すでにこの世を去ってしまった人(知人・偉人・著名人 問わず)がもし生きていたら、誰と話をしたいですか?
「すでにこの世を去ってしまった人、誰彼問わずそんなことが可能になってしまったら、皆と会って話したくなってしまうから、そんなことはできなくていいです」というのが回答ですね。ツタンカーメンからディオゲネスからレオナルドダヴィンチから自殺した友人から大往生した母方の祖父まで、あれこれ考えましたけど、別に、どの人とも本気で話したいわけじゃないと気づかされました。誰かもっと切実なご事情をお持ちの方にLivlisでお譲りします。棄権しますよ。
架空の人物でよければ、死んでしまった人ではなく、民話「兵隊と死神」の、不死になった兵隊と話がしてみたいな。『アーサーランサムのロシア昔話』で読み『ジムヘンソンのストーリー・テラー』で観て以来、このお話が私を魅了してやみません。平たく言うと、天国へも地獄へも入れないジャックオランタンみたいな奴です。この際プロメテウスでもいい。傾聴ボランティアの精神で、永遠の中の一時を、ひまつぶしの相手になってあげたい。
「ホームズの帽子」で降霊術師ケイシイクレイバスに問われたエドガーが、メリーベルの霊を呼んでみるように言いますけれど、大人になった今あのシーンを読むと「会いたい故人をたった一人だけ即答できるなんて、やっぱりエドガーって、何も知らない学ばない内向きな『子供』のままなんだよなぁ、やなやつ」と思ってしまいます。
ところで、あのシーンでクレイバス氏が闇の中へ消えてしまうくだり、皆さんどう解釈なさっているんでしょうかね? おそらく大きくは「バンパネラの霊に接触しようとしたことで中間世界の次元回廊へ消えた」説と「茶番にいたたまれなくなったエドガーがもっとえげつない手段で物理的に消した」説にざっくり分かれるはずですが、私はどちらかというと前者派です。クレイバス氏が消えたのはタネのない心霊的なことで、エドガーが得意の軽業で物理的にその場を去ったことと(登場人物たちにはすっかり混同させ、読者には明確に)区別させているのだと思うし、何より、エドガーがなんでもかんでも自分で片付けてしまうという展開が大嫌いであるし、あと、……そうだ、クレイバス(たぶんCayce Craybas)氏の名前が、クレヴァス(crevasse)を連想させるから、世界と世界の狭間にある深い裂け目へ音もなく落ちていった……というイメージがあるのだろうな。24年目にして初めて気づきましたよ、そんなこと。
まったく回答にはなっていませんが、この気づきだけでも、答えた甲斐がありました。そっか、クレイバスがクレヴァスかぁ。