2016-01-08 / 松の内

あっという間に年明け一週間も経っていた。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
大晦日の年越は、目が覚めてまず朝食を摂りながらNHK紅白歌合戦のTwitter実況タイムラインを堪能し、夜はタイムズスクエアのカウントダウンをテレビ中継で観ながら、日本食料品店で買ってきた簡単なおせち惣菜をつまみ、田舎蕎麦を食べて獺祭二割三分で。用事を済ませに外出したけれど、街はいつも通りの休日という感じ。大晦日を特別な日と捉えてウキウキしているのは日本人の私だけ、なのだった。とにかく初めてづくしの1年目、なんでもニューヨークで体験してやろうと、サンクスギビングもクリスマスも年越も自宅に引き籠もっていた。その都度、周囲の友達たちから「どこへも行かないの?」と奇異な目で見られていたのだが、その理由もわかった気がする。
だからというわけではないが、元日からはアムトラックに乗って初めてのボストンへ出かけ、同じ時期に渡米した友人夫婦を訪ねて三泊四日の小旅行を満喫。ハーバードとMITのキャンパス、フェルメールとレンブラントを中心に据えた企画展を開催中のボストン美術館がとてもよかった。広大かつコンパクトな凝縮度。きちんと手入れされた歴史ある町並みと、古びず廃れず現在に至っている文化度の高さ、のんびりと空の高い贅沢な景色は、日本でいう札幌や金沢などを思い起こさせた。「ニューヨークはせかせかしてゴミゴミして慌ただしく、いつも埃っぽい。とくにマンハッタンは人の住むところじゃないよねー」という一般的評価、東京から移り住んだ者には正直それほどピンときていなかったのだけど、電車で3時間の場所にこんな街があるなら、老後は絶対あっちで過ごすぞとか、実家があるから毎週末でも帰りたいとか、そんなふうに言っていたニューヨーク在住ボストンッ子たちの気持ちもわかる。とはいえ、ペンステーションから地下鉄を乗り換えて自宅まで帰ってくる過程で、品川駅で新幹線を降りて出張先から家へ帰るときのホッとする気持ちを思い出したりもした。まるで「故郷」めいたものの見当たらない、郷愁とは無縁な都会にふたたびポンと戻される解放感。私にとってはこの感じが「ただいま」である、今のところは。
ホテルで夜を過ごしていたら、高野寛のFacebook経由で、宮沢和史が歌手活動を無期限休業との報を知る。心臓がバクバクいって苦しくなり、なかなか寝つけなかったのだが、これを書いている今はさすがにもうだいぶ落ち着いている。あの晩、むさぼるようにTwitter検索をかけたのに、一部を除いてあんまりファンの声が目に止まらないのが興味深かった。THE BOOMの解散のときもこんな感じだったな。90年代、あんなにコミュニティが発達しているファンダムがあったのに、あのうねりはソーシャルネットワーク以前のところで堰き止められてしまったのだろうか。それともみんな私と同じで、まったく受け止めきれずにただ言葉を失っているのだろうか。一番たくさん気丈に発信してくれているのがGANGA ZUMBAのメンバーとしてリハーサル風景を伝えてくれる高野くん、という印象。これがまた、20年近く両者の関係性を、そして両者の相違を、ずっと見てきたファンとしては、なんとも、グッとくる。高野くんと違ってMIYAは「こちら側」へ来ることはなかった。でも私はそんな彼らの両方のスタンスが好きなんだ。書きたいことがたくさんあるけど、また別のタイミングで。
ニューヨークへ戻ってからは、たまたまブロードウェイ観劇旅行に来ていたフォロイーさんとお茶をして、新作ミュージカルの感想をたっぷり聴かせてもらった。もっといろいろな人に会いたいなぁと思ったものの、旅疲れなのか鬱鬱と過ごして、あっという間に一週間。まるまる一月近い何もない冬休み、せっかくたっぷり時間があるのだから何か大きなことをしようと思いつつ、ついダラダラと過ごしてしまってもう折り返し地点を過ぎている。この辺りは一度目の学生時代とまったく同じ。秋学期の通知表が届いて、英語も含めてほぼ全部A、一科目だけA−を食らった。この話もいずれ書こう。「やるからには卒業まで全科目オールAで」という目標は最初の学期でいきなり潰えたが、Dean’s List(成績優秀者一覧)には載れそうで一安心。もちろん実力社会なので学校の成績がすべてではないのだけど、若者が若者なりの夢を追うように、大人には大人の志が必要で、来学期以降もちょっと高めに自分を保っていたいものです。
ボストン滞在中にあちこちのアウトドア用品店などを回って防寒グッズについて知見を得た。やはり寒い街だけあって品揃えがずいぶん違う。ワンフロアまるまるカナダグースじゃないかというほどの豊富な在庫やら、雪靴ばかりをウィンドウディスプレイの主役に据えたセレクトショップやら。戻った日の晩はニューヨークもとうとう体感温度が摂氏−20度まで下がり、何よりの問題は「顔が痛い」であることがよくわかった。引き続き寒さの研究。そういえば、今年は七草粥を食べなかったな。