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文筆家・岡田育、近況と日記。

2017-09-19 / 嬉しい悲鳴

                                                                             

夏季休暇を終えまして、その間ほとんど日本語の原稿を進められませんで、こんなことではいかん、英語圏ではまだまだ職業不定状態が続くのだから、しばらくは日本語圏から頂戴する仕事を大切に、営業を兼ねて有料マガジンも開始し、と思っていた矢先に、……メール受信箱に英語圏仕事の依頼がどしどし届くのは、いったいどうしたことなんですかね。自分が忙しいのか暇なのかまったく把握できないし、全体像をまったくコントロールできていない。大丈夫なのか。ひいひい。

一つは休暇前に通っていた某メディア企業からで、そのときには会った記憶のないクリエイティブディレクターから、ポートフォリオを見て一本釣りの身に余るフルタイムオファー。おそらく私が先月まで働いていたことも、数週間不在だからと一旦契約を終了したのも知らない人だ。Facebook用の広告記事シリーズ作った請求書が締まった後にいったい社内で何があったのか、管理職同士のコミュニケーション全然取れてないの大丈夫か、つーか、御社はどんだけ人手不足なのか、羽振りがいいのか、社を挙げて私の才能に惚れ込んでいるのか、単に組織マネジメントや予算の感覚がザルすぎるのか……。よくわからないので「えっ、すっごい偶然ー! 以前あちらのオフィスでご挨拶させていただきましたっけー? R氏の下で働いてたんですけどー?」と返信。今一度、社内slack経由で私の評判を聞いてから判断していただきたい。「あいつ仕事はさておき英会話は壊滅的だぜよ?」「うちの部署こんな安い日給で雇ってたぜよ?」みたいなことをやんわり伝え聞いていただいて、正直もう少し控えめなポジションを頂戴し、おとなしく日陰の身として働けたら理想的……。下々のスタッフが超楽しそうに働いてる一方で要職は超忙しそうなんだもんあの会社。と、こういう事情を先に知っておけるという意味では、職場見学ノリで受けた短期仕事も悪くないんだな。あまりに偶然すぎるが。

もう一つは、これまたポートフォリオ経由の打診で、使用ソフトェアを指定されたプロジェクト単位の短期仕事。来たよSketch。まともに教えてくれる講師がいないまま卒業してしまったSketch。というか、ひょっとしたら必須の授業もあったのかもしれないけど「ま、そういうのはUIデザイナー志望のナウなヤングたちに任せて……」とまるで履修しなかったSketch。勧められるがままに先走ってAffinityを使ってみたものの現在に至るまでまったく出番がない反省から、トライアル触っただけで購入すらしていないSketch。「えー、もちろん使えなくはないけどー、もしゴリッゴリの達人を求めてるならよそへ頼んでね?」とやんわり断りつつも私でよければやぶさかではない姿勢で返信。「これからの時代はSketchだ!」つって一時期どんな宿題も全部Sketchベースで提出してた某ナウなヤングの同級生、息災であろうか……。私だって20代だったらもっと真面目に新技術を学んでいたと思います。

あと、LinkedIn経由でしつこく多方向から、「自分を高く売るために我がエージェンシーに所属しませんか?」的な連絡が来るのは何なんでしょうね。あれってありとあらゆる業種や職種のユーザに手当たり次第に一括送信してるんだろうか。今まで一度も受け取ったことがなかったのは、長らく日本語プロフィールしかなかったせいなのか、それとも、今まで掲げてきた「文筆家」という肩書にはまったく市場価値が無いからなのか。「デザイナー」を名乗った途端に斡旋業者が飛びついてくることで知る、「文筆家」の潰しのきかなさよ……。

「アメリカで普通にお給料もらえるようになってみたい」と「本業に支障を来さない程度にまったり働きたい」のバランスをとるのが難しい。グラフィックデザイナーとして納期と制約のあるなかでパフォーマンスを発揮し、平日9時17時で働くのは我ながらとても性に合っているのだが、いわゆる立身出世をしたいわけではない。企業の中で偉くなることと、面白いもの作れるかどうかが、こんなに噛み合っていない職業もないように思うし。「言語の壁があるからこそ、サルでもわかるシンプルで太くて直観的なやつ得意です」以外に、売りたいものもない。ので、「気が合って尊敬できるボスの下で一介の職人として工房勤めをしたい」というような感覚。その上で、時間内に三倍働くから定時で帰って人より多く休みたい、諸君との異文化接触を面白おかしく日本語で書くのに忙しいから、というような。

まー、虫のよすぎる話ではあるのだが、会社勤めと自己実現が強固に結びついていた日本でのサラリーマン生活とはまるでマインドセットが違って、しかも、それがまったく問題なく許されている雰囲気があるので、そのへんをうまいこと「非・日本風」に設計し直してみたいのです。ワークライフバランスってやつだ。大学の学科を選ぶ段階から考えていたことが、少しずつ積み上がってきている、その途上。でも、再来週どのくらい忙しいかが来週末になるまでわからない、という暮らしは、1年くらいで卒業したいなぁ。

そろそろこういうの赤裸々に書きすぎるのやばいんじゃないか、雇い主にこの日記Google翻訳にかけて読まれたらコンプライアンス的にも心証的にも一発アウトでは、とも思うんですけど、大学一年生のときに毎日のフレッシュな戸惑いを一つ一つ書き留めておかなかったことを大変後悔しているので、気が向いたときだけでも記録しておきたい。どれも面接段階で落とされてまた無職に逆戻り、となったらそれはそれで軽く笑い飛ばしてしまいたい。「永久にこのまま就職活動が続く」という状態にだって、数年後には慣れてしまうのかもしれないし。いや、数年後には定職に就いていたいけどね? その前にちゃんとした英語学校に通い直したい。切実。

という日記を18日夜にダラダラ綴っていたところ、NYでの内見を終えて帰るところの友人と電話。この方は「アラフォーで片道切符で米国留学」仲間なわけですが(一人しかおらんよ)、我々同士の間ではツーカーなことを、他者に、一般向けに、一から説明しようとするとどうしてこうも伝わりづらいのか、というような話をする。これは愚痴じゃなくてな、ここでのほとんど共感しかない「対話」を、もう少し大きな輪へと、広げていく方法が、まるでわからん。奇しくもランチ後、初対面だった別の方に「プロデュースしてみたい」と言っていただけたのなど思い出す。今まで自分がプロデューサーの側だと思っていたんだけど、なんかもう、あまりのカオス状態に、他人の知恵を借りるしかないな。ゆきづまり子。

あと、「SEKAI NO OWARIのことは、新時代のTM NETWORKだと思っておけ」という私の自説を。今もし自分が厨二病だったらハマッてたでしょ? でも今からハマれなくてもオトナが気に病むことはないのだよ。ゲワイがドラゲナイでピエロは木根だよ。とか言ってたら通話が切れた。以前『真夜中のニャーゴ』でも話した通り、やはりこの世のすべてはTとMとNで説明がつくのである。