今学期は、前学期まで避けに避けてきた4限(19:00-21:40)の授業が最低でも2つある。どうしても暮らしが宵っ張りになるのに加えて、ごはんを食べるタイミングが難しい。第一週目は軽めのジュースクレンズ的なことをしていて、ほとんど固形物を摂らずともなんとかやっていけていたのだが、連休を経て胃袋が普通サイズに戻ってしまい、授業後に帰宅して22時台に食べるのではあまりに遅いし、といって早めに済ませるのも中途半端に腹が空くし、19時直前に食べると授業中に眠くなるし……答えが出ない。難しい。火曜は朝一番の授業中にジュース、昼はコーヒーとお茶請けだけで実質抜いて、16時半くらいに学校近所でビーガンバーガー。菜食主義のイメージを覆すほどジャンクな意味で美味いのだが、衣をつけて揚げたオニオンリングが有機野菜の跡形もないほど脂っこく塩っからく胃にもたれる。植物油だからノーカン、ということなんだろうが……イデオロギーはさておき、これなら薄味の肉を食べたほうが健康によくないか……? アメリカではベジタリアンでも四人に一人は肥満体、という話、こういうの食べるとよくわかる。でも、一般のアメリカ仕様な店と違って、何より「量」がちょうどいいのでとても重宝します、菜食の店。
木曜4限はドミトリ、最初に簡単なクリット(合評)があり、その後はまたしてもインクラスワークという名の自習の授業。何種類出したのか忘れたくらい案を出したのだが、「駄作を並べるのはやめて、ベストワンの作品以外見たくないわ!」とおっしゃるどこかの誰かさんと違い、一つ一つをちゃんと仕上げてくるように言われるのが、ドミといえばドミ。仕上がればそのぶんポートフォリオに載せられるので、頑張ろう。タイポグラフィで作った作品群について、「これはもう完成でいい……けど……中心線が下方にズレてるよね?」と、言われるまで気づかなかった。こえええ! こういうのって目で見て調整するしかないのだが、印刷したものを上下反転させてチェックすれば気付けたはずの話。修行修行。本日の萌える修正案MVPは「シロクマの彼に……もし前足があったらイイかも……」で、震えるMVPは「育が気にすることじゃないかもしれないけど、地球の軸は23.43度傾いているんだよ(にっこり)」でした。明後日までにデジタイズして完成まで持ってかなきゃいけないのだけど、スキャナやプリンタのない教室で自習なので、なんとなくみんなだらだらスケッチして終わる。この感じ、前学期のTimの授業形態とも似ていて、正直ダレるんだよな……。
24時間営業のコンビニで日用品を買って帰宅し、ちょっと一休みのつもりで寝転がったらそのままの姿勢で朝まで寝ていた。夜中心の授業、前途多難でしかない。
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水曜2限はコワモテのDavidM。スマホ&ラップトップ禁止令はやはりかなり厳しく、休み時間でも使うときは退室せよというルールだった。コワモテなんだけど、面倒見はよくて、何かわからないことがあって質問するとゼロから新規プロジェクトを作成して、イチから手順を指導してくれる。大変有難いのですが、なぜ、教室全体へ向けた授業をこの手際で進められないのだろうか……。呼び止めて彼の指導時間を自分のものにした奴が勝ち、という様相を呈しており、メスカルを飲まないメキシコ美女ことPがガンガン授業を中断しまくるので、私も負けじと劣等生ぷりを発揮して呼び止めまくり、挙げ句の果てに「……君は、先週はいなかった生徒か?」と逆質問される。いたけど授業には半分もついていけてません、先生! 今週から意識高い女子Aが出席していた。あらー、と嬉しく思うんだけど、こちらが話しかける前に消えてしまった。もう話しかけられたくないのかな。さーせん。
関係ないけど、今日は暑かったので、ヨガウエアの棚から買ったノースリーブ膝丈ジャージーワンピース一枚で素足に蛍光色スニーカー、毛玉だらけのグレーのパーカ、いつものスケーターリュックにサングラス、という服装で出かけ、ウィンドウに映った自分を見て愕然とする。あ、あ、アメリカの女子大生みたい! いやアメリカの女子大生なんだけど! 悪い意味で! 残暑に薄着して、というかほとんど寝間着みたいな格好で、平然と登校してきては「美しさとは」とか熱く語ってるクラスメイトたちを、小馬鹿にしていた時代が、私にも、ありました……が、私もすっかり寝間着である。寝心地の悪いエコノミークラスに乗って寝る気まんまんのときの格好である。学校がホームになった、といえば聞こえはいいが、日本では毎日のようにスーツ着て出勤してた時代もあるなんて、もう信じられない。こんなアラフォー、本当に社会復帰できるのか。時まさにニューヨーク・ファッション・ウィーク! 通常以上に気合入ったオシャレしているファッション科の子たちとすれ違うたびにいたたまれない気分になる。ファッション科で有名な大学に通っておりますが、今年もNYFWには何の関係もないまま、かすりもしないまま、卒業となりそうです。
夕方、履修アドバイザーのDanaと面談。3学期目にあたる今期で卒業するか、それとも「敢えて必修単位を落とす」ことで4学期目まで居残るか、という話。私が学生でいられる時間は原則として4学期分。当初は、可能な限り遅くまで「学生」という肩書を手にしておきたいと思っていた。休職中であるとか、仕事が内定しているといった学生はファストトラックと呼ばれる詰め込み型の2学期卒業を選び、「飛び級」状態のそれがまたハク付けになったりもするのだが。一生に2度3度とある話ではないので、おばさんはもう少し気長にモラトリアムしてたいです。で、そのためには必修単位をわざと一つだけ次学期まで残しておき、フルタイムではなくパートタイムの学生として残るという裏技がある。パートタイムで残れば、春学期も11単位(4〜5コマ)は好きな授業が取れるので、彫刻とか、スペキュラティブデザインとか、ユーザビリティとか、興味はあるけど他と同時並行で取るにはエグすぎる感じのハードな授業をゆっくりじっくりのんびり履修できる……と、思っていたのだ。
