時差6時間くらいだと、ボケらしい時差ボケがないのはいいことで、こんなときやはりNYからヨーロッパは近いのだなと思う。とはいえ体調が優れないのは致し方なく、誘われていたバーベキュー会は欠席して週末おとなしく休む。このところフランス料理フルコース続きで贅沢三昧でしたからな、胃を休めないと。という舌の根も乾かぬうちに、月曜日の真昼間から女子会と称してヴォルフガング・ステーキハウスでラムチョップ食べてしまった上に、WeWorkに上がり込んで昼日中から無料ビールを強奪する横暴ぶり。NYは朝から雨が降って上がり、じめじめと湿度の高い感じが続いている。
ニースどうだった? と軽い感じで訊かれて、「すごくよかったけど、7日目くらいからゴミゴミした街並みが恋しくなって、ああ、住めはしないなと思った」とマジレスしていた。ゴミゴミした街のほうが落ち着くのは何故なんだろう。生来の怠け者なので、自分よりノンビリした人や物や場所に出会すと不安にかられるのかもしれない。ぼーっとしていると振り落とされるくらいの勢いで回転しているところで、周囲に急き立てられるくらいがちょうどいいのかもしれない。10年後20年後に同じことを言うかどうかはわからないけど。それでまぁ、働くか! と思ったはよいものの雇い主も雇い主でまた休暇帰省中ということが判明、夏休みはもうしばらく続く様子。この隙に原稿やっつけます。
さて、「note」という媒体で自主的に新連載を始めました。『35歳で、ガールと呼ばれる』と仮タイトルをつけた、留学体験記です。もともと、渡米一年目から「日本の読者に向けて留学体験を書いてほしい」という依頼は受けていたのだけれども、在学中は自分自身が課題に追われてそれどころではなく、また、落ち着いてみると読者一般のニーズと自分の書きたいことがうまく合致していない気がして、なんやかやと後回しにしてしまっていた企画。こうやってあらゆることを先延ばしにしているうちに、なんと学校を卒業してしまったのですね……。とっくに新しい学期が始まっている9月というタイミングで、さすがにヤバいと思って手元に引き取り公開することにしました。
有料マガジンという形態で、500円払うと読み放題になります(9/18現在)。無料で読める他のウェブ連載と違ってちょっと敷居は高いですが、そのぶん「35歳から片道切符で美大に留学」という、この狭すぎるテーマに関心がある人だけに向けて、商業原稿より気楽に、ここの日記の殴り書きよりは読みやすく(笑)、書き続けられればと思います。あと、日記やエッセイではぼかしていた細かな授業時間割や講師陣の良し悪しとか、クラスメイトを撮ったスナップ写真とか、全世界公開にはちょっと抵抗のあるような内容も、閉鎖空間のほうが出しやすいので……。本当はちゃんとみんなの許諾取ったほうがいいんだろうが、許諾を取るために日本語読めない相手に文章を英訳してチェックしてもらうのか問題とかあるし、古今東西どこの留学体験記もそんなことしてないよね? ということで、まぁ内緒話みたいなものだと思って、読んでいただければと思います。こんなこと読みたい、というリクエストも大歓迎です!
海を隔てて暮らし始めてからというもの、「日本の読者が何を求めているのか全然わからない」という状態は続いていて、まぁでも冷静に考えると昔だってそんなこと完璧に把握できていたわけではなく、ただ東京に住んでマスメディア業界の近くにいるというだけでなんとなく把握できていると錯覚していたにすぎない。むしろ、把握できていると自己暗示をかけることによってあることないこと書き散らしていたようにも思う。書かないとわからないから、書くしかないですね。