2023-06-14 / 『MONSOON WEDDING』と日光浴

6月14日の日記を書く。当日はBlueskyしか更新しなかったが、そのログを頼りに書いてみる。まずは朝、7時くらいにコーヒーを飲んでから1時間半以上、ぐったりして身動き取れなくなっていた。前日が楽しかった反動か。やばいと思って書いたスレッドがこちら。薬を飲むでもなく、アプリ主導でもなく、自分で自分に独自の認知行動療法をかける、というのを試してみる。案外うまくいく。

ここはものすごく悲しい気分になっているスレッドです。原因はとくにありません。

続)強いて言うならば「何をするにも時間と手数が足りない、そのことを考えるにつけ、朝起きてさきほどから身動き取れず何もできなくなって無為に時間が過ぎている」のスレッドです。たまにある。鬱を治すにはまず瞑想だと言う人もいるのだが、このまま寝転んで瞑想を始めると終日瞑想と称して寝転がる以外のことができなくなるので、どうにか起き上がらなくてはいけない、のスレッドです。経験上、こんなとき魂の充電が100%完了になるまで寝て待っていると、それを待っている間にますます鬱になってしまう。せめて充電20%を超えたら電源を挿したまま省バッテリーモードで各種アプリを起動しないといけない。それがなかなか難しい。

続)6時半に起きてコーヒーを飲んだのにまた横になってしまった。10時までは自分を許そうと思うが、10時と同時に起き上がれる人間ならば今すぐにでも起き上がれるわけで、こうして寝ていると「起き上がる」の解像度があまりにも低くて捉えづらく、10時になっても「起き上がる」ができない可能性が高い。9時半前後から、まず縦になり、靴下とルームシューズを履き、服を着替え、洗顔し、サプリを摂り、適宜排泄などして、飲み物を用意し、前日の積み残しを片付け、午後のために出かける準備をしてから、机に向かって着席するところまで、一つ一つ潰していく。悲しみについて考えるのはそれからだ。それまでには悲しみも減じているはずだ。

続)縦になり、水を飲み、排泄して、サプリを摂った。サプリはそれ自体に特別な効能があるわけではない。ただ、毎日のチェックリスト筆頭に掲げておくと「一日一度、忘れずに決まった行動を取る」達成感が得られる。最も低いハードルを超える、そのためだけに飲む。普段はゆったりした部屋着に着替えるが、これは横になりやすく今日はヤバい予感がするため、いきなり午後からの外出に合わせた服を着ることにする。着飾ることを考えられない日に必ず穿くタイトなジーンズがあるので、まずそれを穿く。下半身が圧着されると部屋着との差別化でメリハリがつき、気持ちが外向きになる。無自覚な冷えへの対策にもなる。冷えは布団へ戻る言い訳になる。

続)洗顔もヤバそうなのでクレンジングウォーターで拭うだけにする。このクレンジングウォーターは推し舞台俳優が楽屋で早替えに使っている同じもの。私の推しは「今日はダルいから休むわ」などとは絶対に言えない職業に従事しており(米国では認められる欠勤理由が日本演劇界では許されない)、私ごときが何をほざいてやがる、との気分が高まるので、PM使用に適したアイテムだがこうしてAMに使うことが多い。本格的な洗顔は出かける前にすればよく、その頃までには化粧する元気だってわくかもしれない。洗濯物をたたむ。洗濯物をたたむ作業は大の苦手だが、こういうときは無心になれるのでよい。ためておいた甲斐があった。それはどうかな。

続)合気道の道着をたたみながら今週末以降の稽古日程を検討する。気持ちが未来に向かう。穴のあきかけた靴下をたたみながら、そろそろ捨てるべきかなと考える。それでスッキリするならそうすればよい、靴下の買い替えは心地いい。でも今はせずにおく。狭い部屋を行き来しながら、下着をTシャツをハンカチをしまう。私の持ち物すべてに私自身が決めた所定の位置がある。私自身の居場所はどこだろう。少なくとも今は、PCの前であろう。こうして机に向かったのは10時3分。これを書き終えたら10時10分。10分遅れなら、まぁまぁ上出来だろう。お茶をいれて戻ったら、しばらくBlueskyは見ない。昼食までToDoリストと向き合う。

