地方の人に、東京のおすすめ散策コースを聞かれたら、okadaicさんならどういうコースをおすすめしますか
誰にでもおすすめの唯一絶対のコースなんてないでしょうね。一概には言えませんが、ただ、東京にやって来たのに東京タワーに上ろうとしない地方の人たちには、是非とも上るようにと、強く強く勧めると思います。
昭和後期の東京西南部に生まれ育った私にとって、「東京タワー」という存在はアイデンティティの寄す処みたいなところがあります。すなわち、東京タワーを馬鹿にする奴は、私が許さない、という。地方出身東京在住の人がたまに「あんなの修学旅行生と田舎者の団体観光客のためのものだろ、俺は東京生活長いけど、一度も行ったことないからね」などと自慢げに言っているのを聞くと、その横面を張り倒したくなります。
芝公園の辺りに用事があるときは、足を伸ばして一人でチケット買って特別展望台に上り、或いはあの広い駐車場に寝そべって真下から見上げ、ぼんやりと時間を過ごして帰る、といった息抜きの散策をよくしています。近年どんどん間違った方向へ改装されているのが残念でならないのですが……。私には帰るべき田舎がないので、そうやってこの街に対する「郷愁」を盛り立てていないと、自分の足元がおぼつかなくなることがあるのです。これはおそらく、新しくできる東京スカイツリーでは代替できないものでしょう。気楽な東京旅行へ来た人にそこまでわかってもらいたいとは思いませんが、「東京でおすすめはどこ?」と訊かれたら、誰に笑われてもいいからまずは「東京タワー! 遠くから眺めて、近くから見上げて、展望台に上って東京を見渡してから帰ってくださいね」と答えていたいものです。
で、回答すべきは「散策コース」でしたっけ……。たとえば、東京という街に生まれて初めてやって来たという人を相手に、数日間まるごと与えられたら、どうするか。東京メトロ銀座線とJR山手線を各駅下車しながら、「この広範囲にわたる多様性を、全部ひっくるめて『東京』と呼ぶのです」みたいにまとめますかね。大人のスタンプラリー。実際にやったら数日あっても全然足りないだろうけど、頭の中の地図を辿って考えているぶんには、それが一番楽しそうです。文化圏の違い、地形の変化はもちろんのこと、通勤ラッシュ時の電車の混雑まで体験させてあげられるだろうし、地上ではどんなに新しい建物が建っていっても、地下の駅舎なんかはツギハギだらけで古い造りが残っているところも結構あるんだよ、と教えてあげられるのがいいと思います。