「東京の賞味期限(仮)」
というタイトルを、このアルバムにつけてみた(※編注:もともとはnote.muの有料マガジンに掲載された文章です)。また変わる可能性もある。変わったら上書き保存して消えてしまうから、一度はこんなタイトルをつけてみた、ということを書き残しておく。
もうしばらくしたら私はこの生まれ育った町を出て行くことになるので、つまりそのリミットまでの毎日を綴ってみようと思ったのである。
しかし、正確に言うと、「もう少しで東京の賞味期限が切れる」というわけじゃない。東京に賞味期限なんてない。誰もが同じタイミングで東京にいられなくなるわけではないのだから。賞味期限があるのは、私のほうだ。「私が私の賞味期限が切れるまでに、東京を食べ尽くさねばならない」という感じ。
でもよくよく考えてみたら、「冷蔵庫の中の牛乳が賞味期限を過ぎてしまった」というのだって、「牛乳から与えられ、あらかじめ宣告されていた賞味期限を、『私が』無駄にして、過ぎてしまう」ということなのだ。牛乳の賞味期限は、牛乳から所与された他ならぬ私自身のものであって、私のものになった時点で、牛乳のものではない。