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2023-05-07 / ゴールデン極妻ウィーク 最後の戦い

ここはくだらない日記を好きなだけ書いてよい場なので近況をあれこれと。米国在住だとゴールデンウィークはあまり関係無いが、受信するメール量が激減したり至急の催促が来なくなったり、なんとなく弛緩した感じが漂ってくる、気配だけはある。特別な遊びをしたりはしないけど、こちらもふわふわする。こうした気配は、「登校」や「出勤」がある生活では日常を脅かす手前で掻き消されてしまう。何も無いほうが影響を受けやすい。先日書いた「在宅フリーランスは天候に左右されやすく気象病の症状も強く自覚しやすい」にも通じる。アッパーな五月病とダウナーな五月病とが同時に襲ってくる感じだ。

その、ダウナーなほうの気配を捕まえて、数日前に「さようならTwitter」というエントリを書いておいた。更新しようとして調べたら、私がTwitterアカウントを開設したのは2007-05-07ではなく2007-05-15だったと判明。翌週まで寝かせるほどの内容でもないので、公開してしまう。アカウント開設日、今までもよく勘違いしていたんだよな。5月上旬は推しの命日や知人の誕生日などが重なって、セットで憶えた挙句に混乱する。公開してすっきり、日曜日のブランチにパンケーキを焼く。料理用の無糖ヨーグルトを買いそびれたものの、フルーツソースが別添になっているカップのギリシャヨーグルトの無味のとこをそのまま入れたら悪くなかった。

残りの日々は何をしていたかというと、先日の勢いのまま結局やっぱり『極道の妻たち』をシリーズ視聴した。


『極道の妻たち II』

主演の十朱幸代がちょいちょい出す甘ったるい声がかわいい。存命のダメ亭主を甲斐甲斐しく支えているようで妻のほうがよっぽど人望高い、という路線は前作の岩下志麻との差別化が図られ、済州島ロケまで行き着く博打の場面も一つ一つ美しく、面白く観た。しかし村上弘明を極限まで美しく見せようとするあまり画面からも設定からも浮きまくってて幾度も噴く。私なら自分が仕切る東日本の賭場にこんな美丈夫が現れたらそれ自体が怪しいと警戒してしまうし、西の者かと照会かけて一発で面が割れそう、あまつさえ途中から眼鏡掛けて三割増になろうだなんて、あんなの絶対に眼鏡ケースを検める、そんなイカサマ通るかよ。海辺をトラックで爆走するシーンの意味不明さもすごい、過去の東映ヤクザ映画を支えてきた男性客への目配せ、にしては乙女チックすぎる。かたせ梨乃が処女役からいきなり5歳の子持ちの母親役に転じたことで、冒頭から泡まみれになる見事なおっぱいのバブみが増して素晴らしい。あんなカメオ出演(私立小学校のお受験面接官役)でこんな主題歌をものする和田アキ子も好い。あと、本編以上に草笛光子と夏夕介の爛れた関係のスピンオフが観たいんですけど、どこにもないんですかね。あの賭けポーカーのシーンだけ無限に観てたい。

『極道の妻たち 三代目姐』

三田佳子主演、これはもう萩原健一が全部持ってってしまった。組長役の丹波哲郎がすごくいいのにあっさり死なせてしまい、ガキの頃から憧れの姐だった三田佳子が和装を解いて喪服も脱いで真っ赤なドレスの未亡人として「抱いて!」と迫ってくるのを、ぐぐぐぐぐぐぐぐと堪えるショーケンの顔芸だけで元が取れた。車中の密談とか、ヅカOG仲間の賀茂さくらの娘にあたる財前直見をあてがおうとするくだりとか、三田佳子と萩原健一のシーンどこもいい。人物配置の萌え、ストーリーライン的には一番好きなくらいだが、いかんせんその後の赤松の行動原理が全然理解できず、「なんか上田一豪版『笑う男』みたいだな」という感想。ショーケン赤松と一豪グウィンプレン、本人の胸中ではすべて筋が通ってるんだろうが、「両片想い」を描く脚本としては全然足りんのよ。あと、本シリーズ観るのに「強姦されたのに和姦扱いで先に進む」展開にいちいち怒ってたらキリ無いが、いくらなんでもレイプの無駄撃ちが酷い。色男なんだし、アリバイ作りのアレだけでも普通に口説いとけば人死にが減ったのでは? そんなことするくらいなら黙って耐えて撃たれて刺されて死んで大事な大事な姐さんを霊安室で半狂乱にさせるほうがマシ、というのが極道か? 違うだろ。宝塚歌劇時代にまだ新人の三田佳子に一目惚れして出演作に大劇場全通、レコード会社からの引きもあったのに23、24で退団させて嫁に迎えて20年、ちゃんと遺言を準備し顧問弁護士に託した上で自然死した、という設定だけで丹波哲郎の株が爆上がりする結末だった。さすが組長はんや。デキる男は全通!

