線上で実地研修を積む」ための制度で、あくまでも学生ビザの本分「学業」の一環である、特別な就労許可となる。詳しく正確な情報はググッていただきたいのだが、「卒業したのに無職のまま滞在」も、「留学内容と無関係な就労(飲食店でバイトするとか)」もNGで、最悪は強制送還だと脅される。つまり、世界中から集まってきた留学生たちは「デザイン学部から発行される学生ビザで渡米したら、卒業後の期間は何かデザイン関連の仕事をしていないと米国にいられない」わけだ(※だいぶ意訳です)。一方の企業側はといえば、安い労働力として学生を雇うのは大歓迎。とくに留学生たちは就労期間を途切れさせるわけにはいかないので、たとえ無給でもインターンの口に飛びついてしまう。それがわかっているから、大手インターン求人サイトにある大企業の募集条件は、ほとんど無給のものばかり。ウチの社名を履歴書に刻めるだけ有難いと思えよ、という感じで、なんとも足元見られているんだよなー。(これは留学生のみならず、米国人学生も同じ。実態を目の当たりにすると、大手広告代理店やテレビ局、超有名ファッションブランドなどでインターン経験アリ! と言われても、フーン、と地蔵のような微笑みしか出ない。法曹界とか金融界とかはまた違うんでしょうが。)

で、以前書いたチャイナタウンのデザイン事務所は、プレイングマネジャーである社長のほか、正社員が2、3名いるほかは、全部で何人いるのかもわからないほど大量の「無給インターン留学生」を受け入れて人件費リスク皆無で回している職場だった。少数精鋭の経営者&社員が有象無象のバイトたちのシフトを組んで回すのは日本のコンビニや飲食店と変わらないだろうが、バイト相当の学生がほとんど全員無給なのは日本では考えられんよね。交換留学で来て下宿の決まってないフランス人とか、地下鉄の乗り方もわからないようなインド人とかをホイホイ雇って機密保持契約を結ばせ、ポートフォリオにも載せられないような作業に従事させ、新学期になったら辞める子たちの人数分また新しい子たちを採用し、なかなかにタコ部屋感があった。ちなみに私は英語には難ありだがビザ問題がないので、もう少しはマシな待遇だった。同じ待遇の米国人学生が一人いて、英語にもビザにも問題がないのにこんな職場で働いているということはそれは技能のほうに問題g……というか、在学中に結婚が決まって愚直に手堅く宮仕えの空きを狙っているという例。数少ない正社員のうちデザイナーはブラジルと韓国出身、英語ネイティヴではないが仕事の打ち合わせに支障ないという感じ。私の次の目標このへんか、と勉強になりました。

もう一つの会社は今年2月に創業したてで猫の手も借りたいベンチャー、インターン期間の終了と同時に正規雇用してくれるという約束になっていて、ウキウキしながらこちらから諸条件を提示したのだが、……「その金額では出せない」と言われたね……。ニューヨークの物価と、私の過去の職歴と学業実績(一応は首席卒業扱い)を鑑みたら妥当、むしろ良好な関係を築くためディスカウントしたつもりだったのだが……。日本相手の「副業」をやたら奨励してくれて喜んでいたら、どうも「腰掛け程度の賃金で働ける奴」と思われていたようで、結構ガッカリ。試用期間が長すぎたのかな。とはいえ、無い袖は振れぬのならば仕方ない、とフリーランス契約を締結。一応まだ籍を置いていて、固定給は出ないけど、呼ばれれば働いたぶんだけもらえる。ここはプロジェクトベースで動いていて、学生寮や音楽フェスティバルのトータルブランディング、新規開店する飲食店のコンセプトワークなどなど、建築家や映像作家とやりとりしながら、デザインだけでなくスタイリングとか何でもかんでもやる。たとえば自分の担当案件ではない お酒のCM映像 に、現場で手がすいてるという理由でモブ出演したりもする。笑。

並行して、あちこちで好条件の求人を見つけては応募して断られるの繰り返し、「うそ、私の希望年収、高すぎ……!?」(AA略)と不安になっていたのだが、そういうのって大半が経験者採用かつフルタイムでいきなり部下とかつくような役職なので、冷静に考えると全然向いてない。我ながら経歴が異色すぎて面接もその話で終わってしまうしな。もし私が20代そこそこの大企業の人事採用担当だったら「37歳、社会人学生、兼業著述家(ただし日本語に限る)」とか、得体が知れないからそっと落とすよ……。でもまぁ、会員制求人サイト「WNW(Working Not Working)」 (日本語記事だと ここ に言及されていた)の審査通過してからは、ぽつぽつ話が来るようになった。今のところ提示条件が断られたこともない。これはWNWサマサマなんだろうな。

渡米した頃から「日本語圏でフリーランス、英語圏でサラリーマン」という二足の草鞋が理想形で、大学在学中の就職活動もそこを目指していたのだけど、米国では社員でも容赦無くクビになり日本でいう「正社員の安定」とは程遠いという話も聞く。日本とはずいぶん雇用形態や待遇も違うので、フリーランスのままでもなんというか「サラリーマン感」はある。たとえば、私を臨時雇いしてくれた毎日常勤しているスタッフもまた、その会社の正社員というわけではなく古株のフリーランスである、ということが平気で起こる。みんながみんな「うちの職場」という物言いで、同じ釜の飯ならぬ同じデリバリーのピザを食い、決められた時間、決められた給料で、名前の出ない仕事に従事する。LinkedInでは「会社員」ということになっているが、ポートフォリオサイトでは「アーティスト」と名乗っていたりもする。ちょっと暇になってきたらよそで職探しをして、条件がよければそちらへ移り、どうも二度とここへ帰ってくる気はないようだと察されたところで「転職」扱いとなる。社員になりたい! 職業安定したい! と吠えていた舌の根も乾かぬうちに、「定収入」にさえこだわらなければこれはこれで気楽でいいのかもな、とも思い始めた。

この揺れ動く心境、数年後に読み返したら、「日本人っぽいー!」とゲラゲラ笑うのかもしれない。どうなるかわからないけど、現状メモ。つい最近まで目標が「採用初日にクビにならないこと」だったのだが、どこへ行ってもさすがにそれはクリアするだろうという感じの今は、「評判を得て継続して仕事がもらえること」が目標で、その次は「ネイティブと同等の条件で働けること」になるだろうか。雇用形態が正社員か否かより、こうしたステップアップが着実にできるかどうかが問題という気もする。