2026年3月の日記(1)

2026-03-01

日曜日。相変わらず、朝はイラン情勢のニュースをチェックするところから始まる。でも知ってる、これもそのうち日課ではなくなって、だんだん関心が薄れ、そうしてまた次のショッキングなニュースがあるまではメールを開くのも億劫になってしまう。それでも読めるものは読む。そして書けることは書く。

午前中に少し雪が降る。マムダニ市長が間髪入れずにBlueskyで寒気への注意喚起(押韻)を促している。昼は持て余していた冷凍鶏挽肉とバジルでガパオライス、目玉焼きのせ。H-MARTの梨を剥くが、もう大きくもないし、味も落ちている上に、値段はすごく高い。旬が過ぎたのだなぁ。

夫のオットー氏(仮名)が急に「炊飯器を買い替える!」と言ってポチる。渡米直後に買った象印の炊飯器は三合炊き、十年半の歳月を共にした。別に壊れたわけじゃないんだけどね、と言いつつも、どこかで買い替えたほうがいい。この冬はなんとなくそんな生活の整理整頓が続く。明日には届くらしい。

夜はあちこち彷徨い歩いて結局は「Slurp」へ、久しぶりに夫婦共に大好物のピータン(英語ではCentury Eggsという)を食べる。茄子とピータンの麻辣味の和えものと、雲南麺一つを分け合ったらお腹いっぱい。ラーメン屋で一人一杯ずつ食べるよりヘルシーでよいかもしれない。かたや隣席のアジア系パワーカップルは、炒め物とチャーハンと肉系の前菜を二つも三つも頼んで、この後に麺にもいくようだ。大量に注文して大量に残す文化圏の若者なのだろうけど、馬力が違うなと思う。おそらく高校から東海岸育ちという感じの、痩身で裕福そうな中華系美男美女。アクセントがネイティブではないがお互いに英語でしか会話しない。

やっぱり日記をちゃんと書こう、と反省したので、今日からそのように心を入れ替える。2025年11月1日から止めてしまっている。間はあいてもいいから、Blueskyのログなども見返しつつ、写真も整理しつつ、日々の記録だけはつけておこう。

起きた早朝は合気道に行こうと思っていたのだが、「道場長がまた爆撃に絡めてナーバスでエモーショナルな説教訓話を始めそう……」と考えると行く気が失せてしまった。と、冒頭に書くと誰からでも読めてしまうので、一番下に書いておく。どうせ機械翻訳で世界中から読まれてしまうので、あんまり意味ないけど。瞑想に相当する効能を他者と分かち合う行為、刺さるときと刺さらないときがある。今日は後者。

2026-03-02

夢日記。無理やり喩えると「ピン芸人の純烈」みたいなタレントの外部コンサルタントになって、彼が日本全国を「慰問巡業」するのに同伴している。時制は第三次世界大戦が終わった直後。新しい戦争の時代、前線に送る兵士は少数で且つ使い捨てにするので慰問は不要とされ、むしろ銃後の国内において「地続きで起きている戦争からどこまでも気を逸らさせる」ような興行を続けることが、逆プロパガンダとして国策トレンドになっていた。ピン純烈(仮名)はその時代に兵役逃れのためアイドルになって全国津々浦々の健康ランドを巡って大人気を博した人で、戦争が終わった今、キャリア転換に悩んでいる。彼におひねりを投げていた高齢者はみんな死んで、我々よりも下世代の若者たちは「戦前」の娯楽がどんなだったかを知らない。ローカル線に揺られながら、私は東日本大震災発生の直後にミュージカルに慰められたんですよ、といういつもの自分語りをして彼の未来戦略に寄り添う。目覚めてまた、AIが攻撃対象を決める「新しい戦争」のニュースを追いかける。

昼、ミヨッククを作る。韓国風わかめスープ。私が直に知る親戚はみな日本人だが、遺伝子検査の結果を見ると私はどうもロシアと朝鮮半島に太めのルーツが辿れるようで、DNAマップ上には推定韓国系の「遠縁」もいる。ミヨッククを作るたびにそのことを思い出す。牛肉とワカメを胡麻油で炒めて短冊切りの大根足してスープにのばすの、美味しいよな。私は味噌汁や関東風雑煮と同じくらい好き。子供の頃は父方の祖母がよく出すこの汁物を「和食」だと信じ込んでいたし、本場韓国のレシピでは大根は入れないのだと知って何度でも驚く。でもまぁボルシチも好き。私の祖先は東アフリカまで辿れるそうなので、東アフリカの汁物だって食べたらすごく口に合うかもしれない。

日本発のピエトロドレッシングは全米展開していて、生活圏で比較的入手しやすい和風味のドレッシングとしてうちでもよく買っている。元は福岡のスパゲッティ屋さんなんだよ、そういえば西麻布にもお店があって……と話していたのが、完全にピッツェリアの「ニコラス」と混同していたのを、今さっき思い出した。看板がイタリア人のおじさんであることしか合ってないし、おじさん二人は似ても似つかない。ちなみにピエトロドレッシングは、日本ではどうか知らんが米国ではこじゃれたシンプルなパッケージに一新していて、その出来がなんかしゃらくさい。絶対もとのおじさんのほうがいいのに。古いおじさんは裏面の隅に小さく印刷されている。絶対こっちを大きくあしらったほうがいいのに。

