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ザ・インタビューズ転載日記(HGN48総選挙)

「あ」から「ん」までの五十音の内、一番好きな一文字は何ですか?



うわー、即答できない! よい機会なので、ちょっとこの場を借りて「HGN48総選挙」してみていいでしょうか。長くなります。そして、たまたま48文字だから総選挙とか言ってみたかっただけで、実際には得票加算方式ではなくふるい落とし形式の選抜です。

【エントリー】
あいうえおかきくけこ
さしすせそたちつてと
なにぬねのはひふへほ
まみむめもやゆよ
らりるれろわゐゑをん

【一次選考(書類)】48→32

書類選考ではインパクト重視。面白そうな奴だな、と思われると残る確率が上がります。単純な画数のものは不利のようです。審査員の生理的嫌悪だけでバッサリ消えたものもあります。似た文字同士で差異を比較して、「ま」よりは「ほ」、「わ」よりは「れ」を残そう、といった選別もなされます。「たちつてと」は「縦でも横でも、五文字を一気に書いたときのリズムの心地よさが秀逸」、「らりるれろ」は「個性派揃いだがチームとしてまとまっている」とされ、それぞれ集団のまま通過しました。

あいうえ    け
す そたちつてと
なにぬね はひふ ほ
み め  ゆよ
らりるれろ  ゑをん

【二次選考(筆記)】32→15

筆記試験では、私自身の筆跡の好き嫌いと、活字書体などを比較しつつ吟味します。「け」「み」「よ」「ら」などに顕著ですが、一次選考時には「書体にしたとき鋭角的だったり曲線的だったりフォルムに多様性があるのが魅力的で味わい深い」とされた文字でも、自分が手書きにしたときフォルムが一定しないと「美しさに普遍性を感じられない」と落とされてしまいます。「る」を落としたのに「ゑ」を残すわけにはいかない、といった共倒れ状態や、「ぬ」「れ」を通過させるために「ね」が身を引くパターンも。ここまでで署名に使われる「おかたいくこ」は「い」以外全員脱落。「あまりに書き飽きてしまって消極的感情が強い」のが敗因と考えられます。

いうえ
す そ ち て
にぬ  は ふ

れ    をん

【三次選考(面接)】15→7

じっくりと一対一で向き合う機会です。ここまでは「文字」としての視覚的要素が大きかったですが、ここへ来てさらに一歩踏み込み「発音した際の響きと、文字の形とのマッチング」などが審査されます。表音文字の宿命と言えるでしょう。その点では「あ段」が最も有利なのですが、二次選考までで通過者ゼロという残念な結果に……。また、元となった漢字を連想させるなど、由来や物語性、付加価値が強いものもポイントが高いです。ここまで来られたのは理屈じゃない魅力を持っているからで、だからこそ、最後は理屈の有無によって付加価値が決まるのです。

この三次選考の過程で面白かったこと。「え」などに顕著な「筆の運びに折り返して往還する部分」があんまり好きではないことに書きながら気づいて、一気にごっそり不合格としました。私の手書き文字は、この嫌いな箇所を略すように進化していった癖字です。たとえば私の「れ」は「Ж(キリル文字のジェー)」に、私の「ん」は「傾けたW」に近い。また私は「と」を「上4分の1が欠けたε」のように書きますが、そこに横線を足して「を」としています。すべて往還を避けた結果です。避けた結果の「私の」字は好きでも、「正式な書き方をしたときまで含めて、その字のすべてをありのまま愛せるか」を考えると自信が持てません。また、「て」は「乙」のように書くことで往還を避けていますが、「そ」では避けられません。往還があるにもかかわらず「ふ」「ゆ」を残した決め手は、それが私の大好きな「麩」と「銭湯」を表す看板になることが多いからという、アホみたいな贔屓目です。

 いう

ぬ  は ふ

   ↓
【最終選考(水着)】

いよいよ水着審査です。ここまで勝ち進んだ「神7」の皆さんのどこが魅力であるのか、自己アピールならぬ応援演説をしてみたいと思います。他者から言語化されることによって立ち現れる魅力というのも、実力のうちだと考えております。

「い」
一画目と二画目のあいだの空間に「気」が感じられるところが好きです。波動拳を撃つ直前の手の構えみたいでいいですよね。私の書く「い」は「И(キリル文字のイー)の途中が切れた」感じですが、お習字の先生が書くような、曲線的でうんと斜めに傾いた、ふわっと卵形の空間を感じる「い」も好きです。字の勢いが「右肩上がり」だというのも好き。擬人化するなら、地球防衛隊の隊員みたいな、正義感が強くて小柄でショートカットの闘う女の子。

「う」
上の点の部分、どう書きますか? 私はほぼ90度垂直に打つ(というより「上4分の1が欠けた3」のように一気につなげて書く)のですが、普通はグレイヴアクセントのように斜めに打つ人が多いし、横棒のようにうんと水平に書く人もいますよね。また、下の部分を「つ」のように丸く横長に書く人もいれば、私のように「ヘ音記号」ぽく下を伸ばして書く人もいる。「ラ」と区別付かない「う」を書く人もいます。私はこの「う」の字のバラつき加減、それぞれのすべてが等しく好きなんです。擬人化するなら、お客の好みに合わせて変幻自在に応対するけどけっして誰か一人のものにはならない小料理屋の女将。

「て」
この字は、なんとも日本語らしくて好きです。漢字の「乙」に似ていて、極限まで簡略化されていった無駄のない形、だけど「一」「十」「く」「し」などよりはフックがあって個性が強い。「Less is More」という感じがするところが好き。墨の筆でゆっくりと息を止めて書くとき、直線美と曲線美の組み合わせに息を呑みますね。いや、止めてるから呑めないんですけど。擬人化するなら、コスモポリタンであるがゆえに誰よりも大和撫子らしく、合理主義者ゆえにロマンチストであるような、帰国子女のお嬢さん。

