ザ・インタビューズ転載日記(今年のベスト)

今年観た舞台で現時点でのベスト作品は何ですか

なんとか今年のうちに回答できましたね。「舞台」の解釈にはさまざまありますが、ここでは「劇場で上演された演劇」に限定して、舞踊やマジックショーなどのライブパフォーマンス、音楽のコンサートは除きます。そういえば今年はミュージカルにかまけてかまけてかまけまくったので、他ジャンルの舞台ってあんまり観なかったんだな……。

あ、ストレンジャー

ストレートプレイ枠は、マームとジプシー『あ、ストレンジャー』(2011年4月、SNAC)。
http://mum-gypsy.com/next/post-22.php

藤田貴大の最高傑作というのは毎回塗り替えられているので、これがベストだとはさらさら思いませんが、「こんなものを観たのは初めてだ!」という一番最初の驚きを記念して。そして今春にこの作品を初めて観て以来、周囲の友人知人たちと一緒にマーム作品をずっと観続けていられるのが本当に幸福。直近だと『犬』もよかったなぁ。でもやっぱり、小さいハコで一つ一つの小道具を見せながら静的に続いていったシーンの数々が忘れがたい。来年も新作を楽しみにしています。

ミュージカル枠は、『GOLD カミーユとロダン』(2011年11月12月、シアタークリエ)。
http://www.tohostage.com/gold/index.html

記憶が新しいので贔屓目ですが、俺の聖子様こと新妻聖子を本気で信奉するに到ったので言及せざるを得ません。『国民の映画』『ニューヨークに行きたい!』など「佳品」をたくさん観ることで満足していたような一年間ですが、年末になってやっと「傑作」に出会えたな、という感じ。ワイルドホーンの楽曲はもちろんだけど、白井晃の演出がじつにいい仕事でした。『新妻聖子のGOLD』って改題して何度でも再演すればいいと思います。また観たい。

……で、まぁ、大方の予想通りだと思いますが、「特別枠」の話をしてもいいですか……。異論はあれこれあると思います、それで当然ですが、でもやっぱり、「2011年のベスト」という言葉から思い浮かぶのは、帝国劇場100周年記念公演『レ・ミゼラブル』の、スペシャルキャスト版です。25年続いた舞台が新演出版に切り替わる、日本語版での最後の公演。もし劇場の神様というものがいるのなら、心から御礼を述べたい。そんなステージでした。素晴らしかった。

だけど、あれってもう「舞台」の範疇を超えてますよね……。「あんなもん芝居じゃねえ、ノスタル爺さん婆さんの集まる学芸会だ、レミ爺ラブル乙」という意見に、じつは賛成でもあるんですよ、私。そりゃあ鹿賀丈史は相変わらず神の子だったし、禅マリはやっと出会えた俺の天使だけど、そんな二人でさえ、けっしてベストアクトではないですから。森光子『放浪記』の上演を「すごい」と言うときに、他の演目や他の女優と相対的に比べて言うものかどうか、何がすごいのか、わかってねーな、森光子は森光子としてすごいんだよ、ベストとかワーストとか関係ないんだよ、と言うのに限りなく近い感覚だと思います。笑。

今年もジョンケアード版のレミゼが観られて嬉しい。今年もまた、巨大な盆がくるくる回り、リトルコゼットもくるくる回り、ライトカーテンの下でバリケードが組み上がって、己の生を全うした人々が白い光の中で天に召される、そんなこの舞台を観られるのも今年が最後かと思うと悲しい。そう思うだけで涙が出てくる。それだけの話です。2011年は私にとって、東日本大震災の直後、春から始まった大好きな『レ・ミゼラブル』が初夏に大千秋楽を迎え、25年の歴史に幕を下ろした、そういう年でした。よそと較べるものじゃないんだ、こればっかりは勘弁してくれよ、と言いたい気持ちです。