2024-06-15 / 北欧旅日記(05)ヘルシンキ3日目

滞在しているホテル・リラ・ロバーツの一階には「Krog Roba」というレストランがある。市内南部は注目のグルメスポットらしく、人気飲食店が立ち並ぶ中にあって大評判だ。朝食抜き素泊まりで予約した我々、チェックイン時に「おま、ウチの朝食バイキングを、食べない……? オーケー、気が変わったらいつでも連絡しろや、すぐ朝食付きに変更してやっから……」みたいな対応を取られ、二泊してまんまと気が変わった次第である。

どれも本当に美味しかった。ヨーグルトとシリアル、コンチネンタルな冷製肉とチーズやフルーツに加えて、スカーゲンやスモークドサーモン、数種類のそれぞれ味や食感が違うクネッケもあり、あたたかい卵料理やベーコン、パンは何でもトーストできてアメリカンブレックファストにも対応、あらゆる偏食の観光客を受け止める度量がある。フィンランドの伝統料理についてはテーブルに詳しい説明書きを添えて「食わず嫌いしてないで、ここで試してごらん」とみっちり紹介している。ホテル朝食の鑑である。日本の宿も「おかゆの美味しい食べ方」とか「焼鮭や梅干しは5個も10個も取るもんじゃない」とか懇切丁寧にリーフレットで解説したほうがいいよ。あと、ちょっとした皿もクラウスハーパニエミでかわいい。日本の宿も積極的に柳宗理のカトラリーとか置いてドヤッたほうがいい。

ライスプディングを包んだ小さなパイ、カレリアンピーラッカ(karjalanpiirakka)にエッグバターを添えて食べるのは、初体験だった。一度食べてみると以後どこのパン屋でもカレリアンピーラッカばかり目に留まる。「死骸を轢いたタイヤの味がする世界一まずい飴」ことサルミアッキもあって、定番の菱形でなく、ちゃんと(?)自動車の形をしている。「旅の記念に試すなら今だぜ」とゴリゴリに推してくるのだが、ジャーから一粒ずつ取る方式だし、味に耐えきれない客はそっと大皿に出してしまえばよいので、良心的。そうなんだよ、試食もしないで箱で買うからイヤゲモノになるんだよ。サルミアッキのしょっぱいリコリス味、私は昔から全然平気なのだが、「ブラックコーヒーとは激烈に合わない」との新しい知見を得た。

そして、トロピカルスムージーが、びっくりするほど美味しい。酸味、甘味、ほんのり塩味、冷製ポタージュのようななめらかさとしっかりした繊維質のバランス、44年生きてきてあんなに美味しいスムージーは飲んだことがない。ドリンクコーナーには他にもさまざまジュースがあるのに、スムージーだけ回転率がヤバい。ずっと周囲を観察していると、みんな何の気無しに一杯目を注ぎ、自分のテーブルで飲んで目を白黒させて手元のグラスを二度見、何か言って連れ合いにも一口飲ませ、次は両手に空のグラス二個持っておかわりを注ぎに行き、注いだそばからその場で一度グラスを飲み干して新しく二杯分を注いで席に戻る、くらいが基本挙動である。私だけじゃないもん、みんなだもん。

つねにボトル四本体制が敷かれているのに全然足りずに長蛇の列、何も知らない初見客たちは悠然と並んでいる一方、おかわり客たちはほとんど依存症患者みたいなギラついた目つきでイライラ順番を待っている。怖いよ。私だけじゃないもん、みんなだもん。しょっちゅう訊かれるのだろう、わざわざ成分が掲出されており、マンゴー、パイナップル、パッションフルーツ、ココナッツ、ほうれん草、オレンジ……いや絶対それ以外にもなんか、なんかヤバいモンが入ってるだろ! 俺たちは騙されないぞ! おかずやパンのおかわり控えてまで、軽く四、五杯は飲みましたね。

11時に出発。この日は中心部から車で約20分、トラムで約40分ほどの距離にある建築家アルヴァ・アアルトの自邸の見学ツアー、13時の回を予約してある。もうおわかりですね。「歩きで1時間半だってよ」「そしたら寄り道して2時間くらいかけて行くか〜」ということで、徒歩です。あらゆる旅、「何しに行ったの?」と訊かれたら「歩きに行った」と答える我々です。