仕事の記録をつけなかった日なので、何がどこまで進んだのかまったく不明。これがよくないので、心を入れ替えて書けることは書く。夜は台所のコンロをピカピカに清掃。気分がいい。

2026-03-03

夫のオットー氏(仮名)が毎晩使っているペアのワイングラスを洗っている途中に一つ割ってしまって、まったく同じものを注文したという。破片の片付けを手伝う。このグラスはたしか結婚祝いでもらったもので、その後に一、二度、同じように割れて、都度、同じものを買っている。いろんなものの買い替え時期が重なる。

同じ街に住む友人の、アパート老朽化にまつわる嘆きをSNSで読み、我が家の老朽化についても振り返る冬。窓枠がゆるんでいて部屋の中に雪が積もる。窓辺の天井と壁の境目に黒いシミがびっしり出てくる。台所の天井と浴室の壁にデカい亀裂が入っている。流しの下の排水管は金属の継ぎ目から気まぐれにブシャーッと汚ねえ水を吐くので流しの下に物を置けなくなった。ずっとうちのものでない水音がし続ける。メンテナンスリクエストへの回答すべて「こんどペンキで塗ったる」(前もペンキ塗っただけで終わった)。いつか天井ごと崩落して部屋じゅう水浸しになると思うので、貴重品の保管方法などを真面目に考えないといけない。

X/Twitterでは「rich aunt」の投稿がバズッている。まさしく『 我は、おばさん』だ。

<世間が女はバリキャリor母の道しかないと思ってくるの怠い私は何してるかよく分からないrich auntになりたいんです>
https://twitter.com/n_____yy/status/2028785886419354023?s=46&t=Y-y7PtZJEeueMYyz-bfc0A

 

我は、おばさん

Becoming Obasan
2021/2024 _ JP

本の中では『ヌマ叔母さん』に多く紙幅を割いた。世界戦争でどんどん貧しくなっていく日本国内で女たちが説く「常識」しか知らずに育った子供と、その目にはきっととんでもなく無駄に贅沢だと見えているはずの、海外暮らしの「非常識」な女の親戚。あの話に、自分がどんどん近づいている気がする。じつは叔母さんのスーツケースにも金銀財宝なんか詰まってなくて空っぽなんだけどね。嘘偽りの無い人生を歩みたいと思うが、しかし、ここに関しては、どこまでも果てしなく虚勢を張っていきたい。でないと報われないからです、かつて死にかけの「姪」だった私が。

納税書類集めがめんどくさいとか、台所のコンロぴかぴかに磨いたら中年の手が薬剤に負けてボロボロに荒れたとか、天井割れたボロアパートに住んでるとか、しみったれたこと言って笑いを取らない、rich auntだから。カネで買えるものをカネで買うのはカッコ悪いと思っていたい、rich auntだから。「あのくらいの生活でいいんだよなー、贅沢は言わないから、せめてあのくらいの豊かな暮らしをしたいなー」と低めの見積もりで憧れられたい、それがrich auntだから。10代の私が手近で見つけたそんな中年女性の一人は、偶然知り合った「育休中の雑誌編集者」だった。その後、自分も編集者になった。こういうの結構、人生を左右するわよ。

もしも「全部やる」「全部マネする」ができない、自分にはその程度の馬力しか無いのだとしたら、じゃあ、どこは削ってもよくて、どこは他人に譲ったり開け渡したりしちゃダメなのか、といったこと、周囲のrich auntたちの振る舞いから一つ一つ教えてもらった。直に言葉は交わさずとも、その背中を追いかけながら。だって女親も女教師も修道女もそんなこと絶対に教えてくれなかったからね。

午後遅めから雨の中を地下鉄乗って日本国総領事館へ。アホみたいな手順を踏む電子化のせいで、あれこれ手続きに時間がかかる。夫のオットー氏(仮名)が「全部NTTデータが悪い!」とブチ切れている。同意。待合室に二台あるテレビでは、一つが日本国内のイラン情勢の報道、もう一つが無印『ドラゴンボール』の英語吹替版を流している。私が子供の頃に観ていたようなテレビアニメを今なお大事大事に再放映し続けて、そうして(アルジャジーラには到底及ばない)お粗末なニュース番組から目を逸らせようとする試み。昨日見た悪夢を思い出し、終わってんなこの国、という感想。

中国語を話す老夫婦がビザの申請に来ていた。妻のほうが全面にびっしり寿司ネタが描かれた大層かわいいエコバッグを提げている。今日のこの日のために選んだのだな、と微笑ましい。本人は恭順の意を示して日本文化に溶け込もうとしているのかもしれないが、逆にその配慮が外国人ならでは。私も次にアメリカ大使館に行く機会があったら『Hamilton』のTシャツでも着て行こう。英国大使館に行くことがあったら『Operation Mincemeat』のバッグを提げて行こう。フランス大使館に行くことがあったら『ベルサイユのばら』のクリアファイルに書類を挟んで行こうかな。

