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ザ・インタビューズ転載日記(素直)

「素直じゃないよね」と言われたり、言ったりしたことはありますか?



一見「Yes/No」で答えられる質問のようでありながら、回答者にそれ以上のものを求めるタイプの質問ですね。自分の手を汚さずに誘導尋問一つで余計なことまで語らせようという、質問者の貪欲なお人柄がうかがえます。しかしながら私は、トップページの軽佻浮薄かつファッショナブルな雰囲気に徹底抗戦すべくザ・インタビューズ上ではつねにガチレスを心がけるつもりですので、こうした思わせぶりな質問には、努めて思わせぶりな回答で堂々と迎え撃ちたいと思います。

「素直じゃないよね」と自分から人に言うことは、しょっちゅうです。とくに、男性同士がホモソーシャルの枠内で仲良く喧嘩をしている光景を眺めながら、「素直じゃないよね(ハァハァ)」となることが多いですね。最も心を許しているはずの相手を敵と見做して攻撃したり、かわいい子だけ特別に贔屓しておきながら公平性を保っていると主張したり、見えすいた嘘をつき通して自分の気持ちを素直に認めたがらない男性というのは、どうしてあんなに愚かしくもかわいらしいのでしょう。「素直じゃない」という態度は「やせ我慢」と密接に結びついています。観念のレベルで社会的にマッチョであらねばと思い込んでいる人々の、自分にも他人にも無益なだけの「素直じゃなさ」には、大変萌えるものがあります。

「素直じゃないよね」と人から自分が言われた経験は、さほどありません。日本人女子の平均と比較して、わりとストレートに感情を表わすほうだと自覚しております。興奮すると顔が赤くなるとか、つまらない話をされると眠くなるとか、アホとは目を合わせようとしないとか、おなかがすくとイライラするとか、美味しいものの前では無口になるとか、おおむね「わかりやすく顔に出る」と評されることのほうが多いです。感情を持て余して心にもないことを言うこともありますが、自分では「ツンデレかわゆすなぁ」程度に思っています。そして、第三者から「素直じゃないよね」「もっと素直になりなよ」と言われると、反省するよりも憤慨するほうが先に立ち、「そんなこと他者から強要されたくないよ!」とさらに態度が硬化していきます。

私は10代のある一時期、まるで絵に描いたような「恋に落ちる」経験をしたことがあります。詳細は省きますが、とある男性に一方的に惚れ込んでしまったというだけの熱烈な片想いでした。当然、想いを打ち明ける勇気などあるはずもなく、見かねた知人が水を向けてくれても「ばッ、えッ、絶対そんなんじゃありません、むしろ嫌いです! 死ねばいい!」と叫んでその場を走り去る始末。やがて時が経ち、どんな鈍感野郎でもこれはさすがに気づいてて無視しているのだろう、という絶望的状況が誰の目にも明らかな段階まで至り、「女子から告白して玉砕しとくなら今ここが最も痛手が少ないよ、連絡先くらいは教えてもらえるかもよ」と全部お膳立てしてもらったにも関わらず涙目で敵前逃亡、にっちもさっちもどうしようもなくなった私は、……髪をばっさり切ってベリーショートにしました。それはもう、迂闊に「あれ、髪切った? 失恋?」などとは訊けないくらいの、ロンドンパンクか三蔵法師か、というくらいまで刈り込んだベリーショートです。

その限りなく坊主頭に近い髪型を見て、その人はひとしきり指をさしてゲラゲラ笑い、その場にいた誰よりもさんざん笑い、それで別れ際に一言「おまえ、本当に正直なやつだなぁ」と言われたのを、私は今でもずっと憶えています。その口調のやさしさだけで、なんだかもう一生に足る大恋愛をしたような気になってすっかり満足してしまいました。そう、私はいつだって「素直じゃない」わけではない。ただただ「正直なやつ」なのです。