続)仕事用のお茶をいれて悲しみについて考えた。昨日は初対面の人と会ってサシで9時間過ごし、散歩してお茶して食事して真夜中までいろいろ話をした。それ自体は楽しかった(悲しみの原因がその相手にあるわけではない)が、途中何度か「私と私、お互いの真剣な自分事の話をしていたはずが、いつの間にか、その場にはいない共通の知人の噂話をする愉しみに終始してしまう」タイミングが訪れ、それが(相手がどう感じたはさておき私個人の)知らず知らず自分と優れた他人とを引き較べるような(普段は意識して遮断している)心理を招き、寝て起きたら(歩き回った肉体的疲労と相俟って)ネガティヴな思考に化けていた、というメカニズムだろう。

続)小一時間遅れでかなりヘルシーに戻れたと思うし、こうした悲しみを原因不明のまま引きずっておくと脳が勝手に勘違いして「あの人と会って話すと悲しくなる」などと他責的解釈もしてしまう、それは本当によくないので、早めに潰せてよかった。大事なことなので何度も何度でも言うが、昨日会った相手や、その人が話していた内容は、私のこの悲しみとは何の関係もない。その人に非はまったくない。私がその人と接触することで受けたさまざまな「刺激」を、自分の中で勝手に「毒」にしてしまうのがいけない。それは本来「薬」にも転化するはずのものだし、10時40分現在は昨晩の会合は大いに有意義で自分にとって「薬」になったと捉えている。

2023-06-14 https://bsky.app/profile/okadaic.bsky.social/post/3jy4um22zxe2i

とにかく日光、日光を浴びないことにはダメだ、と痛感。夜にはDUMBOで観劇の予定がある。雷雨をやり過ごして早めの昼食を摂り、すぐに現地へ移動してしまうことにする。橋のたもと、水辺にあるTimeOut Marketのルーフトップ(無償)でひなたぼっこしながらノマドワーク。さっきまでの雨に濡れていたベンチが日向からどんどん乾いていき、涼しい日陰で座れるところに移動しながら作業。どんな働き方もできる。インターネット万歳という気持ちになる。

しかも風に吹かれて飛んできた10ドル札を拾う。施設管理者に届けようとしたら、周囲の全然知らない人たちが口々に「いや、今おまえのところに吹き寄せられてきたんだ、おまえが取っておけ」「訴えられたら俺たちが証人になってもいい、これはもうおまえのものだよ」「(すぐ傍でウエディングフォトを撮影してるのを指差して)見な、きっと幸福のお裾分けだぜ」とか言うので、懐に収める。なんかよくわからないが、これはこれで(日本でいう交番でおまわりさんに渡すと1割もらえるのとは別の)「決まり」として悪くない、のかもしれない。それにしてもだぜ。他人の所有していたはずの金銭をガメることさえ、ここまでポジティブに全肯定してくるかね普通。イッツアップトゥユー、ニューヨーク、ニューヨーク。

普段は完全インドア派なのだが、朝からこの調子、かつ昼には雷雨に見舞われたので、気象病を吹き飛ばすべく太陽光を浴びて己を干しながら仕事していた。外気、大事だなぁ。終日雨だったら詰んでいた。
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Since I got depressed this morning and was hit by a thunderstorm at lunchtime, HERE was my workplace today’s afternoon.

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夜は『MONSOON WEDDING』観劇。かなりよく晴れていたのに、St.Anns Warehouseの開場を待つ間に雲行きが怪しくなり、外のベンチでの読書を切り上げてホワイエに駆け込むと同時にすさまじい雷雨に襲われる。DUMBO名物のカルーセルを格納したガラスの建造物がちょっと撓んで見えたほどの豪雨だが、何しろ演目が『MONSOON WEDDING』なので、ズブ濡れで入場してくるお客さんも「今夜の演目にぴったりのお天気ね!」と笑っている。

開演前はホワイエでバンドのプレショーパフォーマンスもあって盛り上がる。本編も非常によかった。原作にあたる映画は未見だが、古き良き伝統家庭の「早く結婚して孫の顔を見せろ」プレッシャーの厄介さをコミカルに描いて「インド人あるある」全開なのに、ストーリーラインと楽曲はかなりベタに異文化圏の観客を楽しませる作り、観ながら思いだしたのは『クレイジーリッチアジアンズ』のソツの無さ。日本発世界照準でミュージカル作りたいと豪語してる人たち『ムーランルージュ』ばっかり表敬訪問してないでこういうの参考にしたほうがいいと思う。

