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2017-01-01 / 謹賀新年、実質無職。

あけましておめでとうございます。旧年中はお世話になりました。フィラデルフィア旅行のことさえ書いてないんだな! ずいぶん日記更新を怠ってしまったので、たまには真面目に近況報告などしようかと思います。デスマス調で。
ニューヨークで迎える二度目の正月です。2015年秋から籍を置いているパーソンズ・スクール・オブ・デザインは、3学期目にあたる2016年末までで全単位を取得し、飛び級卒業となりました。クリスマス前に学科生だけ集めた簡単なセレモニーがあり、今年5月に全学あげての卒業式を迎えます。今月末からまた新学期が始まって、私はまだそこに属す「学生」ではあるのですが、もう「卒業」してもいるから一コマも追加履修できないんですね。じつは春学期にめちゃくちゃ履修したい授業を見つけ、しかしそれを取るには再入学にも等しいコスト(=学費)がかかると判明して断念しました。何もかも学校中心で「やりたいこと」より「やるべきこと」に追い込まれた1年半がすでに恋しく、まだまだ大学に居残りたい未練がものすごいのですが、このくらいの「強制排出」で社会へ送り出されてしまったほうがいいのかもしれません。「学校」は居心地がよすぎるよ。
引っ越しが決まってから私はずっと「英語圏で働く」ことを一番近い達成目標と定めていて、2016年はそのために専門性を高めたり、新しいビザを申請したりと、慌ただしく過ぎていく助走期間でした。昨秋からは果ての見えない求職活動を始め、私に残る障害はやっぱり言語だなと痛感したので、2017年はとにかく、サボっていた英語の上達を頑張りたいと思います。海外生活者の言う「暮らしていれば自然と上達する」ってのはあれは大きな嘘で、私のように向上心の無い人間は「生活に支障はない」けれども「プロにはなれない」状態がずっと続くだけ。今年は「英語の壁を超えていく」を頑張ります。
一方の「日本語圏で働く」については、学校の宿題に追われて大事な約束を破りまくっていた2015年後半よりは、多少マシな状況になったかな、と思っています。2016年は中断していた連載を再開させていただいたり、見ず知らずの方から新しい企画にお誘いいただいたり、会えば5分で片付く話を電子メールで長々と打ち合わせしたり、あるいは、「アメリカについて書く」といった依頼を頂戴したり……。試行錯誤の一つ一つが有り難く嬉しかったです。昨夏、約1年以上ぶりに一時帰国して生まれ故郷へ戻ったとき、「私は今までよりもずっと、この街のことが好きだ」と素直に思えました。離れると覚悟を決めてから再訪するとまるで違った場所のようで、とても新鮮だった。地の利は最悪だし、半日分の時差も生じますが、これからも海を隔てた遠い場所から、「日本を見つめて日本語で書く」ことも続けていければと思います。
社会人向けの大学プログラムへ通って、世界中から集まった私と似たような境遇の友人たちが、生活の糧としての仕事と、キャリアアップのための学業とを、とても上手に両立させていることを知りました。稼いだ金で学校に通い、学んだことが次の仕事の価値を高める。どちらか一方に集中すべきときは他方を中断しても全然構わない。こうしたフレキシビリティは、日本社会でエスカレーター式に育ち、気づけばこれまで履歴書に一つも空白期間がなかった(!)私にとって、ものすごく自由に感じられます。みんなが世の中のハジッコに陣取って、思い思いの手順で歩むべき道をみずから切り拓いている。この感覚こそが「普通」とされる国に来られてよかったな、という気持ち。今後とも、あちこち回り道して「働きながら学び続ける」が理想です。
学期最後の授業で、一番お世話になった恩師から「君は、DesignerでありWriterでもある。この二つが一つに結びついているのは稀有で素晴らしいことだ」というような言葉を贈られ、日本語の通じない相手からさえ、ただ作ったものだけを見て、そんなふうに評価してもらえたことに、ちょっと、いやかなり、調子に乗っているところです。「なんで物書きなのにデザインスクールなんか通ってるんですか?」と質問されることも多いのですが、私個人の感覚としてはずっと、おそらくは子供の頃から、「概念をかたちにする」という、ただ一つのことにしか感心がないのです。思いついた手段を試しながらその達成を目指しているだけで、その一つ一つは目的ではない。日本語の世界と英語の世界を行ったり来たりしながら、それを万人に納得してもらえるような表現活動を心がけたいと思います。
以上、新しい年を迎えて、この街で「大学生」の肩書に一区切りつけて「実質無職」となったご挨拶でした。ニューヨークを舞台にしたドラマ『パーソン・オブ・インタレスト』(※全腐女子必見)の劇中、「こんなシケたところで大卒の無職に混じってコーヒー飲んでる場合か!」みたいに揶揄される場所があるんですが、そこが、我が家からめっちゃ近所の、私のよく行く馴染みのコーヒー屋なんですよね……。このままではイーストビレッジに跋扈するプロニートの一員になってしまう! 働きたいでござる! 働きたいでござる! というわけで、2017年もよろしくお願いいたします。