昨日も歩いたヘルシンキ中央駅の西側エリアを目指す。ヨルンカツ界隈によさげな飲食店もいくつか見つける。夕飯時にまた来てみよう、夜ン活。宿から北東方面へ抜ける界隈にはミコンカツという通りもある。未婚活。『かもめ食堂』に出てきたヨルンカツスイミングホールや、美術館Amos Rex前のパブリックアートなどひやかす。ヘルシンキの教会建築のうちでも有名なカンピ礼拝堂を外から拝むが、中には入れなかった。この日は土曜で、テンペリアウキオ教会も閉まっている。週末の午前中は地元信者のミサにあてられているのだろう。

中央駅の西側を走る大通りMannerheimintie沿いは、昨日見学した図書館やキアズマ以外にも、国立博物館や自然史博物館などがある。マンネルヘイム元帥に因んだ名がついたのは冬戦争の後で、以前はHeikinkatuという名称だったそうだ。平均活。交通量の多い市内きってのメインストリートだが、隣り合う大きな文化芸術施設の敷地がたっぷり広いせいか、公園を散歩し続けているような開放感もある。進路を北西に保ちながらあちこち寄り道すると、どこまでもこぎれいな住宅街が広がっていた。中心部と近郊のメリハリが強かったオスロと比べ、ヘルシンキはもう少し外へゆるく伸びてゆく感じがある。

こんなん撮るしかないよな、キアズマの噴水

中まで入りたいと思っていた国立博物館は長期休館中。外から拝めればいいと思っていたアアルト設計のフィンランディアホールは、逆に外観が改装工事中。ノルウェー同様、国の宝である文化施設に順繰りに定期メンテナンスをかけて動態保存する姿勢は賞賛に値する。このホール、バルト海に繋がる(え、繋がるか? と地図を確認すると本当に繋がっている!)トーロ(Toolo)湾という巨大な水辺を囲む公園の中にあって、ここだけでも半日のんびり過ごしたくなる好い具合だが、アアルト先生が自邸でお待ちなので駆け足で通り過ぎた。

西へ折れ、シベリウス公園へ。ここも彫刻の点在する緑地の大半が養生中。やはり春夏は、雪の季節にできない各種メンテナンスの集中期間なのかしら。観光スポットになっている有名なモニュメントを抜けてセウラサーリ島を臨む西側の湾へ出る。おそらくはカヌーポロかな、水上でカヤックに乗って球技をする人々がいた。相当激しそうなスポーツだ。たっぷり歩いたので東側のトラム通りでToolo Halli駅を見つけ、12時26分発の4番線に乗る。あっという間にアアルト自邸の最寄駅、Laajalahden Aukioに着く。Aukioはフィンランド語でSquare(広場)。15分ほど余ったので、Tarinaというカフェでアイスラテを一つ注文して、二人してトイレを借りる。

レジ番とやりとりしているとバイト長みたいな店員が割り込んできて、「アイスはねえ、メニュー表が間違いで今はスモールカップがなくて、ラージのワンサイズだけなのよ」と言うので€4.9を支払うが、会計後、店の奥で何かしらの新人教育がなされていた。私にはフィンランド語はわからないし小声で聞き取れないけど、どう考えても「アアルト自邸の見学客がああやって集合時刻前にウチのトイレだけ借りに来たら、こうやって高いほうを買わせて地道に地道に売上をアップさせるのだ」以外にありえないだろう(偏見)。バイト長、ご苦労様です。別にぼったくりとも思わない。私がこの店のバイト長でも同じくらいの方便は使うかもしれないし、この店だか別の店だかで「トイレのみの貸出は€1」という張り紙も見かけた。当然だよね。

13時きっかりにアルヴァ・アアルト自邸の扉が開く。靴を脱ぎ荷物を置き、12時回の参加者がまだ残って写真を撮ったりしているのとゆるやかに入れ替えられる。最大15人枠の見学ガイドツアー、英語の回なので日本人、中国人、韓国人が多かった。狭い敷地を有効活用しながらミニマルに機能的に暮らし働く建築家の自邸、その精神、我々アジア人には大いに響くものがあるが、そうは考えない(最初からもっとデカい家に住む、別宗派の)人々には、巨大建造物の見学ツアーのほうが魅力的なんでしょうな。

