金曜日、さすがに飲みすぎた。反省して午前中はおとなしく過ごす。午後から日本人の友達に誘われて、「Grolier Club」というところで開催中の「Blooks」(本の形をした本でないもの)の小さな展覧会へ。Grolier Clubというのは、会員制クラブかつNPO法人、1884年から続く愛書家たちの集まりで古風な建物の中に会員たちの秘蔵のコレクションを陳列している、ということらしいが、アメリカのニューヨークのど真ん中でコレをやるというのが、金持ちの秘密結社ゴッコぽくて面白い……いや、まぁ本当に秘密結社なのかもしれないけどさ。博物館はどの階も無料一般公開、訪問者や支援者は誰でもメンバー扱いになるけど、もし「Formal membership」が欲しければ推薦状が必要で幾つか条件がある、みたいなことが書いてあった。あれだろ、地下の祭壇で頭巾かぶってみんなの生き血を混ぜ合わせた赤インクで活版印刷したり、製本用の針で見えないところに刺青彫ったりするんだろ(※偏見)。近所にあるイラストレーターソサエティ(こちらはとてもモダン)の会員ギャラリーもハシゴして、夕方解散。
夜は慶應義塾ライトミュージックソサエティ(LMS)のNY遠征公演を聴きに行く。知人からお誘いを受け、ぶっちゃけそこまでは期待していなかったのだが、ごめんなさい、さすが日本最古の由緒ある大学ビッグバンド、すごくよかった。もちろん精鋭メンバーが旅公演に来ているのだろうし、はるか昔に新入生歓迎オリエンテーションとかで聴いてぼんやり憧れていた記憶より、断然よかった。とくにフルートと、あとパーカッションの人が最後の曲だけ叩いたドラムが印象的だったな。ライトのために書かれた曲というのもあり、会場にその作曲者本人が来ていて、嬉しそうにスマホで動画を撮ったりもしていた。こちらへ来てあちこちでいろいろな「ジャズと括られる音楽」を聴いたけれども、舞台に上がっている全員が年若い日本人ばかり、というヴィジュアルのインパクトが、まず他では見られない異様だし威容。日本国内で例えると「JTこども将棋大会」の地方会場の、一歩入った途端にそれとわかる空気のヤバさにも通じる。みんな同じ教育を受けてみんな高い水準に到達し、みんな似たトーンを形成している。そして、その優秀で有能で裕福な平たい顔族の若者たちが、ぴかぴかに手入れされた上等な楽器を手に、あるいはひねりの効いた小道具を楽器に、ものすごく精緻な演奏をする、ことよってのみ醸し出される独特のグルーヴというのが、確実にあるのだ。曲ごとに入れ替わり立ち替わりスッと指揮をとる様子とか、全員のハンドクラップさえ譜面が透けて見えるほど揃ってるとか、そんなことに感銘を受ける。普段我々が「東洋人には敵わない」「本場のジャズ」だと思って大変ありがたく観ている、あのスタンダードナンバーを好き放題に崩した下半身を揺さぶるプリミティブな即興演奏ってやつが、ちょっと見方を変えるといかに雑で適当でグダグダか、気付かされる、というのか……。いいもん観た。上半身が唸らされる感じのコンテンポラリーもいいねぇ、と話しながらトルコ料理食べて帰る。
日曜日は、午前中だけで終えるはずだった日記を書いているうちにもう日が傾いている。たぶん今後もずっとこの調子。