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2017-11-05 / リメンバー、リメンバー

31日はハロウィン、私は4時起きで5時からみっちりSkype打ち合わせ。午後にはロウアーマンハッタンでトラック暴走発砲事件、この日は一日在宅だったので一時間ほど気づくのが遅れた。Twitterを見て知る。最初に見たのは、英語圏のニュースを翻訳して日本語で在NY日本人に注意喚起を呼びかけているツイートだった。なんだかこういうことが多い。東日本大震災のとき、海外在住の人たちばかりがとても熱心にニュースを追いかけ、逃げろ逃げろと騒いでくれていたのなど思い出す。渦中にいると気づかない。東側は静かなもので、ハロウィンにしては静かすぎるくらい、実際パレードの出足にもテロ報道の影響が出たとは思う。日本の選挙についての長い長いニコ生特番をタイムシフト視聴して一日が終わった。ニコ生を倍速で観る機能ってないのかしら、いくら中身が面白くても、こんなふうに時間がかかるのだと観る気が削げてしまうよ。この間に、新書が何冊読めたことか、とそういう換算をしてしまう。
1日2日、近所に出かけるついでに、ひざかけやルームシューズといった冬物を新調。無印良品、階下で地味にポスター回顧展をしていて、田中一光作品を拝む。カップルとも父娘ともつかぬ二人組を見かける。女のほうが小柄で、カンケンバッグにベレー帽、そこだけ見ればテロ事件で学校休みになった高校生かなとも思うんだけど、少女の魂を失わず森ガール留年を続けているサブカルおばさんのようにも見える。男のほうは服装に無頓着なおじさんで、意外とこういうのが、ロリ系の日本カルチャー大好きなおしゃれ恋人を連れてるパターンもあるけど、どうかなぁ、あまりにも気の抜けた服装だからやっぱり父娘かな。とまで観察して、MoMAで老眼鏡を選んでいた我々夫婦も、同じように観察されているだろうと気づき、笑う。服装によっては中学生くらいにも間違われるんですよ、私。こんなおとなげない格好をしている奴が夫連れであるわけがないから隣は父親に違いない、みたいな。
シャワーの水温がいつまで経っても30度台くらいから上がらず、もうめんどくさいのでそのまま浴びた。外気温は9度とかで、湯冷めどころではない、身体に当たるそばから水になっていく、実質的には、水浴びである。2年前だったら湯を止めて服を着て管理人に猛抗議して即直してもらったりしただろうけど、2年も経つと「今日は急に冷えたからなー、ボイラーの調子もおかしくなるよねー」とか言いながら風邪を引かぬよう手早く水浴びをしている。この「めんどくさい」駆動の諦念からくる超合理主義とでもいうようなスタイル、すっかりしみついてしまった。同じ局面において、事態の解決と謝罪と修理をじっと座して待つような日本人を見たら、「けったいやなー」と思うまでになっただろう、たぶん。芯まで冷えた髪を乾かしながら、くしゃみをしながら、予防のためにと早々に風邪薬を服用しながら。一切の希望を捨てて、たまのラッキーを喜ぶ。身体には悪いだろうけど、精神衛生にはよい。翌日には直っていた。
3日は午後まるまる外回りで忙しく、あちこちで人と話し続け、夜に夫と合流したときハイテンションの過呼吸みたいになっていた。初めて会った長い髪の女の子に、正しいブローの仕方を教えてもらう。37歳にもなって髪の乾かし方も知らない。美容師にはいつも「ブローしなくて済む髪型にして!」と頼んでいるのだけど、結論としては「ブローしなくても済むショートカットなんてありません」ということでした。「ニューヨークの人は、髪型に対してとてもコンサバティブ。ちゃんとこまめに巻いて手入れをする人も、ろくに手入れせず鉛筆をかんざし代わりにするような人も、豊かな長い髪でいるということをとても大事にしている」という話が面白かった。たしかに、髪にコシのなくなった年配の女性でもボブくらいの長さはキープしている人が多いし、加齢とか出産育児とかに関係なく、オシャレで短い髪にしてこまめにメンテナンスするのは、日中韓の女子くらいでは、とのこと。「髪が短いだけでオシャレに見える」というのは日本でもよく言われるけれど、こちらの、とくに若い子は、たしかにショートカットが圧倒的に少ない。でも少ないショートカットの中では、坊主やオカッパといった攻めのスタイルが東京よりも圧倒的に多い。
4日は「日本人若手勉強会」の講演会。「雑誌編集者の未来」と「情報の整理整頓」と、あとニューズウィーク流仕事術、みたいな話。「日々のインプット方法を教えてください」という質問が、表現を変えて3つ4つは飛んできて、みんなそんなにインプットに悩んでいるのか、私は正直アウトプットにしか悩んだことないよ、と驚きつつもなんとか答える。もしかして講演内容がズレてたかな、と後悔しはじめたところに、同業の知人から聞いた感想の第一声が「若いね!」だった。「まぁ、若手勉強会だからね……」と応じながら、自分がもう「若手」ではないということをひしひし痛感する。ズレの正体はそこであった。求められて登壇して質問を受けたのなら、もっとちゃんとアドヴァイスっぽいことを言ってあげなくちゃいけない立場なのだ、本当は。しかし私は誰かの部下だったことはあるが上司だったことは一度もなく、圧倒的にそういう形態で「仕事観」を語り聞かせる経験が不足している。向いてないことしたなー、と思いつつビール飲んで唐揚げ食って今日会ったばかりの人んちに押しかけてシャンパン飲んでワイン飲んでドランクンヌードル食べてまた別の人んちに押しかけてビール飲んでビールせしめてちょうど来たタクシー飛び乗って帰ってそのまま寝て起きたら二日酔いがひどく昼まで起き上がれず、だからもう「若手」じゃねーっつってんだろーがよ、なんだその飲み方は、と自分で自分にツッコミが止まらない。
本日はガイフォークスデー。といっても英国の行事なのであまり盛り上がらないのかもしれない。ニューヨークの街はハロウィンの後片付けとクリスマスの飾りつけで忙しい。でも、子供が多く住む地域では人形燃したりするのかな。ハロウィンもガイフォークスも「西洋」のもの、とざっくり捉えていたが、実際に住んでみると、こうした温度差に拍子抜けすることもある。セントパトリックデーやシンコデマヨのほうが大騒ぎ、というのには、街の歴史も影響しているのかもしれない。雨の日。まだ冬用のウールのレインコートには早いけど、もう夏用のレインコートを着ることはないだろう、という寒さ。サマータイムの終わり。