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2015-08-10 / 渡米前後日記

「フレンドオブファーマー」でカボチャのパンケーキ、ブロッコリーの入ったオムレツ。窓辺の席に体格がまるで違う素敵なゲイカップルがいて、詳細は省くが、かわいくてずっと見惚れていた。

とうとうホテルをチェックアウト。荷解き、片付け、洗濯。服がスパイシーになる問題、自分で洗濯するようになるとそんなに感じなくなった。いちいちなんでも背が高いので、風呂場のシャワーカーテンレールに干した洗濯物を取り込んでるときにも、なんだか「果実の収穫」みたいな感じになる。

そういえばJFK空港に飛行機が着くと同時に「くさい」と気づくことはある。でも、子供の頃に一番最初にアメリカ旅行をしたときは、街の匂いなんてまったく記憶にない。大自然の中でのキャンプから、いろいろなアメリカ人の家を点々とし、地方都市と大都市を行き来したのに、ニューヨークのゴミゴミした匂いについてはよく覚えてない。他に驚くことが多すぎたのかな。渋谷の街は湿気の多い日などドブの匂いがして、ああ、ここは谷なんだなと実感するが、ニューヨークはどこもかしこも、ごっちゃになった食べ物の匂いがしてくる。そしてまるまる太ったネズミがリスのように走り回っている。言われてみれば道とかも得体の知れないゴミが溜まっていて非常に汚いわけだが、慣れると気にしなくなる。日本の道が清潔すぎるのだろう。

午後3時に買い物へ出かけ、無印良品で本棚を買う。クレート&バレルでは買うものなし。エイリアンカフェでジュースを飲む。ここのスムージーは美味い。オレンジラインに乗って23丁目へ。いや、うっかり34丁目まで行きすぎて戻ったんだが。コンテナストアとBBBで買い物。最初は「こんな店のチープな品物にこんな値段を出すなんて嫌!」と暴れていたが、一週間も経つと「もうこのカゴでいいや、9.99ドル? まぁ安いじゃん。どうせ流しの下に置くだけなんだし」という気分に。魂の劣化。「どうでもいいものが高い」というこの街の物価に、いちいち憤るのに疲れ果ててしまった。そういえば、東京の引越だってそんな感じだったよなと思う。転居先のすぐ近くにある雑貨屋で、どうでもいいものを「これでいいや」と思いきって買い込まないと、本来の生活がスタートしない。スポンジとか、洗剤とか、カゴとか、物干し竿とか、値段を見ないでガンガン買って、「おうちに置く素敵なものが欲しいわ」という余裕が生まれるのはずっと後のこと。

月曜日、街中には観光客が目立つ。普通の人々はみんな働きに出てるからだろう。でも、子連れのお父さんがコンテナで普通に買い物してたりもする。自営業なのか、平日休みの勤め人なのか、じろじろ観察してしまう。あるいは、昨日は日曜日でそもそもの人出が多かったからかもしれない。交差点で、日本語のカタカナで大きく「ニューヨーク」と書かれた大判のガイドブックを抱えて歩いてる女の子を見かけた。手回品をコンパクトにまとめて旅慣れた様子なのだけど、詰めが甘いというか、「住んでいる」目線から見るといかにも観光客風である。私がスリなら彼女を狙うな。危ないよ。と思ったけど、旅慣れた様子でサッと通り過ぎていった。

大きな荷物を抱えた買い物の帰りは、混み合う地下鉄に乗るのも煩わしく、10ドル以下で済むならタクシーを使う。自宅までの道案内をするとき、通りの名前を幾つか言わないといけないのだが、どんなに長い複雑な通りの名前よりも、いくらLとRを含んだ地名を告げるよりも、「Fourth」という単語が、聞き取ってもらえない。これは結構な衝撃。言われてみれば、小学生でもわかるこの頻出単語、「F」で始まって「th」で終わるのだ。とくに「F」がカタカナの「フォ」では全然ダメみたいで、4本指を顔の前に突き出して「(プ)フォーーッ(ト)ス!」と必死で舌を動かしても、発音ではなく指を見て数秒後に「あ、Fourth」とようやく判断してもらえる有様。

へろへろになってタクシーを降りると、家の前の車道をまたいで、ゴム製の羽根つきボールでキャッチボールしている、そう若くもない男二人組がいた。駐車車両もたくさんあって、人も車も頻繁に行き交っている通りを挟んで、である。何やってんだよ、と思ったその瞬間、私が降りたばかりのタクシーのボンネットにゴムボールが直撃。ボヨンボヨンと跳ねて車道へ転がっていった。「でも平気、ゴムだから、傷つかないし傷つけない」という麦わらのルフィっぷり。驚きに固まっている私に仏頂面で「sorry about that.」とだけ言って、二人はそのままキャッチボールを続けていた。うーん、その神経、信じられない。

トランクに詰めて手荷物で持ってきた=到着してすぐ着ようと思っていた服を、そういえばほとんど着ていない。「ニューヨーク」を小脇に抱えた日本人観光客が街中から浮いて見えるほどオシャレだったので、そのことに気づく。この一週間、日本でいうとコンビニとマツモトキヨシとジャスコとビックカメラみたいなとこしか行ってないし、咄嗟に重いものを自力で運んだりもしないといけないので、部屋着のような格好で街をうろついている。しかしそれでも、色柄もののサンダルやパーカーを羽織っているだけで十分オシャレしてるように見える、それがダウンタウン。もちろんミッドタウン以北にはもっとOLっぽい格好の人なんかもいるのだろうけど、みんなカジュアルで、みんなシンプルシックで、色柄がプリントされた服を着ている人を滅多に見かけない。黒か白かベージュの無地の服を着なければ死ぬ、みたいな法律でもあるのだろうか、この地区は。たまにおそろしく派手かつオシャレな格好の人がいて「そうそう新宿や原宿はこんな格好が普通じゃん」と見ると、大抵は若い韓国人観光客である。