2016-02-04 / ロボット大国

木曜日はFrankの授業が一つだけ。最初の課題は「日用品で作るロボット」で、テーマは「イラストレーション(2D)が得意な諸君の、3Dに対する苦手意識を克服する」というもの。今週はそのスケッチを見せる。授業時間は講評だけでほとんど終わった。丁寧だなぁ。もう完成に近い試作品を作ってきている子もいれば、私のようにスケッチと素材だけ持参した子もいる。まぁ作っていけないこともなかったのだけど、そうすると来週のファイナルまでに細かな調整を施さないといけなくなるので、一発OKをもらおうという魂胆で敢えてサボっていった。
のだが、そのスケッチが大好評。氷の微笑のFrank、じつは意外と笑い上戸で、いわゆる「ギャグ」に対する沸点が低い。私は英語の口頭プレゼンテーションがおぼつかないため、複数案のロボットにまつわるキャラクター設定やコンセプトについて、すべてスケッチの中にセリフやト書きのようにしてびっしり書き込んでいった。一つ一つ読み上げてはケタケタ笑われる。とくにKawaiiものに弱いみたいで、掴みはOK、という感じ。四つくらいの簡単な案を持って行ったら「全部すごくいいから全部作りなよ!」と言われてヤブヘビだった。あと、「私にとってロボットといえば……」という感じでメモしていったあれこれのうち、覗き込んだ学生たちはDoraemonやWall-EやR2D2に反応するなか、先生だけ一人「I know him! Astro Boy!」と大はしゃぎ。永遠の少年(推定50代)、洋の東西を問わずチョロいな。そのくせロボット三原則は通じなかった。「それ、誰が作ったの? ……アジ? ……日本人? ああ、Issac Asimovが? 本当に?」と訊かれた。モホリナジはさておき、アシモフも発音できてないのか私。いやもっというとRobotも発音できてないのだろうが。
イラスト学部の若い子たちがほとんど全員『Metropolis』を知らないので、ぐぐって画像を見せて「ほら、完全にC3POでしょ」みたいなこと言う先生。年増の私だけが「もちろん知ってますよー、我が国ジャパンの映画監督やアニメ監督や漫画家に多大な影響を与えた作品ですからね!」と言うと「あっ、もしかして『Ghost In The Shell』とかのこと!?」と、目を輝かせてメモる一部のOtakuたち。りんたろう監督の手塚治虫『メトロポリス』なんかって英語圏ではそれほど認知度ないのかなー、と思ったが、みんな若いせいかも。ストレート進学だったらだいたい20歳前後、つまり2001年に幼稚園児とかそんな感じだもんね。と何度でもゾッとする。
この日も体調がすぐれないので、画材屋やスーパーマーケットを回って簡単な買い物をした後は、大事をとって養生する。先が思いやられるなー。ところで木曜には同じ講師が受け持つフォトリソグラフィの別のコマがあり、そちらを履修している別の日本人学生がまたしてもトラベルポスターの題材に「モロッコ」を選びかけたということが判明し、関係者みんなで苦笑いする。判明した経緯がおかしくて、水曜の夜に私がスマホを見ていたら彼女がPinterestに「Morocco」というボードを立てた通知が届いたのだ。これはもしや課題用の画像資料収集……と思ったら案の定だった。結局別のイスラム文化圏の土地にしたらしい。
みんな同じ用紙を買っていく必要があるので画材屋を駆け回って探索する。今期、同じ専攻の日本人学生は珍しく同期に6、7人いて、その我々の情報収集ネットワークに加えてほしい、という感じで他のアジア人学生たちが寄ってくる。なんとなくアジア系の仲間の輪(数の論理と几帳面さでいろんなことを自力解決、省力化)ができあがり、いわゆる金髪碧眼ないしブルネット英語圏生まれ育ち、という色素薄めの女子たちが形成する宿題ネットワーク(弁が立ち諦めが早く、お手上げのことがあるとすぐ講師へ直訴)とは別個に発展していく。別に仲違いするわけでもないし、対立したりもしないんだけど、それぞれのネットワーク全員が翌週の宿題や持参するものの情報を間違えてきたり、という連鎖反応が面白い。そしてエジプト出身とかインド系の子とか「中間」がなんとなく相対的に単独行動する感じになり、間違えるときは一人で盛大に間違えてきたりする。入学時にFacebookグループなど作ったのに、「全員でシェア」という場はなかなか作られない。学部生に関しては中国人留学生の数が圧倒的なんだけど、今期の社会人学部グラフィック専攻に関しては「あの日本人の子たち」というカタマリ感が強くて、我ながら、俺たち存在感あるな、って感じ。