ザ・インタビューズ転載日記(THE BOOMとBUCK-TICK)

THE BOOMのバンドとしての魅力は何だと思いますか?

 


じわじわ来る宮沢さんの跳躍力

 

THE BOOM。私が大好きなバンドです。「宮沢和史はモテの権化」と書いて以来、いろいろと反響をいただきました。今回の質問者はおそらく「GANGA ZUMBAでも各種ソロやユニットでもなく、四重奏の魅力とは?」という意図で訊いているはずなので、なるべくそのつもりでお答えします。

また、この質問への回答を考える過程で私は、かねて主張しつつ誰からも賛同を得られなかった件についても、まとめて一緒に書いてみたいな、と思いました。すなわち「THE BOOMとBUCK-TICKを愛する理由は一つ」というもの。どちらか一方のみのファンの方には何の興味もない話でしょうし、そんなことよりユニコーンの話しろよ、と言われれば仰せの通りです。が、私が書かなきゃ誰が書く、という使命感を持って、この私を魅了してやまない2バンドの共通項を探りながら回答していきたいと思います。

■解散の仕方がわからない。

これを最初に挙げるのもどうかと思いますが、「同郷出身で20年以上メンバーチェンジなしのまま解散する気がない」というのは大きな魅力ですね。バンドやろうぜ! というノリのままに上京してデビューして初速でバブル景気に乗り、着実に実力をつけて消えずに残り、活発な課外活動でファンをヒヤヒヤさせながらも世界にまで知名度を広げた挙句、各員がインタビューで「なんでやめないのかって? 解散の仕方がわからなくて……」(by今井寿)と言う。ほのぼのしませんか、いい話じゃありませんか。まぁ栃やんは一人だけ年上で後から入ったわけですが、そこはBUCK-TICKにおけるアニィと同じようなものです(←ざっくりしてるなぁ)。

甲府出身の奴に「東京、愛しき我が街」とか歌われると「ほんと下宿してただけで世田谷文学館が展覧会開催とかいいご身分だよなヲイ」とも思ってしまうわけですが、いや、沖縄行ったりブラジル行ったり大阪でもまれたり、ブラブラとブランカばかりしてる連中が、原点回帰で帰ろうかなと言うときは冷凍ミカン頬張りながら「よっちゃばれ」なのがいいじゃないですか……。ほら、群馬出身のBUCK-TICKにも「北関東より愛を込めて」って名曲があるし……(※タイトル違

イギリスで作られたり全編ポルトガル語だったりする宮沢ソロも、多国籍バンドGANGA ZUMBAも、その他のどんな活動も大好きですが、ファンにはお馴染みとなったいつもの周期でTHE BOOMの休止期間が明け、また活動が再開されると、ああ、このバンドの存在そのものが、私たちファンみんなにとっての「あちこち旅をしては帰ってくる、いつもの場所」なんだなと、そんなふうにも思います。はちみつぱいことムーンライダーズがこのたび惜しまれつつも無期活動休止してしまいましたので、次代を担うご長寿バンドとして頑張っていただきたいものです。

■YMOチルドレンであり、渋谷系かもしれない。

「好きな音楽のジャンルは?」と訊かれると、私は「YMOチルドレン」と答えることが多いです。東京発世界標準のグループに薫陶を受けた、旧来のバンドスタイルにこだわらない、日本語詞がベースのポップ&ロック、という程度の意味です。TM NETWORKからフリッパーズギターまで、LUNA SEAからテイトウワまでをざっくり括れるので非常に便利な言葉ですね。「YMOに憧れて音楽を始めた60年代生まれの人たちに憧れて90年代期を過ごした1980年生まれ」である私は、実年齢で言うとジュニア世代ですが(坂本美雨嬢と同い年)、文化年齢的には「YMOチルドレンズ・チルドレン」とでも呼ぶことができます。そういう同世代のミュージシャンも好きです。

そんな私にとって、宮沢和史と今井寿が、この「YMOチルドレン」の二本柱です。「畏れ多いから」という理由でサポートギターの誘いを断ったくせにギターソロでは手癖で「Firecracker」を弾き続けたり、あえて矢野顕子クラスタのほうへ行ってしまった結果「WORLD HAPPINESS’10」の裏で別個の野外ライブを開催する羽目になったりする、あのひねくれ度合いが……同じクラスの優等生である高野くんや漣くん以上に、ものすごいチルドレンっぷりだと思うのですよ。教室の隅で机に両脚乗っけながら反抗期こじらせてるような、だからこそ誰よりも愛校心が強く、校風を体現しているような……こンの愛らしき不良どもめが……!(>「私立YMO学園」妄想)

