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題名のない日/麗郷の不在

夕方に起きだして、自宅から恵比寿まで歩く。意外と歩ける。卓袱台を買う。渋谷に出向き、「麗郷」でごはんを食べ、東急ハンズで嘘をつく。東急ハンズはころりと嘘に騙されてくれた。

ここ最近の「麗郷」の味の落ちっぷりたるや芸術的である。海老そばのつゆ、まるで油を飲んでいるようだった。ビーフンもべちゃべちゃしてるし。……いや、違うな。あの、二階席の主だった名物おばちゃん店員が居なくなってしまったから、同じ料理を出されても不味く感じてしまうのだ。寂しさが不味さに直結している、確かに。母親にベビーカーを押されていた頃から、かれこれ二十数年の記憶の蓄積がある。おまえたち家族のことなら何でも知っているという顔で、私たちを席に通す、おばちゃん。美味しいとか不味いとかじゃなくて、「渋谷に来て『麗郷』で食べることに意義がある」タイプの店なのだ。麻布の旧「ニコラス」なんかもそうだった。

銭湯脇のコインランドリーに居合わせた人々となまぬるい親睦を深め、置いてあった週刊少年ジャンプを久々に読む。知らぬ間に「ワンピース」の両おっぱいにジッパーついてる美人秘書(開けたい!)の素性がただの秘書ではなかったようで、残念。「デスノート」の展開にも全然追いつけない。腐女子とりこみに余念のない編集部の差し金か、テニプリばりに若い男性の登場人物ばかり増えていた。そんななか「いちご100%」と「ブリーチ」は、なに、休載してたの?ってくらい話に進歩がなくって安堵する。スピリッツ巻頭の博多弁イタ飯料理人漫画の初回もなかなか面白い。

24時にお洗濯終了。小説家の篠原一が、乾燥機のにおいについて美文を書いていたな、と思い出す。頭ではなく鼻で思い出す。『アイリーン』だったかな。