クラシック音楽をお聴きになりますか? Yesの場合、どのような曲/演奏者がお好きか教えてください。Noの場合は、クラシック音楽にどのようなイメージをお持ちか教えてください。 また、Yes/Noいずれの場合でも、クラシック音楽に関連することで何か語りたいことがあるときは、自由に回答いただけると幸いです。 (質問者:酒井貞道)
幼稚園の頃にリトミックとエレクトーン、ついで近所の先生にピアノを習い、中学2年生くらいまで続けました。また小学4年生から高校2年生まではフルートも習っていました。クラシックといえば何よりもまず、子供の頃に授かった音楽教育における練習曲のことを思い出します。まぁ、あんまりお聴きになりませんので正直それ以上の「イメージ」がなく、子供の頃の話をいたします。
親がしょっちゅう聴かせてくれたのはバーンスタインの朗読が入った『ピーターと狼』です。レニー、声シャンで芸達者ですよねー。そこからサンサーンス『動物の謝肉祭』やホルスト『惑星』のような「見立て」の組曲が好きになって、自分でカセットテープを作って聴いていました。でも、そういう意味で一番好きな作曲家はやっぱりルロイアンダーソンだし、「タイプライター」が最高です。クラシックというより、軽音楽ってやつですね。あとはレハール「金と銀」など聴くと今も、お稽古事として音楽に打ち込んでいた、手塚治虫の少女漫画を読みながら舞踏会でくるくる踊るのに憧れていた、そういう子供時代のことを思い出します。「美しき青きドナウ」も好きだったな、ああいう、高級車やお歳暮のCMなどに使われがちな、つまみ食いイージーリスニングに最適のクラシック音楽。とにかくNHK『名曲アルバム』が大好きで、あそこで紹介された曲を順番に聴いていく感じでした。『N響アワー』だと途中で寝ちゃうんだけどね。どんな長い曲でもおいしいところを5分にまとめてくれるのがいいのですよ。
あるとき、ピアノ課題曲になったリストの何とかいう曲がものすごく気に入って、いつまでもその曲だけをずーっと練習していたいと思ったんだけれど、いつもより真面目にピアノに向かった結果、翌週に一発OKの花マルをもらって次の課題曲へ移ってしまって、非常にガッカリしました。そこで、大嫌いな反復練習を繰り返して自分の演奏が上達していく喜びより、最高の演奏を鑑賞する喜びのほうが強いなぁ、と思うようになります。また、好きで始めたフルートは部活動として続けられなかったので(吹奏楽部へ入部届を持参したら部員募集が締め切られた後でした)、私が音大を受験するものと信じ込んでいる先生に『ウェストサイド物語』の譜面を持参して吹き方を教わるような、月謝の無駄遣いを続けていました。フルート練習曲の定番、グルック「精霊の踊り」の名演奏など聴くといまだに、もっとちゃんと練習すりゃよかったなー、と後悔します。
小学校中学年くらいで一年間、青山こどもの城のDTM教室に通っていたこともあります。譜面が簡単だったのと、合唱のハーモニーを美しく出せるのが気持ちよかったので、学校で配られる聖歌集の曲を打ち込んでいました。次に「主よ、人の望みの喜びよ」でも扱ったのかな、教会音楽すげー、一音も無駄がない! とバロック音楽にドハマりし、そこから先しばらくは、バッハッハ状態。早めの中二病と相俟って、悪魔的な魅力を持つ宗教曲の数々の虜になります。また、同じ教室の中学生のお兄さんが大好きな『惑星』を全曲すべて打ち込みで再現しているデモンストレーションを聴き、それまで漠然とオーケストラの指揮者などに憧れていたのが、コンピュータすげー、頭部管くわえてタンギングの練習してるのアホみたいだわー、やっぱこれからは現代のモーツァルト小室哲哉の時代が来るな! という興味関心へと移行していきました。(小学生の言うことですから大目に見てやってください)