一方、Wikipediaにおいて渋谷系の定義は「1980年代のニューウェーブやギターポップ・ネオアコースティック・ハウス・ヒップホップ、1960年代・1970年代のソウル・ミュージックやラウンジ・ミュージックといったジャンルを中心に、幅広いジャンルの音楽を素地として1980年代末頃に登場した都市型志向の音楽」とされています。大体こんなような意味合いにおいて私は、1995年頃からずっと「THE BOOMとBUCK-TICKだって広義の『渋谷系』だ、バンドブームと渋谷系の狭間に分断はなく、淘汰されずに残った2つのバンドがその証左だ」と主張しておりました。ま、誰にも頷いてもらえなかったけどな!

これは要するに、渋谷系が大好きだけどボーダー着てカフェオレ飲みながらアプレミディにカヒミカリィばっか聴いてもいられずに「非オサレ」な音楽も愛好しながらヘドバンしていた自分への言い訳です。いや、でも、そういう目線でこの2つのバンドの魅力を再発見してみてほしいのだよね、YMO好きにも渋谷系好きにも! しかしさすがに「HEATWAVEも渋谷系だ!」と言ってた女子高生の私は無茶すぎだと思います。どう見ても博多系だろ。以上、敬称略。

■音楽同様、ヴィジュアルが立っている。

THE BOOMの四人は、体型こそ違えど背格好がだいたい似ているので、お揃いの衣装を着せると四体の人形みたいに見えるのがとてもカッコイイし、すごくカワイイのです。もはやメンバーだけでステージに立つことのほうが少ない彼らですが、四人が派手なお揃いの衣装を着て、ゲストやサポートミュージシャンは地味な色で抑える、といったスタイリングが好きですね。よくできたスタイリストがついたときのTHE BOOMは、ほんと最強です。たとえばベストアルバム『THE BOOM』みたいに同系色の中に埋もれて一体化してしまっているようなヴィジュアルとか(こう書くと『狂った太陽』みたいだ)、最新アーティスト写真におけるタイトなスーツ姿とか。だがしかし、メンバーそれぞれに好き放題な格好をさせると、まさにNo Controlな地獄絵図……いや、まぁ、具体例は挙げませんけれども、「このやろー! 見た目で得しやがって!」と思う回数と「このやろー……見た目で損しやがって……」と思う回数が、拮抗している。これBUCK-TICKもまったく同じですよね。月さえも眠る帽子≒魔王様の豹柄ほっかむり。真顔で熱唱されればされるほど噴く。

顔がデカくて脚が細くて多動症気味の宮沢さんは、ほっとくとピタパンにぶかぶかシャツを羽織って腕は萌え袖なのに前ボタンは全開にはだけてる(手首隠して乳首隠さず)みたいな格好ばかりするわけですが、本当は、ロングスカートとかボンテージパンツとかガッツリ重量感あってターンするたび飾りがヒラヒラするようなボトムス重めの格好も超似合うんですよ。というかそのほうがバランスいいよ(老婆心)。ドラァグクィーン的なフルメイクも映える顔立ちで、下手なV系には負ける気がしません。さすが一度は原宿神宮橋のたもとを掌中におさめたフロントマンです。先日の「よっちゃばれ」歳末公演でもどこの鳶職の頭領かと見紛う和製サルエルパンツが超かっこよかったので、これからも年甲斐なく攻めの姿勢のステージ衣装を着こなしていただきたいものです。そして、カッコよく振り下ろしたはずの真紅の番傘がオチョコになって、一曲目から私に「ダッセエエエwww」と指さして笑われ続けていればいいよ。愛。

そんな宮沢さんの左右に、襟元までキッチリとボタンを締めてる山ちゃんとなぜかヘソ出しホットパンツの孝至が控えている、足して二で割ればちょうどいいのにねえ、何それ栃やんちゃんと楽屋で着替えてきた? そんなTHE BOOMが大好きです。ほるすたいんづの活動再開も待たれます。

■神無き世界で、踊れよFISH!

