ザ・インタビューズ転載日記(恋愛)

あなたにとって恋愛とは?



夢見がちな幼女だった頃は自分のことを恋愛体質だと信じて、「いつでも恋をしていないと死んでしまう!」と思っていました。たぶん松任谷由実の聴きすぎです。女子校へ進学して男子との出会いの機会が極端に減ると「別に恋しなくたって死にはしないなー」と気づかされました。代わりに、同性の先輩に憧れることで疑似的な片想いに興じたり、自分が後輩から同じことされたりして、本物の恋愛をせずとも「気分」だけ味わうことも十分に可能なのだと知ります。同時期に二次創作やおいに熱中していましたので、今で言う腐女子の一員として「おまえが男(=女)だから好きなんじゃない、おまえだから好きなんだ」という例のフレーズこそが、巷の恋愛よりもはるかに気高いものであると信じていました。所詮はエロ本の中の幻想ですけどね。

人にはよく「私のことをあんまり好きじゃない男が好き」と説明しています。私が運命の恋に落ちるような、魂が高位にある素晴らしく尊いこの世の宝にも等しい男性は、私ごとき下位の婢女を熱烈な情愛の対象としてなんか見ないでいてほしい……だって、夢中で追いかけていたはずの白馬の王子様がちょっとメールに返信しないだけで泣いて縋って来たりすると、こっちが萎えちゃうでしょ……それ、私がやるほうなんだけど……みたいな。それで、友人に「あんたの恋愛観はアキレスと亀だよ!」と評されたことがあります。

自分ではそんなに無茶なことを言っているつもりはないのですが……。王朝文学を読めばこのくらい気楽に色恋沙汰したいよねーと思うし、政略結婚で敵国に嫁がされたけど添い遂げて和平の象徴になりましたという夫婦の話なんかも大好きだし、もし生まれる時代が違っていたら、顔も知らない相手と見合い結婚して子供産んで見えないところで適当に不倫して、そこそこ佳い奥さんになったと思うんですよ。男女関係を自由恋愛から始めなくちゃいけない現代って面倒きわまりないよなぁと思う程度には、古風な女です。大和撫子!(←誤用)

私にとって恋愛とは、つまり何でしょう、「贅沢品」ですかね。あると嬉しいけど、そればっかりでも困るし、あんまり日常的すぎると贅沢をする意味がないから、たまに箱の中から取り出してニヤニヤしてるくらいが一番幸福なんじゃないですか。つまり、そういう調子だから、贅沢を恒常化させようという現代的な姿勢で恋愛に臨んでいる殿方とは、価値観やテンポの一致しないことが多いのでしょう。そんなことより心の平穏が大事です。鈴木祥子の歌にある「爪が折れるくらいにダイヤルすることも/子猫のように誰か待つことももうない」生活というのも、それはそれでいいものです。昔はそんなのあまりに寂しすぎるなぁと思っていたけれど、今はこれに続く「燃えさかる火の中で手に入れたダイヤさえ/角が取れ転がってこの手から落ちてゆく」という歌詞の意味が、すごくよくわかります。贅沢品というのは、つまりそういうこと。

井上荒野の書いた「もう二度と食べたくないあまいもの」というのも本当に秀逸なフレーズですよね。グサッとくる。この回答を書きながらずっと頭の中にあって離れませんでした。いっときの美味よりも、長く続く胸焼けのほうが記憶に残るものたち。でもまた食べちゃうんだろうな、いつか。