吉祥寺スターパインズカフェでの友部正人ライヴ、
毎回ゲストを招く「言葉の森で」シリーズの第9回は
私も大好きな京都のユニット・ふちがみとふなととともに。
以下ネタバレと無駄に長い妄想暴走特急にご注意。
中央に友部正人を挟むかたちで、左に渕上純子、右に船戸博史。
まずは友部さんが1人で登場、「Speak Japanese, American」や
「こわれてしまった一日(遠くからでも見える人)」ほか何曲か歌う。
途中、何度か歌詞を間違えたり口ごもったり、トチっては頭を掻く。
ファン歴十数年の浅さとはいえ、こんな友部さん初めて見たので驚いた。
「今日は大好きなふちがみとふなとが一緒なので緊張しているのかも」と。
大好きな人が大好きな人たちをそんなふうに言うのがとても嬉しい。
吉祥寺の歌を、と言って「中道商店街」もやった。
シリーズ「言葉の森で」のコラボレーションから生まれた曲、
「退屈」と「サン・テグジュペリはもういない」を初めて聴く。
両方とも本当に素晴らしい曲で、心からびっくりする!!
「言葉の森で」から生まれた曲をいずれは1枚の音盤にまとめてほしい。
退屈だから〜した、と生命の営みを説き、退屈は素敵、と歌う前者は超名曲。
後者は、私たちがみな空の下で繋がっているという壮大な世界観。
ちょっと「勇気ひとつを友にして」を思い出す。みんなのうたに入れたい。
友部正人は孤高の歌い手である、という表現にも真理はあると思うが、
誰かと一緒に新しい音楽をつくることにも、恐ろしくなるほど、長けているのだ。
「曲だけはどんどんできて困る。食べちゃえればいいのにね」と笑う。
食べちゃえればいいのに! この発想が凄い。消化するように歌う友部さん。
入れ代わるかたちで、ふちがみとふなとが登場。
船戸さんはいつものように呑気なオレンジ色のTシャツだが
ノースリーブワンピースの渕上さんは、ちょっと気合入ってる。
友部さんにいじられ、「こんな近い距離でお話しするなんて……v」と
超絶乙女なリアクションが新鮮だ。そしてとてもその気持ちがわかる!!
一曲目「あじさい」から入り、初めてその歌声を聴いた観客たちから溜息が漏れる。
でも二曲目「妻の言い分」で、初めてその歌声を聴いた観客たちから失笑の渦。
ものすごい絶妙な選曲。定番の「坂を上る」「その夕暮れ」など数曲。
再登場した友部さんは白地にカラフルな水玉シャツ。色盲検査の図みたい。
女性ファンとして毎回ファッションチェックさせていただいておりますが
……慣れてきた。あの絶妙な服装センスがだんだんかわいく思えてきたよ!
そして「暗くて見えにくいんだよね」と呟いた後、老眼鏡をかける。
黒縁の丸レンズ。小ぶりのロイド眼鏡? 否、ジョンレノン眼鏡である(鼻血)!!
友部さんを愛し、眼鏡を愛し、すべての愛する男性が眼鏡をかければいいと
思っている私ですが、と、友部正人がジョン眼鏡……これがネ申の領域か!!
参考写真:書店の前で老眼鏡かけてる。萌えすぎて死ぬ。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hanao/001-tomobe/001tomobe-image/top-photo/photogallery/photogallery17.html
日本のボブディランでも日本のジョンレノンでも好きな称号持って行って呉れ。
こんな知的でセクシーなフォークシンガーは世界中どこ探したって居やしない。
ふたたび老眼鏡をかけるとき、「失礼しまぁす」って言うのがまた(喀血)!!
というわけで、渕上さんが引っ込み、船戸さんバックに眼鏡の友部さん。
そ の と き ネ申 が 降 臨 し た 。
「今の渕上さんのステージを僕も客席で見ていたかった。どうでした?
彼女の歌うパフォーマンスは独特ですよね。僕もああいうのがしたくて……
ちょっと影響を受けて、やってみようかなと」
もうこのMCの時点で「貴殿は何を言っているのだ」状態だったのですが、
まさか本当に、マジで、友部さんが踊りだすとは思わなかったYO!!!!!!
たしかに渕上さんは歌うとき、全身でリズムをとり、
足踏みに合わせて手を前後に振るような躍動的な仕草をよくするのである。
でも友部さんのはなんか微妙に全然違う、まったく新しい「ダンス」。
「言葉がぼくに運んでくるものは」の語尾のところでは
自分で「ズン・ズン♪ ズン・ズン♪」とか言いながら、
植木等がたまにやるような、直線的なツイストのようなもの、を披露。
ああそうだ「氷川きよしのズンドコ節」みたいな振り付けですよ。
それでたまにツイストのふりをして、演奏中の船戸さんをつつく(笑)。
で、続く「38万キロ(シカゴに行こう)」の朗読では
「I can’t turn you loose」の渕上さんみたいに両手を高く掲げちゃう。
そうか、あのへんの渕上さんを真似してたのか! と気づく頃には
何ともキュートな友部さんに胸トキメキまくりで脳髄キュンキュンです。
一種、盆栽小僧の「踊る盆栽17歳」や、舞台で暴れる野田秀樹にも似て。
ああそうさ。好きさ。私は大好きなんだ、こういうお茶目な殿方が!!