合成CG映像+棒馬を使ってボリウッドムービー風の「白馬の王子様と特急列車のチェイス」をやるところなど、アホらしいんだけど「そうそう絶対こういうのが観たいんだよ!」と喜んじゃうし、かたや物語はかなりシリアスな展開(異教徒同士の恋愛結婚の障壁や、親戚内性加害の告発など)も含み、最後は本水の大雨が(小劇場的な乱れ水ではなく、とても美しく制御された矩形の舞台装置として)降りしきるなか、老若男女キャスト全員が一糸乱れぬガチダンスを披露。満足度高ええええ! 世界観やスコアの感じは宝塚歌劇的でもある。

インド系はじめアジアルーツの我々は「マジでうちらの田舎の親戚たちの話やんけ」とうんざりしつつも嬉しそうに感想戦が捗り、客席の多くを占めていた白人高齢うるさ方みたいな観客もウキウキ帰途についていた。

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その帰途、地下鉄の駅が閉まっていて結構さんざんな目に遭ったのだが、素敵な「おばさん」と出会って一緒に困難を乗り切ったのが忘れ難い。

続)往路と同じF線で帰れず一番近いD線の駅も工事中で閉まっててAC線の駅まで人通りの絶えた夜の公園の暗闇を延々と歩く羽目に……なったが「あーた私と同じよねマンハッタン帰るでしょ!? この地図わかりづらくない!? んもーこれだからブルックリンは!!」とガンガン話しかけてきた小柄で陽気な金髪オバチャンと一緒で心強かった。前を歩く若い黒人美男美女カップルは我々を無視してズンズン違う道を行ってしまう。励まし合いながら辿り着いたはよかったが、改札にスマホ片手の女性駅員がおり、私の降車駅までは電車あるけどオバチャンの最寄駅まではここからは辿り着けないよと言われ、改札で「Good Luck!!」と涙の別れ。

続)なんだかんだと橋の袂の公園と駐車場しかなく街灯も乏しい闇の中を徒歩40分近く……金髪美白だが身のこなしと陽気な迫力は推定ヒスパニックだろうか、向こうは私のこと使い勝手のいい東洋の小娘くらいに思ってたろうけど、ヘイヘイ土地勘薄いみんなで同じゴールを目指そうぜと(オバチャンが)話しかけても無視し続けていた二十歳そこそこの黒人男女のほうが私と歳が離れている。若さとは中年の声を無視することよ。やはり警戒心強く利害関係の一致したオバチャン同士の助け合いは頼もしい、一本のオバチャンは折れやすいが二本三本と束ねると怖いもの無しだぜ。財力や社交力は無くともこういうオバチャンの恩恵に与りながら生き延びたい。

続)「うちら丸腰だけど弱い者同士で固まって腹から声出し合ってれば危険を回避できるし救いの船も寄ってくるわよ! 張ってこう虚勢!」というあのドカドカうるさいロックンロールおばさんバンド精神、見習っていきたい。本当に。足りない筋肉だからこそ鍛えていきたい。

続)(まぁこんなのDUMBOが地元の人からは「せめえ碁盤の目しか歩けない奴らがナメとんのか、夜間運行状況くらい事前に頭に入れてから来い」と怒られる案件でしょうが、本当にどこもかしこも夜が早くなったよなぁと思う。コロナ前ならばなんとなく賑わう人の流れについて行けば大体の駅間移動はできたような時間帯なのにあんなに迷うと思わなかったし、あんなに交通の便いいはずの場所で同じ建物から出たみんなが何組も何組も雁首揃えてUber待ってた理由を駅探し始めてから思い知った……)

続)結局、行きは20分で着いた距離を帰るのに深夜は1時間近くかかって0時前帰宅。昼間なら歩いて渡っても1時間程度なのにね。近くて遠い。

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ちなみに翌日もかなり落ちてしまって、家でなく外で働いていた。

workplace of the day.
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本日の職場。いやー、外気は大事だな、外気は。たとえ晴天のブルックリンでなくとも、曇天の下、排ガスまみれでどう頑張って写真撮っても汚水だまりが写り込んでしまうようなイーストビレッジの道端であっても、作業と作業の合間に適度な運動と外気浴を挟む大切さをひしひし感じる。コロナ禍以降、テラス席自体は増えたのだけど、コロナが終息扱いを受けたことで店内の換気や酸素飽和度が元通りの悪さに戻ってしまった店についてしんどく感じるようにもなった。

https://bsky.app/profile/okadaic.bsky.social/post/3jy7yct6yh62u