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文筆家・岡田育の近況と日記。

2016-10-20 / ぼくとゴジラの放射線流

軽く一週間を振り返ると、ほとんど風邪で臥せってました。火曜日の午後から水曜日の夜まで、ごはんを食べに出かける以外はほとんど寝ていたと思う。この辺りから、寝れば寝るほど風邪っぽくなり、頭がぼんやりするのをいいことに宿題をサボり続ける。木曜2限のDavidHは手ぶらで遅刻で登校、先週プレゼンを免れたので「Ikuはそろそろ僕に何か見せたい新作があるんじゃないかな!?」といきなり振られ、仕方ないので手元にある写真フォルダを見せながら座ったまま適当に趣旨を説明。15週間かけて最終課題を仕上げさえすればよい雰囲気なので「前に進んではいます」と進捗報告だけして事無きを得る。こういうときに「えっ今週は何も準備してなくてー」「時間がなくてー、何も見せるものがなくてー」とか、無駄な謙遜をいっさい言わなくなったな、私。「あなたがたは最新のWork in progressが見たいんだと思うので、とっちらかったままのラップトップ画面からプレビューするわね。これが現状よ」みたいなポジティブな言葉選び。だいぶアメリカナイズされてきている。4限のDmitryもだいぶそんな感じだったと記憶している。なお、進行中の課題3(大学のインビテーション)に入ったあたりからDmitryが今まで以上に大変つれないので、「たぶん休暇中にこの日記を発見してgoogle翻訳にかけて読んでみて、私という生徒のありようにドン引きしているのだろう」と思うことにしている。はーい、ドミちゃん、見てるー?ノシ 靴下がどうとか書いて悪かった、謝るので、個別にメールで相談したリヴァイズについて返事くらいくれ! くれると言った参考資料もまだもらってないよ!
金曜1限のEmilyはオンラインポートフォリオについて。キャリアサービスの担当にボロクソに言われた内容を数倍盛って「非デザインピープルの就職課の奴がこんなところ直せって超ズレたこと言って来るんですけどぉー、ありえなくないですかぁー?」と文句を言ってみたところ、当然ながら「今のままで進めろ、デザインピープルを代表して私が許可する」とお墨付きを得たので、キャリアサービスの意向は無視することにした。こういうときはエミリーが超便利だなと思う。P社のインターン応募についても、希望年収を書く項目があり、相場を聞いて空欄を埋める。「ゼロって書かないほうがいいわよ。うーん、このへんかなー。でもあなたEditorとして8年もキャリアあるんでしょ。もう一段階上げてみたら。もちっとイケんじゃねーの……よし、それで送っちゃえ! いいよいいよ!」的な。自分が成功者だという自覚があるので、他人の未来にも無責任にポジティブなこと言ってくる。
夕方からタイムズスクエアに映画『シン・ゴジラ』を観に行く。一番ゴジラっぽい色のセーターに、無人在来線爆弾を意識した銀のブーツ。16時20分の回。素晴らしかった。1週間限定での北米公開、西海岸およびギークコミュニティからは大入満員&絶賛の嵐だというふうに聞いていたけど、やはり芝居の街ブロードウェイは映画館自体が閑散としていて、平日夕方だと客入りも5〜6割。ほとんどが無職にしか見えないオタクのおっさんで、日本人がちらほら。まぁでも周囲のことはどうでもいいんです。めっちゃ笑ったしめっちゃアガッたし、日本に生まれ育って戦争を知らず震災を知って今はあの国の外側に住んでいる、そんな自分の境遇とさまざまなことを重ね合わせながら、ものすごく楽しめた。詳しくはそのうち「北米東海岸からゴジラを観る」というようなコラムにまとめますので、ここではまず、このくらいで。興奮さめやらぬままビールを求めてヘルズキッチンをうろうろし、結局電車で家の近所まで戻って来て、カフェジタンで大盛りのクスクスをシェアする。ずーっとしゃべりっぱなしで、喉が痛い。あの、放射線流ぬぼぼぼぼぼぼ、ってやる感じ、あれを真似して治したい。
『シン・ゴジラ』、特撮についても庵野秀明についてもまったく知らない夫のオットー氏(仮名)にまで刺さっているのが面白く、復習を兼ねてエヴァやナディアの神回の動画など見せていたらあっという間に深夜。土曜になっても興奮が冷めず、Twitterに感想を書いているうちに盛り上がって来て、カウチで療養だ! とばかり「アメリカのシンゴジラ」こと映画『インデペンデンスデイ』(無印)を観る。なんて有意義な週末の使い方なんだろう。大好きなんですよ、この映画。それにしても見事に風邪をこじらせてしまい、咳き込みながらジャイロトニックのエクササイズ、めずらしく酒を飲まずにおとなしく夕飯を済ませる。日曜日、起床と同時に来ました、いつもの「喉風邪」確定。