最近、有名人宛には残念な質問が増えているそうですが、逆に「これは良い質問!」って質問があったら教えてください。okadaicさん宛の質問でも、他で見かけた質問でも結構です。
この質問へ回答するために、私が「回答する気の失せた」質問について、幾つか回答を作成してみました。さすがに良心の呵責をおぼえましたので、この質問への回答は、ちょっと長めに書きます。じつはこの質問も、同じくらい大変つまらない質問だと思っているんだけど、まぁいいや。
相手の人となりに迫ろう、好きなものについて存分に語ってもらおう、という姿勢でなされた質問は、回答も面白いものになることが多いように思います。とくに「××がお好きだとのことですが、きっかけや、理由を教えてください」といった趣旨の質問に対する回答は、まったく知らないジャンルのものごとについてでも、読んでいて面白いです。
きっかけについて訊く、というのは、点と点で接触している相手の「過去を遡る」行為です。即時的かつ実況的に「××萌え—!!」「30年間、朝一番は必ずコレと決めている」「明日、結婚します」「期待しないで観たのに、泣けた」「辞表なう」などとつぶやいている人たちの発言は、もうすでに結果の出ている話であり、タイムラインの流れに運び去られてしまうけれど、彼らに対して「きっかけは何だったんですか?」と上手に訊くことができたら、速すぎるソーシャルの流れに棹さすことが可能となり、振り向かせ、立ち止まらせて、反射的に書いているような短文の内容以上のことを、豊かに語ってもらえるのだと思います。
また、何度も何度もいちげんさんから「きっかけは?」と同じことを訊かれ続けるのはウザイから、一度で答えて固定URL付きのエントリを作成できる「ザ・インタビューズ」は、それに向いているな、と思うこともあります。「いま恋人はいますか?」という質問への回答は随時変化していくけれど、「初恋はどんなでした?」という質問は、一度ここで答えれば完結しますからね。「普段はそんな話をわざわざしないけれど、といって、別に隠しているわけでもない」トピックを選ぶ匙加減も大事ですよね。
そういう認識があるため、私も、「過去」について訊かれた質問にはこころもち丁寧に答えているように思います。そして、だからこそ、すでに答えている内容について、過去ログを読みもせずに、似たような別の訊き方で何度も何度も質問してくる人が、こんなに嫌いなのだと思います。一つの質問に一つの回答で片がつく、無駄のないページにしたいですから。「過去」といっても、そんなに大昔の話でなくてもいいのです。普段の会話でだって、「今日の晩ごはんは何にする予定ですか?」より「昨日は何食べました?」のほうが、相手も身構えずに具体的に答えられるし、終わったことだからこそ、好き勝手に話題もふくらませやすいでしょう。それだけのことです。
ライフヒストリーを浮き彫りにする、正の感情にみちた、語られるべき過去についての質問は、コンテンツとして無難に面白いんじゃないですか。要するに、雑誌や何かで著名人が受け答えしているインタビューと、まったく変わらないですね。また、インタビュー慣れした著名人たちは、たとえそういう質問の意図じゃなくても、自分の回答をそうした「コンテンツとして無難に面白い」方向へ誘導することを、よくします。破局秒読みと報じられた現恋人との生活について質問しているのに、ちょっといい過去話を切り売りで披露して「昔から、出会いより別れのほうが僕に新しいインスピレーションを授けてくれますね」とか記事中に小見出しの立てやすいこと言って、本題はうまくはぐらかしてさ……。
私がこのページを使ってずっと実験しているのは、彼らインタビュイーが駆使しているああした技術を、一般人かつズブの素人である自分も、慣れれば自在に操作できるのだろうか? というようなことです。いや、別にああいう気取った受け答えは身につけたくないんだけども、どんな嫌なボールを寄越されても、うまく変化球にしながら、ちゃんとキャッチャーに負担かけずミットへ投げ返す訓練、とでもいうのでしょうか。これに答えるのは自分にとって何かのいい鍛錬になったな、他人に押されて自発的には書かないようなことを初めて言葉にしたな、何かが向上したり、こんがらがってた意識が整理整頓されたりしたな、と思えるような質問が、いいですよね。前向きで。
もちろん、世の中には、「未来の、不確定な、負の要素に満ちたことをじゃんじゃん訊いてくれ、詮索は抜きだ、俺が誰かなんておまえには何の関係もないことだろう?」みたいなスタイルで回答を重ねている方もたくさんいらっしゃいます。私は、そういう人たちのニクい回答を読むのも好きです。そういう回答をお求めの方は、そちらへどうぞ。でも、あれは「回答」がうまいんであって、彼らに投げかけられている「質問」が良質だというわけでは、ないよね。