ザ・インタビューズ転載日記(仕立て服1)

いま、服を一着仕立てるとしたら、どんな物になさいますか? お金やその他のハードルは全てクリアしたという前提で、こだわりの限りを尽くすとしたら。



似た質問が二つ、時間差で来ていたものに、二つまとめて答えたいと思います。未回答をためこんでいるうちに類似の質問がさらに届いてしまって「ああっ、今こっちに答えようと思ってたのに!」となること、ありますよね。なんだか申し訳ないので、私、未回答の質問は一般公開で野ざらしにしてくれても全然かまわないんですが……。

ファッションにまつわる別の回答を書いた後にいただいた質問だったと記憶しています。後続の回答と差別化をはかるのは「お金やその他のハードルは全てクリアしたという前提で」という部分ですね。これは一択、ずばり「着物」でしょう! 私は自分で着物の着付けができず、もちろん自分で色柄や小物を見立てることもできませんが、どこにおよばれしても恥ずかしくない、一生もののハレの着物というのを、一つ持っていたいなと思います。TPOで取っ替え引っ替えするのではなくて、あるレベル以上のお祝い事にはユニフォームとして必ず着ていくもの、また、「私が死んだらこれ着せて棺に入れてちょうだい」と言えるようなものを……と思うと、やっぱり洋服ではなく、着物じゃないでしょうか。

成人のお祝いをしたとき、母が祖母から譲り受けたという純白の振袖を着せてもらいました。その前は七五三か、というくらい和装から縁遠かった身ですが、あの日の贅沢な緊張感を忘れることができません。ただこれはやっぱり可憐に華やかすぎて、若いうちしか似合わないタイプの振袖なんですよね。誰か次の世代に譲っていくのがいいんだろうな、という気がします。でも、40代以降もう一回くらい着てもいいかな。中高年にしか似合わない白ってありますからね。今ちょうど谷間の時期で着こなせる気がしません。

妹の結婚式のときは会場のホテルで衣装レンタルを利用しました。お仕着せについてはグダグダ文句を言いがちな私が、このときは即決。部屋いっぱいの衣装の中から自分に一番似合う柄を一発で選べましたし、周囲からも大絶賛を受けました。青みがかった濃紫の振袖に黄金色の帯なんですが、いやー、自慢じゃないけど、ものすごい貫禄で、似合うんですよねー。以前の回答に「自室の内装にしたい」と書いたのとも似た色合わせです。洋服で同じことやると首から下がバブリィになりすぎるので全然使えないんですが、これを着てみて「いやー、やっぱり私、正しくチョイスした民族衣装が一番似合うんだなぁ」と実感しました。もし普段から和装していたら、買い取り交渉したかもしれない、というくらいお気に入りで、二次会が始まる前に脱がされたのが名残り惜しかったです。

この、たった二つの乏しい経験から鑑みますと、一生もののハレの着物、というときには、濃い色をベースに、裾のあたりにどっしり落ち着いた大振りの柄をあしらい、帯と小物を同じ色味で揃えた、洋服では着られないようなうんと派手なものを仕立てたいなと思います。派手なくらいがちょうどいいんですよね。生地はさほど高級でなくてよいので、できれば、保管場所での管理やメンテナンス、毎度の着付けとヘアメイクまで料金込みにしてもらいたいです。ええはい、いきなりもらっても、着る以前に持て余してしまうと思うので。