ザ・インタビューズ転載日記(グランジョ25周年)

ハドリー・フレイザーがラミン・カリムルーの首をさわったのは結局どういうことだったのだと思いますか

ちょっとぐぐれば即こんなまとめ画像が出てくる
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2010年10月に開催された『レ・ミゼラブル』25周年記念コンサートにおける「Drink With Me」という曲の中で、グランテール役のハドリーフレイザーが革命に殉ずる虚無感を酒に酔って捨て鉢に歌い上げた後、革命のリーダーであるアンジョルラス役のラミンカリムルーに咎められ、そのことに反発して掴まれた腕を振り払い、しかしめげずに語りかけるアンジョルラスに何事か熱心に諭され、一度は拒んだその手で、渋面のまま彼の髪を撫でうなじをそっと抱く……というシーンがあるのです。グランテールが彼の崇拝してやまないアンジョルラスに囁かれた言葉、それが「嫌なら出て行けよ」なのか「俺にはおまえが必要だ」なのかはわかりませんが、彼は結局、自身の理念や思想ではなく、また厭世感からでもなく、「ただ、己の愛するアンジョルラスのためだけに」彼とともに死ぬことを選んだ。360度どこから見ても「やおい」の三文字でしか表現しようのないこの小芝居について、私がどんなふうに考えているのか、というご質問です。

いや、もう、だから、どうもこうも……これは「やおい」の三文字でしか表現できないでしょう……。現在YouTubeには当日の客席から撮られた動画が多数流出しているのですが、「Drink With Me」のコメント欄を見るとご当地ロンドンはおろか世界各国の腐女子たちから「何これどういうこと!?」「ぎゃー!! 毎日見ても飽きない!!」「かわいいかわいいかわいいかわ(ry」などと悶絶のコメントが寄せられています。私もまた、彼ら二人のこの熱烈かつ過剰な小芝居を観て初めて「グラ×アン×グラってこんなにイイものだったのか!!」と蒙きを啓かれたのでした。ハドリーがラミンの首をさわったのは、私にABC友の会の萌えツボを伝えるためだった……そんなふうに思うことしかできません。

もう少し真面目に回答しますと、ハドリーフレイザーとラミンカリムルーは、このステージで共演する以前からちょっと目の遣り場に困るほど異様に仲の良い親友同士であることで知られ、現在はThe Sheytoonsというバンドまで結成している間柄です。つまり、このコンサートにおける共演が決まってから本番を迎えるまでの期間、彼ら二人が他のキャスト同士よりもさらに熱心に、アンジョルラスとグランテールの関係をどう演じるか、濃密な対話を重ねながら練り上げていったであろうことは想像に難くありません。「Drink With Me」以外にも、カフェの登場シーンや退場シーンなど、彼らはつねに「対」の存在として行動し、いついかなるときも小芝居を欠かさない、旦那と女房のように距離の近い二人組を、完璧に演じきっておりました。

ミュージカル版においては舞台中央にバリケードが築かれ、最後の決戦で敵に撃たれたアンジョルラスを追うようにしてグランテールもまたそこに斃れるのですが、舞台装置のないコンサート版では、その最大の見せ場がカットされています。彼らがコンサート版においてやたらと過剰に演技してみせたのは、そうした違いのせいもあると思います。制約の多いコンサート版において、アンジョルラスとグランテールの特別な関係を凝縮して表現するために、あれだけ綿密に設計された、親友同士ならではの息の合ったパフォーマンスを見せてくれたのだとしたら……彼らの作品への愛、芝居への情熱に、あらためて敬服せざるを得ません。ハァハァ