「ぬ」
数ある個性強烈派の字たちの中でも、最後の最後までしつこく残った最強の個性派。「あ」「め」系統の大回しがあるジェットコースター的快感と、「は」「ほ」系統の最後の捻り技、所謂むすびで締めくくられる快感、双方を持ち合わせているのが最強でしょう。二本ずつ飛び出たツノのところや、しずく型と逆三角形に囲われた空間も好き。だけどやっぱり、結びがあるのが大事。だって「め」なんかより断然好きですもの。擬人化するなら、若い頃は奇抜な格好してたけど今はだいぶ落ち着いたのよ、でもまだ尖った部分もあるのよ、という芸術家肌のフシギちゃん。現在の篠原ともえみたいな。

「は」
これも決め手は、まず、結びがあること。同じ「左側の縦棒から始まる」系統の中であっても、「に」では要素が少なすぎるし、「ほ」では逆に多すぎる、消去法のようにして残ったのが、無難な「は」です。派手な個性には乏しいものの、漢字における「永字八法」ではないけれど、縦棒、はね、横棒、とめ、縦棒、むすび……という三画に、「ひらがなを書く歓び」が全部詰まっているようにも思えます。擬人化するなら、普段は目立たないけどいざというとき一番頼りになる学級委員長。特技は整理整頓で、眼鏡は外さないほうが美人。

「ふ」
この字に関してはいろいろと迷いがあります。それこそ漢字における「永」の字みたいに、すべての要素が揃っているようでもあり、だから何だという気もして……完璧すぎて面白みがないから一番に選ぶことはないと思う、けれども、選考過程の途中のところで落とす理由がまったく見つからない……「ふ」にしない言い訳を書くためにこの水着審査があるようなものです。擬人化するなら、高貴なる貴婦人。鉄道で言うと銀座線みたいな、ロリババァ的魅力を持った年齢不詳の美女。神聖にして侵すべからざる女神様。だけど、他の男の手垢がついていないから、美しいけどちょっと燃えてこないのも事実なんですよね。

「ゆ」
この子も変な子ですよね。もっと好きな字はたくさんあるのに、そういう子たちをさんざん悩みに悩んで結局は断腸の思いで不合格として帰ってもらい、ふと横を見ると、とくに推薦して残した記憶もないのに、しれっと最後まで残っている……そんなふうに最終選考まで来たんだから大したものです。「れ」を捨てて「ゆ」が残ってるなんて、そんな自分の判断が謎すぎる。他のひらがなのどの字にも似ていないどころか、他の言語で使われる文字のどれにも似ておらず、何か花の紋様か、複雑な署名かなにかを簡略化して記す際のマークやシンボルのような印象。擬人化するなら、大輪の百合の花の影に住んでいる妖精さん。

   ↓
(協議中)
「い」「う」「て」「ぬ」まで絞られました。本来は漢字で表記すれば済むはずの「手拭い」をいつも「てぬぐい」とひらがな表記にしていた理由にようやく気づきました。「く」はさほどでもないが「ぐ」は大好きなので、脳が「書くよろこび」を優先させていたのですね。ここで、カタカナとの比較による減点方式を適用します。
   ↓

「い」
この字の難点は、カタカナの「イ」のほうが好きなことです。私の名前の頭文字でもあり、付き合いが長くよく知っているのですが、たとえばユリコという子が持ち物に「ゆ」と書けば主張できるけど、「い」だとシンボルとして弱いんですよね。そういう不満も他より多い。幼馴染をなかなか女性として見られない、そんな長年の思い入れが邪魔をしてしまいます。

「う」
大好物である鰻の頭文字、ですが、発音はあまり好きではないですね。母音の中でも一番好みじゃないのに、字の形だけでよくここまで残ったな、という気がします。でも「ウ」よりは好きかな。何せ小料理屋の女将ですから、もっとパーソナルに付き合っていたい、矢面センターに立たせてスポットライトを浴びせるようなことはしたくないという気持ちもあります。

「て」
これも発音がさほど好みじゃない。また、じつは「テ」のほうが形は好きですが、やはりこちらには「ひらがならしい美しさ」があるので強いですね。逆に言うとそれしかない。「一番好き」には選び難いと思ってしまう。いかにもアイドルらしい顔の子が、一番最後まで名前を憶えてもらえない、というのに似ています。

「ぬ」
この字については「い」とは逆で、カタカナの「ヌ」が嫌いだというのが株を上げている一因です。本来は直線的な書き文字が好きなのに、直線だけではどうしても制御できないこの字が残ってしまったのが癪だけど嬉しい、というところもあります。一番顔が好みじゃない子こそ結婚相手には相応しい、みたいな話でしょうか。

   ↓
というわけで、今期のHGN48総選挙は

  「ぬ」

に決定しました。審査員一同(一人だけど)、割と意外な結果に驚いています。やはり「大回し」と「結び」というのは、何でも直線で鋭角的に処理してカクカクに制御したがる私にとって、最後まで頑として個性を譲らない、だからこそ素材として面白味を感じる、そんな存在なのだと思います。この子をどんなふうに料理しようか、というプロデューサー心がくすぐられるのでしょう。

  れゆうはを
   いふて
    ぬ

たったひとつのセンターを任せるには正直不安もありますが、他の上位メンバー、とくに二列目が画数(というか密度)の少ないのっぺりした顔立ちなので、トメにはいいと思います。「神7」をさまざまな並びで書いてみて、やはりセンターは「ぬ」しかいないなと思いました。次の総選挙まで頑張って大役を務めあげていただきたいと思います。