せっかくミッドタウンまで来たので、数億年ぶりに紀伊国屋書店をひやかす。二階がコミック、一階が英語書籍で地階が日本語書籍、というレイアウトはほとんど変わっていないが、地階はほとんどキャラものグッズ雑貨屋と化してムーミンとちいかわと神絵師の画集コーナーに侵蝕されている。フィンランド人に見せたら怒られそう。日本語書籍のコーナーにも日本の人はほとんどおらず、推定アメリカ人の大人が子供向け漢字ドリルの棚を凝視している程度。いろんな和書の米語翻訳US版の装幀を眺めて何も買わずに帰る。月刊『Newtype』の3月号が欲しかったのだが、2月号が税込17ドル超(3000円弱)で売られているのを見てそっと棚に戻した。

ドイツビアホール「Reichenbach Hall」に移動して、そういえば、雛祭りだったねと話す。あかりをつけましょジャーマンIPA、おはなをあげましょヘッフェヴァイツェン、五人囃子のカリーヴルスト&シュニッツェル、今日は楽しいオクトーバーフェスト。三月だが? CVSと無印良品で用足しして帰る。地下鉄に乗るかバスに乗るか迷って「いずれ無償化する前に今バスに乗るのはなんかもったいない気がする」とみみっちいこと考えたのがこの日。

ライヘンバッハホールのカリーヴルスト
2026-03-04

外気温が7度くらいまで上がって、相対的におそろしいほど暖かい日。このまま春になってほしい。日記がなかなか続かないので「三行日記」みたいなフォーマットを決めたほうがいいのかもしれない。といっても字数制限が出るSNS投稿欄と違って白紙のメモ帳には無限に書いてしまう。

食材の買い出し。昼ごはんはステーキサンドにエッグタルトまでついてくる。夜は軽めにしようということで新しく来た炊飯器(こめ次郎)のデビュー戦。かたかたことこと異音がすると思ったら、中で玄米を踊らせているらしい。おいしく炊けている。納豆オムレツとけんちん汁の晩餐。

進捗確認作業だけで読書あんまり捗らず。夕方にできた空き時間は、衣更えにあてる。一月の大雪と二月の猛吹雪に合わせて出してきた真冬の最強装備、雪山仕様の手袋や特殊素材の股引き、見栄えより機能性重視のネックウォーマーなどはもう出番がなさそうで、使わなかったものはそのまましまう。逆に初夏直前まで着るコートなどを出してきてクローゼット内の配置換えをする。前開きで密閉性の低い明るい色の半纏などはむしろここからのシーズンで活躍する。

カウンセリングについての本を読んでいるところへ、WILL McPHAIL「Triangle」がタイムラインに流れてきて、とてもいい絵だと思ったのでシェアする。プリントを買ってもいいかなと思ったが、ちょっと高い。

2026-03-05

雨の朝。昨日が特殊だっただけで、まだまだ急激に暖かくはならない。AIとの対話でカリウム不足だと言われたので朝食にバナナを足すことにした。日記の習慣をつけるために、当日前日に加えて、もう二、三日分の振り返り日記をつけていくことにした。どちらも早々に挫折しないことを祈るが、こうやって朝習慣を増やしていくと今度はやっと習慣化した朝の運動や朝の掃除がおろそかになってゆき、出勤前の時間が足りない。どうにかしないといけない。

DayOneで日記をつけるにあたり、新しくショートカットで自動化できることがないか、といったことをあれこれ試して、実作して走らせてみたりしたのだが、どうも私の脳は「めんどくさい作業を手動でやるめんどくささに着手する」ことが最もモチベーションを上げる手続きとなるようで、完全自動化は諦めた。つまり、アナログであちこちにメモしたことをまとめてデジタルに書き起こしたり、そうしてデジタルで完結できたようなメモをふたたびペンでToDoボードに手書きしたり、といった「儀式」は、今のところ簡略化できない、ということ。AIと一緒に何でも自動化できる人たちが羨ましい、と苦笑するしかない。

毎朝の運動や掃除をはじめとする家事、アプリにリマインダがついている語学自習など、身体的なものはスマホでかなりオートメーション化できているのに、もっと脳が先立つような作業はそうもいかない、というのが現状のメモ。これも慣れてくると簡略化できるポイントが発見できるはずなので続けていく。

朝はバナナとシリアル。昼は豚肉とタマネギとクレソンのサラダ。パクチーもあるので豪勢にもっさり入れる。パクチー自体は(大葉などと違って)安く手に入るのだけど、いざ買うと使い切るのが億劫で、すでに買ってあってふんだんに使えるタイミングで使うと豪華な気分になる。夜はオットー氏(仮名)謹製、catfish(ナマズ)のレモンカレー。

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