数日前から嚥下のたびに喉の片側と耳の奥が焼けるように痛く話すのも億劫だったのだが、とうとう声帯をやられて完全に声が出せなくなっている。加湿器をかけながら午後までまるまる寝て過ごす。しかしチケットは取ってあったので同じ映画館の同じ16時20分回でまた『シン・ゴジラ』を観る。第四形態を意識したマグマ柄としか形容できない黒&赤のトップスに、黒のヘビ柄型押しボトムス。夫に「もう何年も前から見てる組み合わせの服なのに、ものすごくゴジラ……」と褒められる。マスク、のど飴、その他もろもろ重装備で堪能し、まっすぐ帰宅しておとなしく安静に。日曜夕方回は、リア充っぽいオタクな層で8〜9割方埋まっていた。隣の席はポップコーンを分け合う姿さえ愛にあふれたヒゲクマ系のゲイカップル。
月曜日。もはやシャレにならないレベルで喉が腫れ、耳が痛く、それだけのことで床から起き上がれない。夫に電話してもらい、契約保険会社を経由して「かかりつけ医」になってもらった病院に無理矢理に当日外来予約を入れてもらう。こちらの医療費はマジでシャレにならないほど高いと聞いていたので、昨冬は絶対に医者にだけはかかるまいと辛抱していたのだが……1年も住んでいると逆に「毎月あれだけ高額の保険料を払ってて、初診料がいくらか知らないというのも、それはそれで怖い」という気になってきて、夫と二人、物見遊山でかかってみることにしたのだった。ところがどっこい、予約が取れたことに安心して市販薬を飲みまくり2、3時間どっぷり寝てみたら、なんか……治っちゃった……。明らかに自力で回復できるレベルまで到達したのだが、予約がもったいないので行ってみる。待合室でものすごく細かい問診票や契約書の類にサインする。意識朦朧としてるときに来たらこれだけで倒れそう。看護師による最初の問診と簡単な検査に続き、出迎えてくれた「主治医」は、人間を大きく2種類に分けると指揮者の塩田明弘そっくり。顔というよりは雰囲気や喋り方、己の仕事の愛し方、あと「医者に来ようとしただけで治りはじめた? 初詣、行こうと決めただけでご利益があった、みたいなー?」といった謎の比喩が、人間を細かく256種類くらいに分けてみてもきっと、最後の最後までシオタンと同じフォルダに分けられる感じの先生だった。飛び跳ねて手拍子しながら帰途につく。だいぶ元気になったのでレモンサワーを解禁する。
ゴジラとともに喉風邪と戦い、いっさい宿題をしなかった長い長い週末を終え、火曜日は念のため濡れマスクして登校。「病み上がり」を表明するための武装だったのだが、東京と違ってやっぱり街中に誰一人としてマスクしてる人間がいないので、浮く。浮きまくる。心配されまくる。この温度差は本当に面白い。1限は先週ファイナルプレゼンに間に合わなかった3名が発表を終え、次の課題のためのグループワークに入ったのだが、……12名の生徒のうち3人×3グループ=9名が瞬時にぱっと組んでクジを引いてしまい、気づいたら残されたのは私と、ファイナル遅刻提出の2名だけ。とりあえずクジだけ引こうと席を立った時点でAnnaから「あなたはあそこの2人と組むのよ、よろしくね」みたいに言われる。おわかりだろうか。完全にハブである。先週のファイナルプレゼンで最優秀認定された3名はアイコンタクトだけで1グループ結成。続く中庸組は互いにコミュニケーションスキルを駆使して1グループ結成。そもそも毎週一緒にくっついて座ってる韓国系留学生3名はそのまま1グループ結成して堂々と韓国語でディスカッションを始めている。私だけが「誰からも選ばれなかった」し「誰にも声を掛けなかった」のだった。ちなみに残り2名は、三角スケールが使えず言われた宿題をちゃんとやって来ないとか、いま言われて2回念押しされた指示を3回訊き直すとか、そんな感じの「我が道を行く」2人で、もちろん誰かと組むために声を掛けたりはせず、最初から「余り物チーム」でいいや、と思っているところが、私と違うのだった。いや、まぁ、もちろん、私も日本の学校では、合宿の班決めだろうとディベートのチーム分けだろうと「はー? 誰と組んでも同じでしょー? 仲良しこよしグループが決まった後の、余り物チームでいいよー、どうせ友達とかいねーし(鼻をほじる」みたいな調子だったのですけどね。こちらへ来てからは、一応頑張っていたのよ。だけど、ハブ。課題成績だけならそこそこの位置につけてると思っていたのだが、英語ディスカッション能力の低さで完全に「組みたくない奴」扱い。相変わらず凹まされます、この授業。