「ボーカルがかわいそうなイケメンだ」「メインの作曲担当がダンス担当でもある」「ギターソロ弾いただけではキャーキャー言われず、ボンゴ叩いたりコンガ叩いたり脚でテルミン弾いたりしないと客が盛り上がらない」「ベースがかわいい屋さんだ」「ドラムが癒し系のお兄さんだ」などなど……THE BOOMとBUCK-TICKの共通項は表面的なことだけでも山のようにありますが、まぁ一応は音楽の魅力にもふれておこうと思います。上述のtweetに

ロック編成で世界中のダンスを踊ろうぜ、という音楽性は言わずもがな、神の居ぬ間に生殺与奪の愛の祝祭を、みたいな詞も似てる

と書いたようなことです。ずっと言い続けてますが、彼らは「ジャンル:ダンス」なんですよ。「下半身モヤモヤ、みぞおちワクワク、頭クラクラ」というコンセプトを、見事に継承しているチルドレン。王道ロックバンドのライブを観ると「下半身が揺れない」ことに衝撃を受けます。くびれた腰がグルーヴしながらスポットライト浴びるだけでフェラーリより早くイケる、そんなロックンロールの限り無きうねりの中じゃなきゃ糾弾BooingBooingですよ。そしてまた一方で私は「えっ、最初から最後までシーケンサーで四ツ打ちとか飽きるんですけど」みたいなワガママも言い出すので、スカもサンバもボサノヴァもジャンゴもフラメンコも琉球音階もあれこれ全部混ぜ込んで、カッチリ刻みつつそこそこ生音で踊らせてくれなくちゃイヤなのです。ついでに、会場が一体化できるおバカな「振り付け」もなくちゃつまんないです。時計の針がくるくる回って情ションガションガ、独壇場Remember to Die!!

あとこれは私がカトリック教育を受けて育った反動もあるのでしょうが、彼らの詞世界における宗教観に、深く共感をおぼえ魅力を感じます。英国音楽の影響下にあって、でも一神教に対する背教者というのとも少し違う、八百万の神々のおわす国の独自の死生観を大和言葉に載せながらの、「神様(Life-Watching-Overlord)はいつも意地悪さ」という姿勢ね。「小うるさい監視者が見て見ぬフリをしている隙に、人類だけでパーティーを続けよう」「死はつねに生のすぐ隣に在る、だからこそ愛の名の下に泡沫の日々を満喫しよう」「だけど悪業三昧の我々には裁きの日が訪れる、どうせいつかは天国に落ちるなら、きみのそばにいたい」という感じ……とでも言いましょうか。二十数年、同じこと歌われてても、まったく飽きないなぁ。本物のキリスト教圏で育ったリスナーには評判よくないかもしれないけど、私は好きですね。日本語ロックにしか書けない世界観と思うのよね。

しかも、ライブではフロントマンがしょっちゅう「磔刑」のポーズを取っては、贖罪こそがロックスターの責務とでも言わんばかりに、詞の中で何度も何度もみずから命を絶つ。最新アルバムは「ゆっくりおいで」というバラードで終わるのですが、これ、普通に聴くと泣ける曲なんだけど、長年聴いてると「また先立つ不幸ネタかよぉぉぉ!」というツッコミが止められません……ほんとよく死ぬよな、キラメキの中で。嫌いじゃないぜ。


■ライブに行くとよくわかります。

……どんどん質問の趣旨から離れてきましたが大丈夫でしょうか……何でしたっけ? バンドとしての魅力? 結局のところ「ライブに行け!!(どーん)」に尽きるようにも思いますね。

