2016-03-25 / 春休み(中編)

23日水曜日は、午後ちょっとだけプリントメイキングラボに立ち寄る。いつものドレッドヘアのテック嬢が今日もいて、マスターキーでロッカーを開けてくれる。「素敵なジャケットね」「ありがとう、でも今日はこれも要らないくらいね」「わかるわー、私なんで黒タイツなんか履いてきたんだろう。暑い」「あらでもその白と赤のサンダル素敵よ」「うふふ」「あはは」「よい春休みを」……ほんの数週間前まで話しかけるのも怖かったテクニシャンと談笑できるまでになっている……! プリントメイキングはマジで場数だな、現場百遍(誤用)、としみじみ。
ちょっと怖くなるほどのポカポカ陽気で、20度は超えていたと思う、あちこちの並木で、サクラだかモクレンだかマグノリアだか、枯れ木のようだった樹々に白やピンクの大きな花たちがどんどん開いている。見慣れた通りのいつもの景色の、あそこも、こちらも、花のなる木だったんだ! と驚きながら、去年の今頃はまだこの街で暮らしていなかったのだと思い至る。絶好の散歩日和に汗ばみながら、ユニオンスクエアから地下鉄を乗り継いでクィーンズのブロードウェイ駅から徒歩15分、イサムノグチミュージアムへ。

One fine day at Isamu Noguchi Museum, Queens.

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前に勤めていた会社を辞めて、最初に旅行したのがニューヨーク。旅の途中でイサムノグチミュージアムを訪れ、本当に何もせずに何時間でもぼんやり過ごして、中庭のベンチで一人、「ずっとこうして生きていられたらいいのに」といった感情がこみあげてきて、ちょっと泣きそうになったことを、何度でも思い出す。その後もことあるごとにとてもいい場所だと人に勧めているのだけれど、傍目には何ということもない辺鄙な場所にある常設展示だけの小さな美術館なので、響く人と響かない人がいるようだ。同行した夫のオットー氏は「思い入れがあるのはわかるけど、敷地が広くて実際に遊具で遊べる、札幌モエレ沼公園のほうがずっといいじゃない……?」と言っていた。たしかに、モエレ沼公園もいいけどさ! ていうか、モエレ沼公園のほうが断然アメリカっぽいのだよね。こちらのイサムノグチミュージアムのほうが、ずっと日本っぽい。その対称的な感じも含めて好きなのかもしれない。
ところで常設展示だけと書いたけれども今は企画展示をしていて、別の作家がこの場所とノグチに敬意を表するかたちで彫刻作品の隙間にオブジェの連作を配置しているのだが、これが、ちょっと、うーん……いや、気持ちはわかるし、もし私が芸術家で同じ企画を依頼されたらきっと似たような作品を置くに違いないんだろうけど、えーと、うーんと、控えめに言うと、「わかったから隣の公園でやれ」という感じだった……隣の公園(ソクラテススカルプチュアパーク)だったら、たぶん好意的に鑑賞できた。
友達と合流して初めてのフラッシング。直前までは車内から「あれがメッツスタジアムで、こっちがショッピングモール」なんて郊外の景色を堪能していたのに、終着駅を降りた途端にものすごく大きな中華街がひらけていて、頭ではわかっていても、面食らう。しかも、もともとはコリアンタウンだったのがチャイナタウンに飲み込まれたのだそうで、そう聞いても頷けるような謎の勢いを感じる街だった。激安で美味しいという飲茶を目当てに出かけたレストランが入ってみてから夜はグランドメニューのみの営業と判明、青島ビールで餃子と焼売だけつついて早々に会計を済ませ、もう一人の友達が合流したところで、あちこち覗いてみて四川料理の小さなレストランへ。キュウリとタケノコの冷たい前菜をつついて、小丼のダンダン麺を分け、スパイシーソースにつかった水餃子をおかわりし、おばけみたいな大きさの豆苗の炒め物と麻婆豆腐で、おなかいっぱい。どれも辛くて、何食べても美味しかったなー。台湾系経営の日本風菓子パンを売っているベーカリーで、クリームチーズの入った抹茶の菓子パンと、メロンパンのパイナップル版と、ブリオッシュを買って帰る。「台式」「日式」表記が懐かしい。
翌木曜日は学校に出向いて春色のネイルを塗ってもらう。秋学期の履修登録の相談、夜はAIGA主催のトークセッションを観覧。PinterestとTumblrのインハウスデザイナーが「SFvsNY!? いやいや僕たちめっちゃ仲良しですよ〜、それぞれによさがあるよね〜、やること多くて大忙しだよ〜」という調子で、ITベンチャーがどれだけデザイナーにとって働きやすい環境かと話しつつ、でも肝心の企業秘密めいた部分に関しては辣腕でひらりと躱してまったく教えてくれないイベントで、なんというか、まさに「観覧」という感じだった。IFTTTからPinterestに移ったほうの人が使う「Small Startup」「Big Startup」といった言葉使いは面白かったけど……。と、夫のオットー氏に言ったら「日本国内で同世代の優秀な人々からいろんなベンチャーの社内で起きてる面白い最新事情を聞きすぎて、耳が肥えすぎているだけなのでは……?」と指摘される。それな。もはや普通のWeb男子のよくある立志伝では満足できない体質な。離れてみて気づく恵まれた環境よ。夜は、なまにく祭り(春休み二度目)。

Acrylic Nail Art by Azusa Takahashi. Reserve her, ASAP! — あずさ様にまたネイルしてもらった。春ですね!

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そして金曜日の今は、日記を書きながら、いっこうに宿題が終わっていないことに青くなっております。夏休みの宿題は9月1日を過ぎてから着手するタイプです。