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文筆家・岡田育、近況と日記。

2018-02-19 / 鍋と名刺

                                                                             

17日、シーツが裂けたと思ったら、今度は急須が割れた。いや、夫が割った。2014年、舞踏会に着ていくお洋服がないわ、ならぬ、人からもらった超高級玉露を淹れる急須がないわ、というので慌てて買った至高急須。おつとめご苦労様でした。愛用していた夫は新品の買い直しもきかないということで大いに凹んで心を閉ざし、午後は喪に服してしまう。夜は常夜鍋。

18日、国税庁に送る書類を作って投函。一度目に書類不備のためさんざん待たされて手数料だけふんだくられるという大失敗をしでかした書類、今度は控えを取っての再挑戦。日本語なら30分で終わるのだろうか、手引書を読み直すだけでも数時間かかる。無印良品で台所用品や整理整頓用品などちょっとした買い物。渡米直後は「なんだこの高値は、もう絶対にUSでは買わん、帰国時にまとめ買いする!」と吠えていたものだが、収納用のボックスみたいなのなどはもちろんそんなふうにはいかず、もはや関税がかかった値段に何も感じなくなる。半透明のポリプロピレンのトレイや旅行用の小分けケースなど、もとの定価が安いものは二倍以下の値段で買える。ちょっとしっかりしたボックスとか洗濯物干しとか、複雑な機構で滅多に買い換えないような商品は、信じられないほど高い。基準についてはよくわからない。

THIRD RAILでノマド。隣の男子は身長2メートルくらいあって、黒髪をポニーテールに結い、重めに垂らした前髪だけを全面ブリーチして真紅にしている。それで赤と緑の縦線が入っててスナップ留めでスカートにもなるジャージみたいなボトムスを、半パンツ半スカートみたいにして纏っている。唇にピアス。だけど「隣、座っていい?」と訊くと「もちろん、私にはあなたがこちらへ座ることを止める理由はありません」とフェミニンなヴィジュアルに対してやたら野太い声で返される。大きな中二。大学の課題なのか、化学系の図版がたくさん入った分厚い紙の書籍を読んでいた。アスレジャー(って言うんですってよ最近は!)な服装とともに、わざわざ紙の本を持ち歩いて読むのもトレンドか。しかしスマホの着信音が鳴るとめちゃくちゃスペイシーな凝ったシンセサイザー音で、別にネオヒッピーとかナチュラリスト的なアレではなかった。つまり、やっぱり大きな中二。夜は石狩鍋。そして『カサブランカ』。夫は前に観たときよりも女の千々に乱れる気持ちがわかるようになったと言い、私は前に観たときよりもずーっと男に肩入れして観賞した。

19日、東浩紀さんのゲンロンカフェでのトークイベントの音声を聴きながら、名刺整理をする。1000字書こうかと思ったけど時間切れ。名刺管理は昔からぬるく「Eight」を使いつつもほとんど放置しており、渡米のタイミングでいよいよヤバイと思い必要そうなものだけ選り分けて紙で持参していた。で、また二年半放置。半分ほどスキャンして重複を間引いて600枚くらいというので、なんだかんだ全部で1500枚くらいじゃないだろうか。これだけ紙の風合いを愛する私が、ガンガン捨てるのだから、もう活版印刷などできちんとした名刺を刷って価値のわからない人に手渡したりするのは馬鹿らしいね。かつては個人用に、特殊印刷や変形や折り加工の名刺を作っていたこともあるのだが、それも却下。そもそも金の箔押しとか、グレーや薄いブルーの欧文とか、読み取りづらすぎる。2000年代前半に流行した「表面は名前だけ、裏面に詳細」というのもイラつきしかないし、履歴書みたいに活動履歴を書いてある意識高い系のやつも今や無意味、時代遅れ、SNSのキャリアサマリに書けばよろしい。なんだか味気無い気もするけど、もう「名刺じゃんけん」するような時代でもないのだから、作る側もそれに合わせてデザイン考え直さないとダメだなーと思う。「Eight」使い始めた頃は本当にユーザが少なくて大半がアーリーアダプター、すなわち他のSNSでも十分つながれる人しかおらず、まったく発展性がないと思っていたんだけど、2018年の今になってスキャンかけてみると、老舗出版社の上役みたいな意外な人がちゃんとヘビーユーザーになっていて、ずいぶん見える世界が変わった。いや、まぁ、自分が5年10年単位でサボってただけなんですけど。