自宅くらい解説無しでも観て回れるのでは、と訝っていたが、財団職員の流れるような説明はとにかく見事で、評判以上の満足度だった。私のカメラロールには、解説が始まる前に撮った写真と、聞きながら聞き終えて撮った写真とが、時系列で並んでいる。後者は見どころの押さえ方がピキピキに冴えていて、我ながらずっと出来がよい。劇的ビフォーアフター。たしかにな、他人様のおうちの素敵さなんて、今来たばかりの住んでない人間には、なかなか的確に捉えられないものだ。

1936年、アアルトが30代で建てて、以後40年以上住んだ家。玄関から入ると庭に面してリビングとダイニングがある。向かって右手の奥がアシスタントの詰める職場になっていて、住居部分とはスライドパーテーションで区切られる。建築家というより漫画家のような間取りだな、デジタル全盛の今ならさておき、当時はこんな数のアナログ製図机じゃ全然スペースが足りないでしょ、というのが第一印象。当然すぐ手狭になり、加えて公私の線引きも難しかったようで、結局スタジオは別建てされたというオチがつく。でも中年期に自前のチームを持てたらまずはこんな夢の仕事場を作りたいよね。コンセプトはよくわかる。

西洋式のドアと、ふすまに似た引き戸、巨大なスライドパーテーション、布のカーテン、日本風の簾ブラインド、木製の蛇腹戸などなど使い分けて、狭い空間に多様な景色を作るメリハリだけでも見応えがある。土間、板間、リノリウム、カーペット敷きと、マントルピースなどとの境界線も絶妙だ。どこをどう歩いても境目で人の意識が自然と切り替わるこの感じは日本家屋の、畳と縁側は地続きでも決定的に違う、という感覚とたしかに似ている。洋風建築に馴染ませた和テイストなんて現代日本でもさんざん目が慣れているはずが、その巧みさに唸る。

ジュートのような繊維素材が貼られた壁について熱心に訊く参加者がいたが、他のことは異様に詳しい解説員がそこだけ「なんか植物、北欧には無い素材」と雑な回答していて可笑しい。畳のように張り替えもきかないし、高温多湿の土地で真似したら大失敗しそうだけど、この気候ならではのアジアンテイストだろうな。ダイニングの収納や家具の一部は妻アイノのデザイン、他にも照明などアアルト作品がちりばめられていて、多くが当時のままだという。「地下にはサウナがある」と聞いて「巨匠もやっぱり入るんだ自宅サウナ!」と謎に嬉しくなる。キッチンともども非公開。

小さい家、小さい家、と繰り返す解説を聞きながらも、大人二人で1BRに暮らす身には「十分広いのでは……」という感想。職場の奥の中二階に本棚だけを囲った「建築家の部屋」というデンがあり、最高に居心地よさそうで「ここだけでも住めちゃうが?」と驚く。一方で、二階に上がって主寝室と子供部屋と客室を見せられながら家族構成の変遷や子育ての逸話を聞くと、うーん、それにはちょっと狭いか……? とも思えてくる。家族全員が同じ美意識で、プライバシーに寛容なミニマリストでないと難しそう。優雅に人を迎え入れるつくりのようでありながら、つねに設計者の思想と一体化することが求められる印象だ。

一階もサンルームのように明るかったが、二階もまた、自然光を取り込むために屋根に丸い天窓がくり抜かれていて、落ちてくる太陽光が美しい。しかしこれ、冬場はただただ暗くて寒くて断熱効果が落ちるだけなんじゃないの……? と質問すると、「でも、ヘルシンキは全然雪降らないし、屋根が真っ平だからガラス嵌め込んだ天窓の雪かきもラクなのよ」と解説員。いや今あなた北極圏と比較しましたよね?w とはいえ、たとえ秋冬のごくごくわずかな日照時間でもなけなしの自然光を室内に取り込める、寒い季節でも晴れれば部屋の中まで丸く太陽が落ちてきてくれる、というのは得難い価値だ。後日調べたら断熱構造も気合が入っていた。そりゃそうよ。でも図録をめくっていたら一階の腰高窓のすぐ下まで雪が積もった庭の写真もあった。すごい降るやん雪。

