文学/映画/演劇などで、自分が登場人物として参与してみたい作品はありますか。
今までの回答の中で、相当、書いてきていますよね。『ナルニア国ものがたり』の登場人物になって沼人の泥足にがえもんと結婚したいとか(http://theinterviews.jp/okadaic/248942)、映画『五線譜のラブレター』みたいにゲイブにお迎えしてもらえたら理想的だとか(http://theinterviews.jp/okadaic/173276)、ミュージカル劇『レ・ミゼラブル』のリトルコゼットになってジャンバルジャンにくるくる回されたいとか(http://theinterviews.jp/okadaic/159171)……うん、どうしてわざわざ、あらためて、こんなに広範囲で訊くのだろう。これならもう「『源氏物語』で演じるなら誰の役がいい?」とか、そういう質問でいいと思うんですよ。そのくらい具体的なら、頭で考えて回答できるので。男なら頭中将、女なら明石の君ですかね。
架空の物語を読んだり観たりしているときに「登場人物の誰それになりたい」と具体的に思うことは、ほとんどありません。上述した「××になりたい!」というのも、結局は、「にがえもんとゲイブとバルジャンが好きだ」ということの言い換え表現です。本当に自分がその相手役としての作中の登場人物になりたいわけではないと思います。プロの女優さんに「次に挑戦してみたい役は?」と質問すれば興味深い回答が引き出せるかもしれませんが、私には下手なコスプレ程度の想像しか思い浮かびませんでした。
小学生のとき一度だけ、あるアニメ作品に夢中になって、今で言う「ドリーム小説」(説明略)のような二次創作を書いてみたことがあります。たしか、一番好きな男性キャラクターの生き別れの妹が自分だ、というような設定でした。だけども実際に書いてみて、それが自分にとっていかに気持ち悪い代物であるかが非常によくわかり、以来、そうした妄想全般への意欲が著しく低下しました。現世を忘れて夢の中でうっとりする以前に、大貫妙子「メトロポリタン美術館」の「大好きな絵の中に閉じ込められた」という歌詞にも似た、現世にいる自分の存在を奪われるような「怖さ」を感じてしまったのです。いわゆる乙女ゲー(説明略)の類いに関心が薄いのも、この体験を経たためだと思います。他のRPG系のゲームでも、主人公に自分の名前を付けるのがちょっと抵抗ありますしね。架空の世界は、没入するより、メタ視点で俯瞰して眺めていたほうが気楽でいいです。そういう意味では「ハドスン夫人になりたい」といった回答はアリでしょうね。
ちなみに、小説家が身近にいる人間を登場人物のモデルにするというのはよくあることですが、あれは仕事として原稿で読むほうには結構、かなり、気恥ずかしいもので、我が身にふりかかるまで想像していたほどには、嬉しくも、誇らしくもないな、というのが正直な感想です。もちろん、わざわざ使っていただいてありがたいとは思いますが、それはあくまで自分とは別個の存在ですし、参与させていただけたという感慨もありません。この気持ちというのを裏返して考えてみますと、やはり、「他者の作品にわざわざ自分が参与したい」「私があの世界のあの登場人物だったら、もっとこんなふうにするのに」といった発想は、かなりおこがましいものなんじゃないでしょうか。それなんてミザリー……!!
いやしかし、もし実写版『ファイブスター物語』が実現して、鹿賀丈史が剣聖ダグラス・カイエンを演じるなら、どんなに汚い手段を使ってでも私がミース・シルバー役で参与したいものですね。駄目ならママドア・ユーゾッタでもいいです。あと『町でうわさの天狗の子』の秋姫になりたいし『みえるひと』のひめのんになりたいです。だからそれ参与したいっていうかただの姫願望ですから。あと演劇なら野田秀樹のワークショップに参加して頭ごなしに罵られたいです。これは参与したいっていうかただの性癖です。