2015-08-16 / 渡米前後日記

これまた近藤聡乃さんが『ニューヨークで考え中』に描いていたことだけど、こっちの女子って、薄手のレギンスを一枚で履いていたりする。もちろん上半身も薄着で、ノーブラに背中のあいたキャミソールなんて日常茶飯事なんだけれども、その他にも、ミニスカワンピースを一枚で着て足元はビーチサンダルとか、ちょっとオシャレなトップスを着てるけどホットパンツとか、なんというか、「下半身が貧相」と形容したくなるような服装が多い。

冬になるといやでも厚着せざるを得ないわけで、そうなるとマフラーや小物で遊ぶ人も出てくるのだろうけれど、夏の間はありとあらゆる女の子の露出度の高さから「服なんかどうでもいいから、少しでも日光を浴びよう」という気概を感じる。とくに、下半身。もう、生足、生足、尻から下は無頓着、素、あるいはクロップドパンツかと思いきや涼感素材のレギンス一枚で紐パンのライン丸見え、みたいな感じのファッションが主流である。脚線美の人もそうでない人も、足元にいくにつれオシャレ意識が低くなっていくというか、上半身ばっちり決めている人も、足元は安物のぺたんこサンダルだったりする。ほとんど裸足みたいなペラッペラのやつ。道の舗装が悪いからハイヒールなんてそうそう履いていられないというのもあるんだが。

そこいくと、日本人は真夏でも靴をかっちり履くよなぁ、と思う。先日、日本人の留学仲間と出掛けることになって駅前で集まってみると、我々の集団は「足元で日本人とわかる」感じだった。目的地が同じ別の客たちとぞろぞろ歩いている道中、我々の足元だけがかっちりしている。他がほとんどビーチサンダル、あるいは華奢なミュールサンダルなど履いているなか、日本人集団だけ、つま先まですっぽり覆われるブーティとか、厚底のウェッジソールサンダルとか、スニーカーとか、ビルケンシュトックの布面積が多いモデルとか。私はとくに足元をごついブーツやサンダルでかためたりする大地に根を張った「足が太い」感じのファッションが好きなんだが(実際に足が太いからです)、そんな格好をしている女子は少ない。

それで、これは体型と関係あるのかな、などと考えていた。上半身をゴージャスに見せるスタイルは、上半身がでっぷりとグラマラスで脚は相対的にすらっとして見える、というこちらの人々の主流な体型にとてもよく似合っている。日本人女子の一般体型、すなわちこちらでは相対的に「小柄で痩せている」扱いの子が、彼女たちグラマラスと同じようにして薄布のキャミワンピを一枚で着て裸足で歩くと、それこそ本当に、ガリガリに痩せ細って見えてしまう。映画でよく見る「貧民街の売春婦」みたいな、そういう記号的意味合いが強いというか。セクシーでない生き物が無理矢理にセクシーな衣装を纏っている、裸同然の服を着させられている、そんな、病的で心配になる感じがある。だからというのでもないけれど、グローバル展開しているファッションブランドの同じ服を与えられても私たちは、カーディガンを合わせたり、編み上げのサンダルを合わせたりして、重ね着で全身のバランスを取っているんだなぁ、と。

逆に言うと、欧米標準体型以上のぽっちゃり女子たちは、布一枚で外を出歩いてても、全然そうは見えないのだ。太っている人ほど、堂々と肉をさらしている。でも、そのほうが健康的に見える。まぁ「デブは余計に暑い」みたいな彼女らなりの事情もあるのかもしれないが、レギンス一枚とかキャミワンピにビーサンとか、ああいうファッションは、肉体との絶妙なバランスありきのものだなと思う。この間、スーパーモデル体型といえばきこえはいいが、標準体型と並ぶと「ガリガリ」の域に相当する、超絶すらりとした黒人女子を見かけた。彼女は真夏の陽射しの中で全身を黒でかため、ゴワゴワした革パンを履いて、とても人目を引いていた。足元も、黒革のブーツ。季節感も無視、我関せず、という態度で痩せすぎの体型をカバーし、いついかなるときも自分に似合うオシャレを貫いている。一方で、意識高いデザイナー的な人々は、体型に関係なく、いつでもオシャレなジャケットを羽織っていたりする。あれはデザイン事務所の内勤仕事なんかだとクーラーがきついから、という事情があったりするんだろう。

つまり、みんな体型や生活様式ごとにそれをカバーするような服装をしている。となると一番の主流ファッションは「下半身が裸同然」というあのスタイルになるんだけれど、まぁ一方で「全身黒革」や「真夏にジャケット」だっていることはいる。じっくり観察していると「下半身が裸同然」は、マジョリティではあるのだが、右へ倣えの「流行」ではない、ということがわかる。よくよく探せば、「かっちりした靴」を通り越し、真夏日にノースリーブ&ブーツでオシャレしてる人だっている。この「甘めの夏服にワイルドなブーツ」というオシャレは、逆に東京ではほとんど見かけない。90年代にガッと流行って廃れたせいもあるし、もっというと、高温多湿気候のせいなんだろう。こちらの気候下でなら、ああいうミックスが成り立つし、暑さと冷えとに同時に対策ができて機能的とも思う。

日本人にしては肉の付いたほうだが欧米標準に照らせばXSサイズで、超のつく冷え性だけど汗っかき、という私など、参考にするならああいうスタイルだろう。
なんともとりとめがない話だが、道行く人の格好を安易に真似しないほうがよさそう、というのがこの夏の感想。私とて、「下半身スースー」に憧れて、日本ではハーフパンツと合わせていたチュニックを一枚で着てみたりもしたのだが、そこであんまり無理するとお腹を冷やしてしまいそう。私は私、と夏でも長袖カーディガンやつま先のある靴で武装していようと思う。本当に、ニューヨークの夏は「寒い」。