1時間かけて邸宅を隅々まで見学する、長いような短いような充実した滞在時間。14時回の参加者たちとすれ違い、庭をぐるりと見て回る。緑したたる、という形容がぴったりの、白い邸宅が埋もれるほどの庭。そして順路にない位置に実用性の高そうな納屋が併設されていた。そりゃそうよ。どう考えても室内収納が足りないでしょうよ。

少し離れたところに後年建てられたスタジオがあり、建築好きにとってはそちらの見学ツアーが本丸なのだろうが、我々は散歩がてら外観だけ拝ませてもらう。自邸とスタジオを繋ぐ直線距離の道は高級住宅街で、伝統様式の家屋が一つもない、ひとっつもない。代わりに通り全体がなんとなーくアルヴァ・アアルトっぽい雰囲気の北欧モダニズム建築で統一されており、微笑ましい。そりゃそうよ。私だってこんなお膝元に土地が買えたら、アアルト風のお屋敷を建てたいわよ。車を停めたガレージからものすごくものすごくものすごく柄の長いモップを出して、二階部分の広範囲にはめごろしたガラス窓をせっせと清掃している住民を見かけた。鑑賞するには美しいけど住んで自力でメンテナンスするの大変だよな、本当に。

来たときとは別のTiilimaki駅からトラムに乗って、15時前にはエスプラナーディ公園付近まで戻り、イッタラ/アラビア旗艦店を再訪。ああだこうだ迷いながら買い上げたものは、夫婦でビールを飲むのによさそうなペアグラス、クラウスハーパニエミが絵付けしたマグカップを大小二種と、ボウル一つ。自分用に我が推しムーミンパパ柄のタオルと、Fiskarsコラボのハサミ、夏柄ミニグラスを二つ。大半がセール価格だった。手慣れたプロの店員が緩衝材を兼ねた包装紙でぐるぐる巻きにしてくれたのでそのまま持ち帰ったが、帰国後に開封したら重ねて包まれていたミニグラスは一つが割れていた。自分で包み直せばよかったね、残念。

夏至に来て眺めると、ムーミン公式は夏物デザインに心血注いでいることがよくわかる。夜祭りや海遊びに興じるご一家の図柄は大層かわいいし、ビーチブランケットや防水ポーチやピクニックセットを量産すれば、白夜(仮)の浮かれ気分で必ず買い手がつくだろう。なるほどな。それにしても他のお客さんの購買ペースがすごい。なんであんなに何枚も何枚もキャラクター絵皿を買ったり、イニシャルあしらったマグをカゴいっぱい買ったりできるんだ、どんな収納の豪邸に住んでるんだよ……と眺めていたら、「欧米人はね、ぜんぶ他人に贈るんだよ、配りまくるの、今からもうクリスマスプレゼントの買い溜めしてるの! うちはもう食器足りてるから買いませんよ!」と、欲しいものは全部自分で買うプレゼント嫌いの夫が吐き捨てるので笑った。

夫のオットー氏(仮名)はこの日も部屋で休憩を取るとのこと、荷物を置いて、16時過ぎくらいに私だけ出かける。宿にほど近い場所に隣接するかたちで並び建っている、デザイン美術館と建築博物館。チケットは共通。こちらも新しく「ヘルシンキ建築&デザイン美術館」として移設が予定されているそうで、展示規模が控えめだった。何度も言うけど、どこもかしこも常時「新しいこと準備中」で、そのことを来場者にアナウンスしながら可能な限りの開け閉めをしている北欧の感じ、まったく悪い印象でない。よそだと「金返せ」って思う、差は何なんでしょうね。

デザインの常設展は、フィンランドのデザイン史を駆け足ながらコンパクトにまとめていて非常に見やすい。アパレルやテキスタイル、椅子と食器、ハサミとヤカンと洗面台……ついさっき同じものを買ってきたよ、何なら持ってるし実家にもあるよ、というような製品がうやうやしく陳列されている。でも日本でだって、そうしたプロダクトデザインの付加価値を高めるために改めて総覧するような博物館、ものすごく大事なんじゃないかな。アアルトの花瓶のすぐ向かいにスネークとアングリーバードの展示があって、そういえばゲーム大国でもあった、と思い出す。

