ザ・インタビューズ転載日記(ことば)

あなたにとって「ことば」とはなんでしょうか?

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この質問に「ことば」で答えるのは、なかなか難しいので、お茶を濁して切り抜けたいと思います。

「今までもずっと存在していたのに、『ことば』になって初めて、人がそれを手に取るように目で見るように『わかる』ことになった概念」というものがありますよね。「萌え」でも「逆ギレ」でも「神」でも「無」でもいいのですが。私が「ことば」を一番強く意識するのは、そうしたものが名前を与えられて徐々に社会に発生していく過程を眺めているときです。徐々に発生する、って日本語としておかしい気もしますが、そうとしか言えません。新しいビルが建つと、元にどんな建物があったのか思い出せなくなる感じにも似ていると思います。更地に建てられた新しい「ことば」が風雨にさらされながら徐々に町に馴染んでいく過程を観察するのも好きです。

また、由来を示す表意文字と、今使われている実際の意味とがズレまくっている漢字なども、昔の人が「ことば」で表そうと苦戦した様子が窺えるような気がして、面白いなと思います。これは、石造りの古いヨーロッパの街並、数百年前の建物の一階に、居抜きでレンタルビデオ屋が入っているような味わい深さがあると思います。

二人組で役割分担をして人を笑わせるコメディアンは、大昔から、世界各地にいるはずです。それなのに、日本語圏以外の人に「ボケとツッコミ」について説明するとき、予想外に苦労させられる、といったこともあります。これも「ことば」を強く意識する瞬間です。「つまり、イギリスのコメディでいう○○氏と××氏みたいなことだろ?」などと、中途半端に理解を示されるほど「違い」に敏感になり、その「ことば」が単語の意味だけでは正確に伝わらないということを思い知らされたりします。

例を挙げればまだまだキリがないですが、私にとって「ことば」とはとても面白いものです。

以上、普段は「言葉」と綴りますが、今回は質問者の表記にしたがって「ことば」と書いてみました。それだけでも、ちょっとした違和感があるものです。私の頭の中にある「言葉」の話をして、質問者の望む「ことば」への回答になるだろうか? とずいぶん考えました。漢字かな混じり文の表記違い一つでも、いろいろなコトバが生まれるものですね。