こういう言い方も何ですが、昨今のTHE BOOMのアルバムって、様式美の世界なんですよ。まとめて聴いていただけるとわかると思いますが、曲構成の起承転結が毎回一緒で、「こう作れば安泰」という方程式をなぞりながら、それぞれのラインにおける新曲が創出されていく感じなのです。自家中毒とまでは言いませんけど、本当、宮沢さんは10曲に1曲は不倫の道行をテーマに短調のバラード書いて、沖縄3回につき東京1回の割合で情景描写しないと死んでしまう病なのかと、いったいどんだけ海には海風で森には森風で鳥が島を渡ってありがとうがひとりぼっちじゃないのかと、小一時間問い詰めたくもなります。生粋のBOOMERにしてみればそのマンネリズムこそが心地よくツボを刺激するのだけど、よく知らない人がCDだけ聴いてたら「どれも似たような印象だなぁ」で終わってしまいそうですね。息の長いバンドの宿命なのかもしれませんが。おっと「NEOGEO+いいあんべぇ」の悪口はそこまでだ。本当に素晴らしいマッシュアップですよねアレ、三曲目として「Memento Mori」も混ぜてほしい。

そこでライブですよ、ライブ。アルバムがエッセンスを冷やして固めた「煮凝り」なら、ライブは今まさに沸騰して吹きこぼれそうな「鍋物」です。どちらかだけを好きになるというよりは、別物として楽しんだほうがいいし、みんなで味わうなら鍋ですよ、鍋。一回参戦してみると、最後には自分自身が締めの雑炊みたいにグダグダになれますしね。要するに一曲一曲がどうこうではなくて全体が総体として好きなのだ、と思えますから。幼児も多くて、ピーギャー騒いでて、それをMCで「泣きたい日もあるさ!」とかいじられてて、和みますしね。まぁ、その直後に痴女たちが「MIYAー、全部脱いでー!」とか叫ぶので教育上よろしくないですが……。

何せ、必要なときに必要なだけサポートメンバーを呼び、万全の体制でパッケージ化された音楽の完成度が、むちゃくちゃ高いので……。それはそれでいいことなんだけれども、そうやって手間隙かけて作られたアルバム楽曲を、最小限のメンバーで再構成する、精度は下がったとしても「何なら全部、四人だけでもできちゃうぜ!」とやってみせる彼らのパフォーマンスを観る喜びは、何物にも替えがたいです。たとえば私はディックリーが大好きで彼の多重コーラスが聴けない「真夏の奇蹟」なんて正直物足りないわけですが、だからこそアレンジをまったく違えて盛り上げようとする四人の演奏が、さらに好きですね。石川さゆりやユウの代わりに大城クラウディアが歌った「暁月夜」「蒼い夕陽」なんかも、「ああ、THE BOOMはTHE BOOM、ゲストは所詮、ゲストだもんな」と思えるから好きでした。CDで聴いてる分には、あの人やこの人なんてもう追加の正式メンバーにしちゃってもいいんじゃないのと思えるけれど、そこは絶対そうしない「四人組」の矜持も、ライブでは存分に味わえますよ。

四十路過ぎとはいえ、ライブで観るとまだまだ「さっすがホコ天出身バンドだなぁ!」と思えるものです。なんだろね、四人が四人ともちゃんとエンターテナーだからかな。本当にイキイキしてますよね。中央の人が一曲ごとになぜかカタコトっぽくお行儀よく「ドモアリガト」と言うのもBUCK-TICKと同じですかね。そんなとこまで無理矢理に共通項探さなくてもいいですか? いや、だって両方とも大好きで、だけど周囲にはまったく同好の士がいなくて、要するに、誰かと一緒にTHE BOOMとBUCK-TICKのライブに行きたいんですよ……!! というわけで、知らない人が読んでもまったくわからないであろう「魅力の解説」、おひらきです。

■おまけ

昔わざわざバンドとは別形態のユニットMIYA&YAMIで発表した楽曲を、なぜかまた、今度はバンドの曲としてリリースする。そのニュースを聞いたとき、「MIYAが平然とこういうことするの本当に信じられない! こんな話、他の三人になんて言って通したの!? THE BOOMはあなた一人だけのものじゃないのよ!」と大いに憤ったものですが、出来上がった別バージョンの同じ曲、というより、このライブ映像を貼り合わせたムービーを見て、「やっぱりTHE BOOMはTHE BOOMなんだなぁ、この曲もここへ『戻って来た』ってことなのかもしれないな……」と許してしまったものでした。シリアスでシニカルで毒々しい内容の作品が多いはずなんだけど、客席にカメラを向けると、いつでも笑顔、笑顔、笑顔、子連れの笑顔。心底かっこいいバンドだなと思います。

THE BOOM「神様の宝石でできた島」
http://www.youtube.com/watch?v=EcaBXW1paRM