『極道の妻たち 最後の戦い』

第四作、当時はこれで打ち止めだったはずの岩下志麻復帰作。だんだん目が慣れてきたとはいえやっぱり襟合わせがエグい。夫の小林稔侍が服役中、面会室でかたせ梨乃にせがまれた岩下志麻が「女同士できょうだい盃を交わす」のがハイライト、かたせ梨乃も出世したなぁと感慨深く眺めていたら、ゲバラちえ子みたいなミリタリールックで登場し、かつ脱いだら真っ赤なレースの下着で悪徳弁護士の津川雅彦に肉体を差し出し、かと思えば仮面被って敵陣乗り込んでガラス割って派手に逃亡したり、昨日までカタギだった実妹役の石田ゆり子が一人だけすごい服装で勤めてるクラブに姉の自分もそれを上回るものすごい服装で登場して銃撃戦の末に絶命したり、最終的にはその仇討ちで足を自傷した岩下志麻が洋装で大乱闘するもエンドロール挟んで衝撃のラストシーンにもつれ込み、な、なんなんだ……これが1990年の日本のオッサンが考えた「強い女」「百合」「シスターフッド」なのか……と終始戸惑いを隠せぬものの、「なるほどこれがあの、当時CLAMP先生が新作出るたび熱狂して、当時小学生だった愛読者の私も早く観たいと願い、そして保護者に真顔で止められたりしていた、『あの』極妻か〜!!」という納得感は強い初鑑賞だった。「一作目の封切は男女雇用機会均等法施行の1986年であり、男以上に熱い女極道の生き様が働く女性たちへのエールに云々」みたいな能書き、一作目だけでは全然わからんもんな。いや四作観てもわからんが!

『極道の妻たち 赫い絆』

ここからいきなり三本ほど飛ばして、1995年の第八作へ。タイトル順を確認するために読んだこのnote記事では「岩下志麻カッコイイランキング第1位」との評。たしかにクライマックスの「踊り子に紛れて突然登場して赤黒の片身替わりの着物でマシンガンぶっぱなす岩下志麻」は文句無しだったが、手前は……シャブでラリッた古田新太を返り討ちにする岩下志麻、服役中も健康的に美しい岩下志麻、スーパー店員に身を窶していても異様にオーラある岩下志麻、何度もカタギに戻ると言いながら街ゆく背中の凄味だけで無理なのがわかる岩下志麻、赤坂晃にいきなり超豪華ハンバーグ作ってくれてシャブだけはあかんとくどくど説教してくれる岩下志麻、隻眼スカーフェイスの古田新太に特売コーナーからゴッサムシティへ拉致されるもふたたび返り討ちにするアメコミヒーローみたいな岩下志麻と地下水道で派手に感電死する古田新太……いや面白いけど極道どこいった……? 「シャブにだけは手を出すな」「極道の時代はもう終わりや」「きょうびカタギの女が刺青入れるなんて」「青空市場の頃とは違う」など、いやいや家業を続けさせられる苦悩のほうが浮き彫りになる話で、ほんの数年の差でも初期作とは隔世の感。婿養子が宅麻伸、その後妻が鈴木砂羽、キャラ濃すぎる古田新太の飼い主にあたる敵勢力のドンはさらにキャラ濃い萩原流行、どれも大変いい配役、岩下志麻と宅麻伸がエキスポランドの観覧車デートで口説き口説かれた仲で、別れた今もなおラブラブで、それが関空脇の土地でレジャーランド建設に燃える夫の原動力になっていた、とか萌える。あと、毬谷友子なら内縁の夫の服役中に愛人作るよね、毬谷友子なら男への愛より姐への嫉妬に狂うよね、そりゃ惚れた男がたまたま敵対する組の者だったりするし、取調室でその男の舌噛み切って血まみれの口でニタァッと笑ったりもするよね、は満喫した。


極妻の感想書いてたら三千字超えちゃったのでおしまい。最初のシリーズ10作は一気観したいと思っていたけどゴールデンウィーク終わったらそんな気分も消えてしまうかもしれない。

そういえば、期間中に着物姿で食事に出ることがあったが、岩下志麻を観すぎて「デコルテ……いや、ああは開かんやろ……真似してみたいけど、いくらなんでもあれは開きすぎやろ……」と考えながら着ていたら反動で女学生みたいなキツキツの襟合わせになってしまった。そして道端でいきなり知らない人に呼び止められ、いきなりその場でヨーロッパに展開する着物関係の大きな仕事を振られそうになり、まぁ名刺だけ受け取って別れる。なんなんだよ。極妻ばっか観てて忘れてたけど、そういえばここニューヨークだったわ、と思い出す微笑ましいエピソード。そして極妻ばっか観てたのでまず最初に「なんや、このカッコ見てワテのこと上京したてのウブな小娘とでも思うたか、なんぼニューヨークちゅうてもこんなシケた道端にそんなウマい話が転がっとるわけあるかいな、おう、ワレどこの組のモンじゃ? あんたも極道ならきっちりケジメつけえや? ビジネスちゅうんなら安請け合いせえへんで、じっくり話聞かせてもらおか?」と身構えるようになったので、教育効果高い。