基本的にポップスやロックなどの流行歌が大好きで、そちらこそ自分で選びとったもの、クラシック音楽は、親に言われて情操教育の一環としていやいや接するもの、という「イメージ」が長くありました。『くるみ割り人形』などの子供好きするバレエへも連れて行ってくれたのですが、台詞がないし長くて退屈だから、曲が気に入ってもほとんど寝てましたね。『カルメン』『椿姫』『魔笛』などのオペラを映像で観るほうが好きだった。でも、一人の歌い手の超絶技巧よりは全体の演出を重視する性質なので、やっぱりエンターテイメントに徹したブロードウェイ・ミュージカルのわかりやすい華やかさや賑やかさのほうが好きです。『オペラ座の怪人』の劇中曲「Prima Donna」じゃないですが、古典は古典で最新形の流行音楽に淘汰されゆくもの、という頽廃美のような「イメージ」がありましたね。でも、ミュージカルを経由してビッグバンドジャズみたいなやつを聴くようになり、コールポーターからさかのぼってガーシュウィン、もう少し行くとラヴェルにドビュッシー……というあたりで探しているCDがポピュラーミュージックではなく古典音楽の棚にあると知り、ようやく「なんだ、古典といってもたかが数百年の話か」と把握できました。子供時代の「イメージ」が払拭されて、そこからは肩肘張らずに「クラシック音楽」と呼ばれるものを聴けるようになったと思います。といっても、ベートーヴェン「交響曲第7番第二楽章」みたいに、映画や何かで好きになったハデめな曲名だけを憶える感じで、体系立てて聴くことはほとんどしていません。
そして今でも、一人でうっとり聴くというより、蘊蓄や解説を聴きながら鑑賞するのが好きですね。寝ちゃうので。高校生か大学生のとき、マイケルティルソントーマスの「60minutes」出演回を観て、全身を使って子供みたいな表情で指揮するその姿のあまりの美しさに一目惚れして恋に落ち、ゲイだと知って即失恋し、それからというもの彼の、演奏を聴きたいというよりタキシード姿を鑑賞したくて、あれこれ映像をザッピングしています。容姿の優れている人はやることも優れているのか、私の一目惚れが内面を見抜いていたのか、「Keeping Score」というドキュメンタリー番組のシリーズなど非常に素晴らしく、惚れ直します。やっぱり私はいつまで経っても子供向けのファミリーコンサート的な、資料映像と解説つきで親しみやすく大作を聴く形式が性に合っているんだなぁ、と思います。ストラヴィンスキー『春の祭典』がYouTubeで観られますよ。とにかくMTTが激しく動いてくれることだけが大事なので、マーラープロジェクトもCDではなくDVDをこそ出すべきだと思うんだ! あと、YouTubeで観られるといえば、BBCの「Great Composers」シリーズも好きです。いい年こいてまだまだ「お勉強」の段階が楽しいというか、クラシック音楽そのものというより、音楽家の評伝、曲が生まれた経緯などの「物語」が好きなんでしょうね。
最近の話題作だったら、シモンボリバル・ユースオーケストラオブベネズエラの「マンボ」なんか、本当に大好きです。やっぱり基本はポップス脳なので、ああいう『タモリの音楽は世界だ!』的なノリが一番ですよ……。ロルケストラドコントラバスの「Bass, Bass, Bass, Bass, Bass and Bass」だって、ジエキセントリックオペラの「Serenade」だってそうですけども。ああいうの、もっと増えればいいのにね。
というわけで、あんまりクラシックをお聴きにならない私が、どのような曲/演奏者が好きかをまじえて、少しでも関連しそうなことをあれこれ自由に回答してみました。質問者が署名しているのはちょっと残念ですが(誰だって酒井さんの名を騙れる場所でそんなことしても何の意味もないのになぁ)、こういう質問は、答えてから他の方の回答を読んでみるのが楽しみです。
しっかし「ホモ+コミンテルン=ホミンテルン」ってすごい造語だよな大好物です。