建築博物館では受付の男の子が、閉館間際だから隣接カフェから賄い飯をもらったのだろう、皿に盛ったサラダやケーキをずーっと食べていて、もぐもぐしながらモギリや土産物の会計をしてくれて、恥ずかしそうに静かに照れ笑いするんだけど、もぐもぐも全然やめなくて、かわいかった。外からの視線にもじもじ照れながらも無言でマイペース、これが北欧っぽさだろうか。ニューヨーカーは恥じないし照れないし、関西人と同じで自嘲するときさえも他人を巻き込んでイジって笑わせる(この状況なら皿を出して「お客はんも食いまっか?」くらいは絶対言う)ので、新鮮だ。

両館共通で「FIX: CARE AND REPAIR」という企画展をやっていて、こちらは正直、今一つ。改築中の建物を撮った組写真、掃除道具のプロダクトデザイン、キーボードやゲーム機の基板などを清掃するASMR動画、日本の金継ぎや刺子で補強された足袋の紹介、有名なデザインチェアを若いアーティストがリメイクする企画など、着眼点はよいが散漫で、特別な感銘は受けない。同じ広さの展示空間なら、殿堂入りグッドデザインを見せる常設展のほうがずっと練られていた。新館が建って常設展7:企画展3くらいの面積比になれば、印象が変わるかもしれない。ところで今回の旅、晴れの日はほとんど丸五の地下足袋を履いていたので、足袋の展示と記念撮影する。

17時半くらいにAcademic Bookstoreに立ち寄り、併設のアアルトカフェを見学。書店でも喫茶室でも日本語が聞こえる。吹き抜けの立派な大型書店なのだが、書籍の売場面積はかなり縮小した様子、がらんとしたイベントスペースと、文具や画材を売るエリアが目立つ。いずこも同じ出版不況よ。政治棚にはロシア関連書籍、手芸棚には日本の編み物の本などあった。私はフィンランド人にノルディックセーターの編み方を教わりたいけどな。ムーミンショップも再訪し、ポストカードとアングリームーミンのキーホルダーを買う。18時前、公園前のテラス席で合流した夫のオットー氏(仮名)に見せびらかすと、「またムーミン増やして……!」と完全にアングリームーミンと同じ仏頂面になるので笑う。

夕飯はヨルンカツあたりで決めようぜ、昼ン活が終わったら夜ン活だ! と歩いている途中に「Bier Bier」というビール屋があって、まんまと吸い込まれてしまう。5種のビアフライトを選んで二人で分け合う。すごくいい店。家の近所に欲しい。すっかりのんびりした。本来の目当ての店は「Yes Yes Yes」というベジタリアンレストランなのだが、行くと「20時半まで予約だけで満席」と門前払いを食らう。とはいえ、言うほど混雑して見えないので、近所で飲み直しながら空くのを待つことに。

通りがかった「Bar Mate」でコーディアルで香りづけしたウォッカとレモネード入りのワインボールを飲む。北欧、ワインの印象が薄いぶん、カクテルにハズレがなかった気がする。軽食で小腹を満たしてすぐに出たのだけど、ここはバーというより、階上にある企業かコワーキングスペースかその両方かに併設された、ラウンジ的な場所であるようだ。トイレが広くて便器の隣にテレビがあった。何を言っているのかわからねーと思うが、便器の隣にテレビがあったとしか言えねえ。

20時過ぎに「Yes Yes Yes」へ行くと案の定、すぐ通してもらえる。おしゃれな店で、着飾ったデート客が目立つ。酒はもういいかなと、Sea Buckthorn(サジー)のモクテルを飲む。これも今朝のホテルバイキングで知ったばかり、古来から重用され、現代ではスーパーフルーツとして再注目されている、北ヨーロッパ全域にあるグミ科の果物だそう。ビタミンのかたまりのような味、しみる。ハートオブパームのサラダ、シグネチャーだというキウイの入ったリゾット、デザートのチョコレートムースまで平らげる。待った甲斐あってどれも美味しかった。