しかしまがりなりにも「フォークの神様」。
暗い部屋で1人レコード聴きながらその歌声に大号泣したことはあっても、
場内が笑いに沸いた光景なんて初めて見ましたよ、私は。
ま、気難しそうな顔の男性ファンがどんな反応していたのか知らないが、
女性ファンはもう全員が全員、悲鳴に近い「萌え悶え声」を挙げてました。
家ではあんななのかな、とか思って本気でときめいた。
自宅でふちがみとふなとを聴きながらズンズン踊ってる正人サン。愛。
ああ、それでライブレポートでしたね、これは。
沸きすぎの客をいぶかりながら「めっちゃ見たかった!」と渕上さん再登場。
3人が揃ったところで、どんな曲をやってくれるのかと思いきや。
しょっぱなから「歌う人」「楕円の日の丸」。た、楽しい。
まるで最初から“ふちがみとふなとと友部正人”の曲であるかのよう。
「歌う人」はそのまま友部さんというアーティストを歌っているようだし、
「楕円の日の丸」のあの歌詞に渕上さんの“効果音”が絡むのも素敵。
次は、渕上さんの詞に友部さんが曲をつけた「池田さん」という曲。
夜の匂いのするイケダさんは女性で、だが外見は友部さんみたいだという(笑)。
岐阜にいた小学生時代、2階の窓から“夜の女”が肩に白粉をはたくのが見えて
色っぽいなァと思った、という友部さんの思い出話が非常に美しかった。
そして次は、友部さんの詞に渕上さんが曲をつけた「老人の時間、若者の時間」。
ふちふな2名が作曲コンペをして、渕上さんバージョンが採用されたのだそう。
時間は若者を訪れる。老人にこそ時間が必要なのに、時間は若者のほうに行きたがる。
そして若者はトグロを巻く時間に潰されて息ができないと言う。
そんな詞の内容に、「働く人」を初めて聴いたときのような衝撃を受ける。
さっきまでズンズン言ってたのが嘘のような(笑)、パフォーマンス。
続けて「ナ・ララ」を共演。これがまたイイ! とにかくイイ。
ふちがみとふなとの音盤はいつも編曲に無駄がなくて感心するのだが、
代表曲「ナ・ララ」で、まさか「原曲より3人の演奏のほうがイイ!」と思うとは。
一夜限りじゃなくもっと恒常的なバンド組めばいいじゃん! と心から感じ入る。
いよいよ、お待ちかねのクライマックス「Don’t think twice」。
ふちがみとふなとのカヴァー集『アワ・フェバリット・ソングズ』に収録の、
友部正人の日本語訳詞によるボブディランのナンバーです。
勝手に歌って録音しちゃってからライブ会場の楽屋で友部さんの許可を得て
以後もゲリラ的に歌っているという曰くつき(?)の曲なのだけれど、
それを本家の友部さんと同じ舞台で歌う日が来るとは「夢のよう!」だと渕上さん。
大好きなふちがみとふなとが、大好きな友部正人をカヴァーしてると知ったときの
あの喜びを思い出して、聴いてるこちらも「夢のよう!」だった。
最後は「大道芸人」。この感想は「ナ・ララ」とまったく同じ。
原曲が思い出せなくなるほど、すべての音がしっくりと合わさった演奏。
彼らが、初めからずっと3人組だったみたいに見えてくる。
まぁ“ふちがみとふなとと上野茂都”のときにも同じこと思ったのだけど……。
好きすぎて頭おかしくなりそうなほど。ずっと聴いていたくなる3人組。
アンコールはまず友部さんが登場して、
たった1人で大音声を発し「ぼくは君を探しに来たんだ」を絶唱。熱唱。
ああそうか、3人のハーモニーもいいけど、やっぱり1人の友部さんもいい。と、あっさり認識を元に戻した1曲。
この曲は若き日に録音された声の調子がすごく好きで、何度もレコードで聴いた。
あまりにも素晴らしい録音なので時代を飛び越えてライブで聴くのが怖かった。でも、いざ聴くと「“今”の友部さんが一番好き」と毎回強く思う、そんな曲。
それから、“ふちがみとふなとと友部正人”で「遠来」。
渕上さんが「台湾」のところを歌うと、会場が一体となってうっとりする。
ライブの大好きな3人のライブ。素晴らしい一夜、その一語に尽きる。
いつまでもいつまでも拍手していたかった。
またぜひ、こんなかたちで共演してほしいと切に願う。