ザ・インタビューズ転載日記(着物)

貴方にとって着物ってどんなイメージ?



着物を日常的に着る、ということは、私にとって「ずっとやり残している、考えるだけで胃の痛くなる夏休みの宿題」みたいなものですね。頭では、やらなくちゃいけない、やるべきである、やれば結構うまくいくはずだし、ハマるとやるのも面白いんじゃないか、と思っているんだけれども、実際には手が伸びないで、机の上に出しっぱなしにしたまま、別のことに惹かれて外へ遊びに出かけてしまって、夕方になって帰宅して視界の隅に捉えると、朝よりもさらにうんざりする……という。こう書くと絶望的な気分になりますが、まったく悪いイメージではありません。そのくらい「できるようになりたい」という意味です。

「日本人なのに着物も一人で着られない」というのは、箸の持ち方が汚い、癖字である、というのと並んで、私の文化コンプレックスの三本柱です。民族衣装について他の文化圏の人に何も説明できない、人の助けを借りてお任せでしか着たことがないって、隣に座った外国人のほうが箸の使い方がきれいだったとか、「お名前頂戴できますか」と硯と筆と芳名帳を出されて硬直してしまうのと、同じかそれ以上に、恥ずかしいことだと思っています。

今までに何度かお誘いをいただいて、着物女子の仲間入りをしようと目論んだことがあるのですが、最初の一歩が踏み出せないまま現在に至りました。原因を分析してみると、一つには、自分を装うことにさほど高い関心があるわけではないこと。ぶっちゃけ洋服のスタイリングやメンテナンスさえ他人任せにしたいのに、衣装箪笥をもう一つ増やすような趣味に飛び込んで行けるものだろうか、と。もう一つには、着付だけ習っても実際に着るシチュエーションが想像できない。運転免許を取得して実家に車があっても結局ペーパードライバーと化したのと同様、楽しくdriveする自信がない、ということです。

私の周囲で素敵に着物を着こなしている人たちの多くは、お稽古事で必要だから覚えたとか、同好の士と集まるのが嬉しくて続いている、と言います。自分にそういう気持ちが起こったら自然に「着よう、着なくては、着たい」と強く思うはず、その時機まで待てばいいのかな、と問題を先送りにしている状態ですね。子供の頃は漠然と「30代になったらシャネルのスーツを着て、40代になったら和装をして」と夢見ていましたが、人生そう簡単には年齢で区切れるものではありません。今日も仕事着はユニクロのジーパンです。