金曜日はイーストビレッジにできた「伊勢」という店で和食を堪能。蕎麦屋か何かだと思っていたら、魚の美味しい日本料理屋だった。春鹿を久しぶりに飲んだ。しかし、わざわざ大西洋側に住みながら「日本産」を謳う刺身すなわち生の魚をありがたがって食べるのも違う気がしたのでグッと我慢。ものによっては一皿30ドルくらいするんだよ!
土曜日は日本人経営のサロンで髪を切る。店に所属ではなくフリーランスのスタイリストで、カット台だけ借りているのだそう。寡黙だけど腕のいい人だった。あと私と同じリュック持ってるそうだ。近所のカフェで勉強の続き、行きがかり上とはいえ、混雑する店内で学事処理のため画面に保険番号を打ち込む羽目になってちょっと嫌な感じ。観光で立ち寄ったときは「地域密着型で雰囲気がよいなー」と思っていたけど、住んでみた今となっては「客層に場末感が漂っているなー」という感想。有料インターネット端末と無料Wi-Fiとコピーサービスなどがあり、それを目当てに来てる学生と低所得者層がほとんどで、優雅に喫茶中の人もいるにはいるけど、全体的に平日昼間の区立図書館の閲覧室みたいだ。あるいは、外国人が東京の駅前のルノアール入って、最初はサービスや価格帯から高級店だと錯覚するけど、そのうちドトールやスタバよりガチで長居する気満々の労働者たちが半死で身を横たえていることに気づく、みたいな感じだろうか。コーヒーはまずくはないんだが。夕飯はオーストラリア料理。
日曜日は「NY日本人勉強会」というイベントへ。元劇団四季で舞台演出家の宇垣あかねさんが講演するというので聴きに駆けつける。「あなたの知らないミュージカルの世界」という感じで一般向けにわかりやすく生い立ちや仕事内容を語ってくださり、途中、客席にいた同じく元四季のお二人による「同じ台本に別の設定を付す」エチュードまで堪能できて大満足。「企画出資段階から関わる演出家とそうでない演出家の違いは? なんでみんながみんなALWみたいにはならないの?」と訊いたら「売れっ子になったらプロデューサーから降ってくる仕事を捌くのに手一杯になるのが普通」とのお答え。我々は舞台上で「結果」しか観ることができないからなぁ。水面下ではものすごい量の企画が同時進行しているのだろう。『ALLEGIANCE』の演出助手を務めた渋谷真紀子さんともご挨拶できて本当に嬉しかった。まず御礼から入る。そしてすっかり独り占めして話し込み、帰りの地下鉄でもずーっとミュージカルの話をしていた。
お二人と会って「いちばん好きなことは仕事にはならないのじゃないか」というのは本当にバカな思い込みだよな、と思う。
続)「あまりに好きすぎて仕事にならないんじゃないかと思っていた」と口に出しながら、彼らを前になんて愚かなことを言っておるのだと激しく反省しましたよ。あまりに好きすぎるものが人生に一つでもあるなら、それを生涯の仕事にするしかない、それが正義の街ですね。日本の芝居も観に帰りたいけど!
— 岡田育🍥『我は、おばさん』文庫化 (@okadaic) March 27, 2016
というわけで、やる気に満ち満ちて、日本語で話しまくり、課題と英語についてはすがすがしいほど何もしなかった春休みであった。