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ザ・インタビューズ転載日記(褒め言葉)

言われて一番嬉しかった褒め言葉はなんですか?



「俺はね、君のことが大嫌いなんだよ。たまに、心の底から嫌だなぁ、と思うことだってある。だけど、それでもやっぱり一緒にいるのは、君にそれだけの魅力があるからなんだと、そう思っていればいいよ。それをいちいち人から言われないと自分で自覚できないところなんかも、卑屈で嫌いだね」

空前絶後の大喧嘩をした後で、吐き捨てるように言われた言葉なので、厳密には「褒め言葉」ではないかもしれませんが……それでも、滅多に他者のことを褒めない人が、なんとか捻りだしたツンデレにもほどがある言葉、嬉しかったですね。何より、「ねえねえ、またあれを言って褒めてよ」と私からねだれるような台詞ではないところが、完全なる他者からの評価、という感じがして、よいです。「好き、だけど嫌い、だけど好き」というのは、ラブソングの歌詞にもよく使われるフレーズですね。なるほど、この曲が好きなのも、六人のかわいいおっさんたちに耳元でよってたかって褒めてもらっているかのように錯覚できるからなんだな、と気がつきました。

ムーンライダーズ「I hate you and I love you」
http://www.youtube.com/watch?v=EYh8fSINbqk

もう少し抽象的に考えてみますと、「えらいね」も「すごいね」も「頑張ったね」も、わざわざそう言って褒めてくださった人のお気遣いへの感謝以上のものは湧きませんが、「上手だね」とか「それはいい考えだね」といった言葉で褒められると、自分のこととして、すごく嬉しいですね。つまり私は、「努力」よりも「業績」よりも「達成」よりも、「創意工夫」を褒めてもらいたい、ということなんでしょう。こうしたところに性格が出ると思います。

「毎日ちゃんと自炊しててえらいね」で誉れに思う人も、「こんな美味しい料理が作れてすごいね」で幸せになる人も、「あれだけの大人数を一度におもてなしして頑張ったね」で報われる人もいると思いますが、私は「うわ、不味い……え、こっちのソースかけて食べると美味しくなる? 本当だ、よく気がつくね、こんなこと」といったやりとりが、一番嬉しいです。まぁ料理が苦手なだけですけど。また、男性から手放しで「いつもきれいだね」「君が世界一だよ」とか言われても何とも思いませんが(いつも、と言うほど会ったことのない人だとむしろ不愉快です)、何か装いを変えたとき「あれ、今日みたいなのもいいね」といった評価を受けると、嬉しいですよね。このあたりの心情のツボは人それぞれでしょうが。褒めるって難しいですね。

誰かに似ていると言われて嬉しかったことはあんまりないのですが、一回だけ、小原愼司が好きだと言ったら、あんまりよく知らない誰かに「ああ、そういえば、あなたってどことなく彼の描く女性に似た雰囲気がありますもんね」と返されたのは、むちゃくちゃ嬉しかったのでよく憶えていますね。そんなん言われたら調子に乗るからやめてください。でへへ。もっと言え。

ああそうだ、わがままな子供や子供みたいな大人に「もっと褒めて!」と言われるのも嬉しいです。私が他人を褒めることがその人の活力になる、ということは、私にその価値があると言われているも同然で、それは大変な栄誉であると思います。あなたはすごい、と直接的に褒められて嬉しかった体験よりも、そうしたことで「まるで自分が褒められた気になって」嬉しくなった、そういう記憶のほうが、たっぷりある気がします。

それと、先日、三人で集まって食事をした際に、そのうち一人が、古馴染みである私ともう一人に向かって「あなたがた二人が一緒にいるときの雰囲気はとてもいいですよね、私も早くそこに交ざりたいです」といった意味のことを言ってくれて、あれも嬉しかったです。基本的に友達が少なく協調性も乏しいので、仲の良い誰かと一緒にいるときに「いいチーム、いいコンビネーションですね。楽しそうで羨ましいです」といったことを褒められると、「でっしょーう!?」と、自分一人が褒められるのの何百倍も嬉しくなってしまいます。