8階自習室には今日ももちろん、銀縁眼鏡で氷系能力者の主(ヌシ)がいる。その他に中国人男子のHもいる。4限の授業中、あの自習室はいいよね、という話になったので「ユーはあの、シルバーグラッセズに時々ニットキャップのミステリアスなガイを知っているか、雨の日も雪の日も休暇中でもいっつもあの部屋にいて、ゴーストっていうかファントム・オブ・ジ・オペラみたいなんだ。話しかけてみたいけど、正直ちょっと怖いんだ」と一生懸命説明したのに、新参者なのかHは全然ピンと来ていなかった。それで私は水曜も夕方15時からずっとこの部屋に籠もっていたのだけれども、なんと混雑の関係で、初めて私のすぐ隣席に来たのよ、マスター。それだけでドキドキしちゃうのに、ノートPCを置く傾きの関係で、ずーっと私のほうを向いて作業してるのよ。時々じーっと見つめられてるんだけど、見つめ返すわけにもいかず、めっちゃ気が散った。このところ読んでる分厚い本はヘーゲル、初読らしきその本と読み古した資料をつきあわせながら何か書いてる。タッパーに紅茶セットを持参して頻繁にお湯をさし、18時台に夕飯代わりのスコーンを食べ、20時に顔見知りに声を掛けて帰宅していった。それだけのことで「推定英国紳士……」と思いつつ、ほぼ同じ時刻に夕飯代わりのカプチーノとチョコレートクッキーを食べ、23時帰宅。卒業までになんとかあの「帰りの挨拶」を受けるまでの仲になりたいものですが、相変わらず教員なのか学生なのかすら判然としない。
ところで水曜2限に行くと、DavidMが不在でSallyという新しい先生が来ていた。代講かと思ったら、なんとファイナルまでずーっとSallyが我々のコマを受け持つのだという。Davidどうしちゃったの!? と訊いても「私も詳しい事情は聞かされていないし、知っていたとしても教員個人のプライバシー情報なので言えない」という返事。「ひとまず命に別条はない」とだけ説明されたので、逆説的に、不意の事故による体調不良か何かで、回復を待っているとファイナルの面倒をみられないとか、そんな感じか。木曜2限で今週も華麗に欠席をキメていた意識高い美女Aにその話をしたら「なによそれー! 残念だわ、私David好きだったのに」と雑談が続く。そう、みんなとことんまで投げやりな授業態度だけど、Davidのことは嫌いじゃなかったのだった。「でもさーA、新しい先生はスマホもノートPCもお咎めなしだよ?」つったら、「フュー! やったね!」と額の汗を拭う仕草。
木曜4限はドミちゃん課題3(大学案内)のファイナルプレゼンテーション。前日の夜に修正点を洗い出し、一度寝て、午前中はディテール修正。家のプリンタで試し刷りしてサイズの確認を済ませる。その後、昼の授業中はずっと、ある部分について「土台から新規に全面作り直し」を想定していたのだけれど、15時を回って残り4時間を切った時点でなんかもう何もかもどうでもよくなってしまい、16時半くらいまでに何度か試し刷りを繰り返し、その後、17時半くらいまでかけて両面貼り合わせなど細部を丁寧に仕上げることに終始する。気にしていた土台は、結局、古いバージョンのまま。しかしながらいつもバタバタ直前まで作業している通常より精神的余裕をもって教室へ出向き、つつがなく発表を終える。本当は毎回こうしたほうがいいのだと、頭ではわかっているんだけどね。ちなみに「どの手順にどこまで時間をかけたか、作業時間のログを取る習慣をつけろ。簡単な日記を書くのが早い」と言われたから細かく書いてます。ドミちゃん、みてるー?ノシ 発表になった課題4はフィールドワークとそのプレゼンテーションから始まるというので、珍しくスローダウン。この隙に、課題2の泣く子も黙るファイナルファイナルファイナル仕上げを済ませなければならない。
今週から、あちこちの企業のデザイン部門へインターンシップの応募を開始している。ウェブ上でオープンエンドで募集中、すなわち「どうせ看板を掲げっぱなしなだけで実際には定期採用枠がなく、真面目に求人してないのだろう」と思っていた、V社とE社から、履歴書を送って半日と経たずに「今週来週すぐ会いたい」と連絡が来てビビる。ハナから面接の練習台のつもりだったV社はさておき、E社のほうは、数日のアルバイトでも経歴にここの社名を書けるだけで本望だと思っていたような高嶺の花である。放置プレイで半年後にのんびりお伺いメールでも書く感じかと思っていたので、マジでビビる。本当に就職活動がスタートしてしまった……。それで、考え方を変え、「あちこちで面接の練習をして落とされまくり、英語圏での就職活動に耐性をつけてから〜」と逃げ腰で先延ばしにとっておいた「dream job」系の大企業から先に応募することにした。うかうかしてると別の誰かで枠が埋まってしまうかもしれないし、もし万が一すぐにインターン先が決まってしまうようなことがあったら、それがフルタイム拘束だったりしたら、後から本命企業へ出願するのがどんどん難しくなる。それに、憧れのブランドには断られるなら先に断られたほうが、気兼ねなく気負いなく次へコマを進められるに違いない。しっかし、授業内グループワークでさえ意思疎通の問題でハブられてるのに、採用面接なんか通るんかいね!? どこまで詳しく記録をとるかは考えながら書いていくことにする。