質問する際に心がけていることは?
いつも気をつけているのは「回答を誰に投げ返してもらうか、その行く先を明確にすること」です。たとえば芸能人にインタビューするとして、「(私が)最新の主演映画を拝見しました。あそこのシーンすごく素敵でした! でも撮影はなかなか大変だったんじゃないですか?(YES/NOで述べよ)」というのと、それを受けて「へえー、そうなんですかー。では、他に(観客一般に)ぜひここを観てほしい、という思い入れの強いシーンなどありますか?(具体的に例示せよ、複数回答可)」というのと、「なるほど、でもそれは以前仰っていたことと違いますね、(コアファンの)期待を裏切る展開も今作の魅力だということでしょうか?(仮説を否定または肯定した上で、前作と比較して最新作を述べよ)」というのとでは、引き出される回答がまったく異なります。時間内にそれぞれをバランスよく配分しながら訊いていかないと、記事にまとめる際に難儀します。
普段、誰かに何かを訊きたいと思ったら、「ちょっとうるさいくらいに自分の話をする」というのも心がけています。見ず知らずの相手からの質問に慣れている著名人と違い、ごくごく普通の一般人から何か本音を引き出そうと思ったら、こちらからじゃんじゃん話しかけねばなりません。相手を脱がせるためにこちらが先に服を脱いで裸になるとか、子供をあやすときに子供の目線に下りていくというのに似ていると思います。ただし、授業や講演会の最後に設けられた質疑応答で延々と自分語りをする質問者は迷惑以外の何物でもないので、絶対にやめてくださいね……。このへんが「インタビュー取材」型の質問と「記者会見」型の質問の違いなんじゃないかと思います。いま訊かれているのがどちらの「質問」についての心がけなのか、よくわかりませんが……。で、「ザ・インタビューズ」は、名前はインタビューですが、実際は「記者会見」型の場ですよね。端的な質問で面白い回答を得るにはいろいろコツが要りそうで、まだ実験中です。
それから、自分が回答する側になったらこのように脈絡なくダラダラ話しますけれど、自分が質問する側のときは、「小見出しが立つかどうか」も考えています。実際のところ、出来上がった談話記事に小見出しを立てるのはとても苦手な作業なんですが、だからこそ、取材中にはつねにそのよう意識しています。