しかし、3学期目で卒業しても社中として設備は引き続き使い続けられるらしい。加えて、春学期の講義スケジュールは未確定要素が多すぎ、目星をつけた講師や講義がいつの間にか消えて無くなるといった可能性も微レ存。それに、好きな授業が取れるといっても、1コマ3000ドル単位である。夏学期に必修科目のオンライン受講に4000ドル払ってあらゆる意味で「金返せ!」となった直後なので心理的抵抗がものすごい。そして現在15単位履修中なのだが、今学期アドバイス通りに2単位落として13単位履修に減らしたとしても、12〜19単位のフルタイム学生は、お値段据え置き! ここまで聞くと「なんで成績も悪くない健康に問題もない私が、今わざわざ2単位落として、来季3000ドル余計に払わなあかんねん」とは思ってしまう。聴講生になれないの、と聞いてみたけど、どんなに頑張っても成績出ないわ学費は高いわで、「生涯学習クラスのほうがいいのでは」みたいな話。だったら別の大学で、全然別ジャンルのこと学ぶのに時間とお金を使いたい気もする。というわけで、やはり風の流れに任せて3学期卒業だろうか……。「とっとと終えたい」と「まだここを離れたくない」の狭間で、9月いっぱい悩むことになりそう。
4限はEricの「Portfolio&Process」。金曜のEmilyとどっちにするか、まだ迷っている。Juliaから幾度となく「育はエミリー以上にエリックから学ぶことが多いはずよ、彼もまた、ノンネイティブでありながらこの街で成功を収めた才能あるアジア系デザイナーだから! お手本になるはず!」と聞かされてきたのだが、教室に入ってきた当人の顔を一目見て「いやいやいやいや若すぎるだろ!」と声が出そうになった。今ぐぐったらやっぱり年下でした、1981年11月生まれだってお。バンバン。前学期のMattよりはマシですが、「NY一人旅してるときこういうアジア男子によくナンパされたなぁ」「襟のあるシャツさえ着てれば十分フォーマルだと思っているギーク系デザイン男子、SFCの後輩そっくりだなぁ」「つーか、これだったらいっそ川村くんにでもなんか教わりたいわ」といった懐かしみで、朗らかすぎる笑顔を直視できない。そしてジュリアの言ってた「育にぴったり」というの、ぴったりの意味が違うと思う……と、簡潔で明瞭だがひたすら聞き取りにくい英語に四苦八苦しつつ、単語だけのコミュニケーションを交わす。私と彼と、ジュリアの頭の中で同じフォルダに振り分けられてるだけでしょ。フォルダ名「英語がんばれ組」でしょ。がんばるけども。「日本で出版社で働いてた? じゃあ女性向け雑誌で有名なマリコンドゥも知ってるの?」「は? マリークレールのこと?」「違う違う、マリークンディ……? 発音違う?」5回くらい往復してようやく、人生がときめくこんまり先生のことを言っているのだとわかった。
いやしかし、独立系広告アートディレクターとして素晴らしい実績をお持ちの上に、作風すごく私好み、教える情熱も高くて、いい講師だと思う。今日は全員が自己紹介代わりの5分間プレゼンをしたのだが、聴いた全員がメモに「良い点・悪い点」の感想をしたためて本人に渡すというクリット形式で、渡された本人は手元に残ったそのメモ書きをもとに次週以降の改善に着手する。時間の使い方に無駄がないし、気まずい沈黙の流れる教室でおしゃべりな先生から居丈高なダメ出しを受ける発表会よりずっといい。いやこれエミリーのことですけど。まぁエミリーにもいいとこあるけど。それでこの合評会、一緒の授業いくつも取ってるのに全然話しかけてこないので嫌われてるのかなと思ってた子から突然「あなたが好きよ!」と熱烈な手書きハートマーク入りのポストイットをもらったりする仕組みなわけで、地味に超嬉しい。このポストイットを貼り付けたノート、数年後に見返したら超感激すると思うなー。ありがとうー。作品ポートフォリオの他に、「私が働きたいデザイン会社3選」というのもプレゼンするのだが、これもみんなそれぞれヒネッた球を投げていて面白い。知らない社名がたくさんあって、慌ててメモる。衝撃だったのは、ブックカバーデザインの授業で優等生だったANが、ヘレン様率いる某社装幀室を挙げていたこと。マジか。いや働けると思うよ君ならヘレン様の下でも(遠い目)。現在インターン中の職場を挙げるような子もおり、一学期目の最初の頃にはメタクタな出来の課題を出してきた子が今やきれいなポートフォリオ仕上げてるのとか見るのも感慨深い。「学校」ってすごいなぁ、と素直に感心する。
それで日記タイトルですが、夕方に日本人同級生がラウンジで食べていたあつあつのテイクアウトうどんが超美味しそうで、昼を食べそびれてパウンドケーキでしのいだ私はやはり大失敗、4限にめちゃくちゃお腹が空いてしまい、帰宅すればカトキチの冷凍うどんがあるのであれを茹でて食べるぞ、食べるんだ、と思っていたのに……疲れ果てて22時台に閉店間際のとんこつラーメン屋へ駆け込んでしまった。今は反省している。やはり素うどんにすべきであったよ。4限と食事の問題、引き続き難しい。