2023-05-02 / 第76回トニー賞ノミネート雑記

2日は朝からトニー賞ノミネートの発表。授賞式は6月11日。以下、あくまで自分用メモです。記事として熟読されることは想定しておりません。TwitterをやめてなければTwitterに書いてたのでスレッド感覚で読み飛ばされたい。未見の作品を観たら加筆修正するかも。

まず、例によってプレイは数を全然観ていないので、自分が観た『Leopoldstadt』と『Life of Pi』がたくさん獲るといいな、くらいの感想しかない。『Prima Facie』や『Fat Ham』は6月までに観られるだろうか。

ミュージカルのほうは言いたいことたくさんあるよ! 『Some Like It Hot』が最多13部門、『& Juliet』『New York, New York』『Shucked』が9部門、続いて『Kimberly Akimbo』が8部門で、新作ミュージカル作品賞は、この5作が競い合う……じ……地味では……? なんだろうこの地味さ。つい数日前の感想に書いた通り、『Some Like It Hot』は良作だけど最多ノミネートの器ではないように思う。でも主演助演に脚本に編曲に衣装に装置にと、優等生的に押さえていくと、まぁこの数にはなる。椅子を奪い合う相手がいなかっただけ、という感じか。「別に史上最高傑作ってんでもないけど今年はダークホースの『Shucked』が総ナメでは?」という下馬評のほうがよっぽど納得する。個人的には『& Juliet』『Kimberly Akimbo』に頑張ってほしい。『New York, New York』だけ観てないので早く観たい。

リバイバルミュージカルは『Camelot』『Into the Woods』『Parade』『Sweeney Todd』で、こちらは逆に、なんで同年に並ぶのよ!と思ってしまう。いや『Camelot』と『Sweeney Todd』未見ですけどね。そりゃ私は『Parade』に獲ってほしいですよ。「再演した意義があったで賞」の冠が欲しい。トロフィー掲げてロングラン公演化してほしい。しかしよりによって『Into the Woods』と競るのか……てかミルキーホワイト(とリチャードパーカー)がノミネートされてないの何事なの? 『Into the Woods』はミルキーホワイトはじめ「出演者よく集めたで賞」100個くらいあげればいいじゃん、作品賞は『Parade』にクレ!

主演男優賞は大渋滞だな、「はいはーい、もう持ってる人は辞退して〜!」って叫びながらJ. Harrison Gheeにあげたい。笑。主演女優賞もひどい渋滞、選べない、Victoria ClarkとLorna CourtneyとMicaela Diamondのトリプル受賞でなぜいけない。そして助演賞候補一覧、モヤモヤすんなあああ! 『& Juliet』のJustin David Sullivanが性別選択を拒んで辞退させられたのやっぱり大問題だ。Betsy Wolfeも悪くなかったけど、この中にJustin入ってないの残念すぎる。『& Juliet』は授賞式当日のパフォーマンスに関しては最&高となるに決まっておるが、それを観つつもガッカリするんだろうな。寂しい。しかもこれでJ. がダフネ役で受賞したら一層モヤモヤが残るだろ。ドラァグクィーンが1920年代の女装男を演じることと、ロミオと死別したジュリエットの親友がノンバイナリ俳優の演じるノンバイナリの登場人物であること、作劇の革新性なら断然後者に軍配を上げるべきだ。

そしてジェンダーノンコンフォーミングのAlex Newellは「Actor」を選択したんだね! もうこうなったらAlexが助演「男優」賞を獲って全米生中継で「俳優賞を性別で分けるのはやめにしろ」とスピーチぶってほしい。そのスピーチが聞きたいからAlexが獲ってほしい。そうでなければJustin Cooleyもいいけど若者は今後いくらでもチャンスあるよ。あとAlexとNaTasha Yvette WilliamsとBonnie Milliganで無敵おばさんズみたいな呼称のトリオ組んでほしい。RuthieとBetsyあわせて助演俳優枠のこの「中年女なめんなよ」感たまらん。でもそんなおばさん(概念)たちを全員蹴散らして23歳のJulia Lesterが獲ったらそれはそれで許す! かわいいから!

演出、脚本、楽曲、編曲、振付あたりは、まぁもう、どれが獲ってもね……『Almost Famous』と『KPOP』未見だし、これは! と推せるだけの要素がない。でも、いくら作品として『Parade』推しだからってマイケルアーデンに演出賞はないだろと思ってるよ、だってあの、ブランコ……ウウッ……だったらJason Robert Brownにもっかい楽曲賞あげたらダメなの? いいじゃんリバイバル楽曲賞(ゴリ推し強火担)。あとJason Howlandがここで編曲賞獲ったら泣いちゃうなー、私は去年『Paradise Square』で是非とも楽曲賞を獲ってほしかったよ……未払い問題で黒歴史扱いだけど今からでもCD出してほしいくらいよかった……。現実問題としては、『Some Like It Hot』や『Shucked』と競合しない部門で『Kimberly Akimbo』のプロダクションが地味に多めに獲るといいなと思います。なんだかんだ言って私、新作で一番好きなの『Kimberly Akimbo』かもしれん。地味だけど。


05-03 / 追記。Alexを「中年女」と呼ぶと誰かの何かにイチャモンつけられるだろうけど、俳優本人がジェンダーノンコンフォーミングであることと、『Shucked』で「年若いヒロインと違って自分で自分の仕事を回し、男と恋愛はするが『頼る男なんぞ必要としない人生』を歩んでもいる、年長のいとこ・ルル」という登場人物を演じていることはまったく別の話で、後者は概念としての「おばさん」である。詳しくは「タンスにゴンの美川憲一」までざっくり「おばさん」にカウントした『我は、おばさん』を読んでくれ。Alexという俳優が性別を選択したから「男優賞」になったけど、いとこのルルは「おじさん」ではない。同様に、『& Juliet』のアンが「シェイクスピアの妻」である前に「夫が生み出したジュリエットの、(姉気取りのw)おばさん」であるのがイイ、という話もさんざんTwitterに書いた。私は助演枠で多種多様な中堅俳優が輝くブロードウェイミュージカルが好きだし、その日本版において、いつも大体似たような出自やルックスの人気女性俳優がキャスティングされるのをガッカリしながら観ている。

性別問題についても、まず主演賞のほうが揺さぶられないと助演賞も動かないかもしれないが、しかし、人種の話も、性別の話も、モヤモヤはいつでも助演枠から生じるものだ。助演賞の範疇でビシッと解決しないと、主演賞だって変われないように思う。つまりな、『Some Like It Hot』がやった「元は白人男性だった主役級を、若い黒人のドラァグ男性に演じさせる」の書き換えはとても簡単で、シス男性ゲイが牛耳っている演劇界においても、いかにも受賞対象となりやすい。でもじゃあ「物語の中で最初から(シス男性ゲイでも花形ドラァグクイーンでもない)『その他の』セクシュアルマイノリティとして書き下ろされている」キャラクターは? それを演じる俳優は? そんな人物が「主役」の物語は圧倒的に不足してるんだから、いいかげんヒロインの親友枠からでも評価したら? という話。「その他の」境界を崩すのに、『A Strange Loop』の翌年にあたり、『Six』に続いて『&Juliet』が上陸した2023年、絶好の機会を失ったよねトニー賞は。当日『&Juliet』の群舞シーンを是非とも観てほしい。あの子は男? この子は女? なんて指さして数えたりせずに。若い才能も素敵な新作もどしどし出ていて、評価の仕組みのほうが、早く追いつくといいなと思う。


候補一覧は公式サイトをご確認ください。
https://www.tonyawards.com/news/2023-tony-awards-nominees/

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