ザ・インタビューズ転載日記(PCに名前)

PCに名前をつけますか?(ペットに名前をつけるような感じで)



PCに具体的な名前をつけたことはないですが、言われてみれば、心の中では名前をつけたペットのようにかわいがっています。いや、ペットというより伴侶というほうが近いのかな。よく、長年連れ添った老夫婦が「おい、あれな」「はいはい」と名前も呼び合わずにそれだけで会話できていたりするでしょう。あの「おい、」みたいな感じで、心の中ではいつも呼びかけていますね。

小学生のとき初めて使った卓上型の日本語ワードプロセッサは祖父のもので、たしかNEC製、黒くてエッジの立った巨大な直方体の、硯みたいな、ものすごくかっこいいデザインでした。その後、親にねだって買ってもらったのは文豪mini5SX、灰色で閉じると平べったくなるダサいけど憎めない形状で、中高六年間ずっと愛用していました。一度も声に出して呼んだことはないけれど、心の中では前者のことを「那智黒ハコ先輩(♀)」、後者を「ぺたこ(♂)」みたいに呼んでいます。たとえば、いま私の部屋には黒くてエッジの立った巨大な直方体の、硯みたいな金属製キャビネットがあるのですが、これは家具屋にあるのを見かけて「なんかハコ先輩を思い出すなぁ」と買い求めたものですし、阿闍梨餅を個包装のまま鞄に入れっぱなしにしていたのを食べるときなどに「何これ、つぶれてひしゃげちゃって、ぺたこみたい」と思ったりします。そうやって、正式な機種名ではなく「かつて一緒にいたあの子」として思い出すときに、ぼんやり呼ぶ渾名はあります。

ただ、「何か新しい機種を買うたびに特別な名前を命名して、愛着を深める」といった行為はしたことがありません。ワープロも、PCも、あとは携帯電話や自転車などもそうですが、新品を買って古くなったものを捨て、完全に移行した後になってから、喪った子のほうに心の中で渾名をつけて、「あんな子やそんな子と組んでいた時代は、こうだったな」と懐かしく思い出す、ということが多いです。正式な型番をとっくに忘れて、一緒にいた記憶だけが残るからなんでしょう。ほんの数年前まで長らくThinkPadユーザだったんですが、もうあの「黒川三兄弟(全員♂)」たちも大きさの違いしか憶えていません。で、現在メインで使っているPCやiPhoneや自転車については「この子」一台ですから、名前をつける必要がないんですね。それが、老夫婦の「おい、」みたいな感じ、という意味です。つねに二人称で接している、ということなのかもしれません。

ああでも、光沢のあるオペラピンクの携帯電話(W53T)を使っていたときは、部屋で見失ったときにいつも「ラキシス(♀)、おいでー」と声に出して言いながら探していましたっけね。でもあれは、名前じゃなくてゴッコ遊びの類いです。