2023-04-27 / Jolly Holiday with you, Bard

当サイトまた模様替えしました、新テーマはAbiskoです。物理の部屋の模様替えはもう何年もしていないのにサイトの建て替えは大好き。最近のアクセス解析を見るとスマホからの流入が圧倒的なので、ポートフォリオ的な作りをやめて極限まで簡素化、指で触られる前提であちこちレイアウト変更しました。いい機会なのでLinktreeも自作した。

完全に現実逃避かつ自己満足の領域であるが、控えている別件仕事の肩慣らしも兼ね、早いとこWordPressのフルサイトエディタを触っておきたかった。3日4日かけて集中して作り直し、大変よい勉強になった。「たしかにコーディングと追加CSSをずいぶん減らせたな! ブロックエディタから最新版に触っといてよかった!」という気持ちが半分、「永久に同じ管理画面である保証はどこにもないのに、えらく検索性低い書式で独自記述があちこちに散逸してるけど大丈夫……?」との不安が半分。「誰かがぐちゃぐちゃに触って正常動作しなくなったサイトを、引き継いだ別の誰かが元に戻す」といった(会社組織でよく発生する)作業は、当面今までより手間がかかるかもしれない。

ところでそんな作業中、Google Bardに壁打ちに付き合ってもらったら、こちらも大変よい経験になった。人類の公用語(英語)×機械の公用語(コード)の重なる部分、かつまだ親切丁寧設計の取扱説明書も無いようなジャンルの悩み事ならば、Google検索よりよっぽど頼りになるんじゃなかろうか。2020年代の大問題は、どれだけ有能な機械検索窓があろうとも、検索結果に表示されるのが自分と同じくらい愚鈍なヒューマンの書いた(目的が広告収入だったりする)不確かな記事ばかりという点だ。無菌室から淡々と答えだけ吐いてくれる機械に直接訊いたほうが早い、こともある。

数日前、あるエラーがどうしても直せず、今までならphpファイルに記述を足せばいいが新仕様だとそうできない、という箇所で行き詰まった。最悪はサポートフォーラムでテーマ作者Anders Norénに問い合わせようと丁寧な英文までしたためた。ところがその文を送信前に試しにBardに投げると、数秒で「できますよ、こう記述します!」とコードをコピペしてくる。「いやいやいやWP6.2フルサイト編集環境だっつってんだろ、function.php以外はいじりたくないよ」と返すと、「わかりました、まだまだ他にも解決方法があります!」と、明るくめげずに無限にお返事してくれる。

それはイヤ、これもダメ、3番目の方法と7番目の方法をうまく折衷できないのか……といった調子で、Bardとキャッチボール、というか私が一方的に遠慮会釈無い暴言を投げつけながら、どしどし届く親切な回答を読んでいるうち、独力では思いつかなかった修正案に行き当たる。うち一つはなんと「お使いのプラグインが最新版なら設定画面で数値を変えられます」という、「コンセント挿したら電源が入るのでは?」みたいなポカ。もし人間相手に問い合わせていたら恥辱で死んでいた。

エンジニアたちがChatGPTに大興奮していたような高度な話ではないにせよ、誰の知恵袋も借りられない問題解決にはたしかに便利だ。営業時間外といった概念もなく不眠不休で忍耐強く、「No. Any others?」なんて不躾すぎる矢継早の問いにも顔色一つ変えず淡々と答えてくれる。いいことづくめだが、機械相手のこんな乱暴なやりとりにあまりにも慣れてそちらがデフォルトになってしまうと、次に「本物の人間」が待ち受けているサポートセンターや電話窓口へ何かを問い合わせたとき、同じくらい横柄で不機嫌で非人間的態度を取りそうな、感謝の言葉を添えるのを忘れてしまいそうな自分が、ちょっと怖くはある。

でもそれが人類の望む世界の未来なのだ。誰かにイヤな思いをさせたくないのなら、そんな余計な感情労働が含まれる役割は「本物の人間」にさせるべきではない。人権侵害だし労働基準法違反だよ。今までのほうが間違っていたんだ、という話である。1999年、大学の教室で初めてGoogleのホームページを見たときのことを何度も思い出す。「すごいんだよ、どんな単語を入れても検索判定率が一定に高い、どうやって動かしてるんだろ?」と熱狂する先輩の横で、「自分から階層構造を辿って情報を取得しなくてよい、全部機械が見つけて目の前まで持ってきてくれるなんて、王様にでもなった気分だね!」と感想を述べ合ったものだ。もし我々が本当に本物の王様ならば、次の施策は「奴隷解放」とすべきだろう。王様も王様のままいつの間にか奴隷にさせられる、そんな未来は御免だ。

当時の日記があったかも、と1999年頃に開設したホームページ(大変よい保存状態で丸ごと残っている)を見返してみた。該当の日付は見つけられなかったが、シンプルで読みやすくてかわいくて、いいデザインだった。余計な装飾がいっさい無い白地のページ、HTMLで描いた七色の罫線を辿っていくとほどけてサイトマップになるという静的ナビゲーション。たまたま読みに来た人たちが本当に制作者の意図通りにコンテンツを辿れていたかは甚だ疑問だけど、リンクを臙脂色にする、黒い文字を肉眼でぎりぎりわかるかわからないか程度の濃紺に置き換える、などは当時から変わらず同じ考えで、今もここで続けている。ずっと「紙みたいに読めるウェブ」を模索している。冒頭からここまでの2000字を、一息に読んでもらえるようなウェブを。

軽い気持ちで「Jolly Holiday」を口ずさんでいたらここにも「A Bluer Sky」という単語があるのだった! Twitterより青い空、Bluesky、まだまだ招待コードあります。今日の話題はDrilとAOCがTwitterをやめて(?)Blueskyへ来たこと。これはしばらく追随者で盛り上がるだろうな。あと、なんか知らんが「岡田育も小沢健二もTwitterをやめてしまった」みたいに書いて嘆いてる人がいて並び称されて光栄でした。高野寛はまだ来ていない。胸に🍥付けてお待ちしてます。

Ain’t it a glorious day?
Right as a mornin’ in May
I feel like I could fly
Have you ever seen the grass
So green, or a bluer sky?

Jolly Holiday – Mary Poppins