2023-04-03 / 坂本龍一とTwitterと私

4月1日。意気揚々と偉そうな日記を書いたのに何一つ進まない日だった。1日70項目ほど立てたToDoリスト(立てすぎ)のうち、夜21時になっても1つしか終わらず、慌てて今もう1つ潰し、やっと2つ。得意な雑事は数えていないので、「苦手なやるべきこと」から逃げたのが可視化された一日。バリバリ音を立ててタスクをこなせる「自動でスイッチが入る」日と、何を頑張っても安息日にしか使えない「勝手に主電源が切られる」日とが、数日おきくらいにやって来る。

SNSを眺めていて「みんな頑張っている、頑張っていないのはおまえだけ」という気分になったところを見ると、私にもまだ「頑張りたい」気持ちがあるようだ。しかし、焦りすぎるのもよくないのでSNSはほどほどにしよう。昼ごはんに初めて作ったレシピは何か創作のネタになるかな、とメモを取る。これでまた「仕事と別のアウトプットをする」というタスクを1つ消化。そんなこんなで、寝る前になんとか9つ消化。

4月2日。坂本龍一の訃報。高橋幸宏の訃報に続き、世界中が沈んで見える2023年の春。精力的に活動されていた方なのでみんなこぞって教授とのツーショット写真など投稿しているが、Twitterに書いた通り、私はずっと自分の概念上の「育ての父(の一人)」くらいの感覚でいたので、幸宏さんのとき同様、そうした波に乗れずにいる。以下は1月15日のtweet。

朝起きたらユキヒロさんの訃報を耳に他のことが手につかない。個人的に、一番最初に見た情報がこの矢野顕子さんのtweetだったことに少し救われた気持ちです。
https://twitter.com/Yano_Akiko/status/1614320219241037833

続)受けた影響があまりに多大すぎて気軽に小ネタ貼ったりできない。一人で「LOVE TOGETHER」始まりのプレイリスト聴く。ご冥福をお祈りします。心から。きっと戻ってくると信じていたのは御本人がそのように発信していたからで、言ってどうなるもんでもないけど、もう会えないなんて本当に悲しいな。

続)「遠く崇めていた私などよりもっと近しい方々の悲しみいかばかりか……」から「ちょっと訃報出たくらいで『高橋幸宏と私』作文なんか書いて140字ごときに収められるわけないだろそんなことできればとっくにやっとるわ!」のフェーズに入ってしまった、今後ともgoes forever精神でやっていきます。もちろん他のみんなのは読む。読みたいから。それと自分が同じにできないこととは別問題だ。

続)「先を歩く楽しそうな大人」たちがいてくれたおかげでそれを追いかけて私はここまで生きてこられた。自分もそのようになりたいと思っている。物心ついた頃からずっと。

https://twitter.com/okadaic/status/1614402059071258625

坂本龍一さん、いわゆる相互フォローの関係であり、お目にかかったこともあり、たまたま知り合った私のような者にまで、驚くほど長い長いメールの返信をくれる人だった。正直こちらがそのエネルギーに負けてしまう感覚にも、たびたび陥ったものである。求心力が強い人はみんなそうとはいえ、一生で直に出会う数には限りがある。ただのファンだが、うまく距離を掴めないままだった。しかしそれもまた、肉親同士にだって起こりうることであり、そうして人はファザコンになったりならなかったりする。そんな個人的な出来事まで含めて勝手に親戚のような気分でいた。心より哀悼の意を表します。

2023年、なんという年だ。ご冥福をお祈りします。

続)幸宏さんのことは「わたしの伯父さん」くらいに思っていたが、それは坂本龍一のほうを「わたしの(耳の)育ての父(の一人)」くらいに考えていたからもあって、そしてその感覚は我々にとってさほど珍しいことでもないだろう。いろんな音が流れ込んでくる、開け放たれた、けして閉じない窓だった。

続)うちの両親は何者でもないがたまたま彼らと同世代に生まれ、これこそが自分たちの時代の音楽だ、ここんちの子はおまえと同い年なんだよ、と我が物顔で子に聴かせるので、私はほとんど見えない親戚に会うような感覚で彼らの音楽を子守唄に育った。その一人一人を送るときの気持ちは言葉にならない。

続)我ながらものすごくパーソナルな話で、それ以上は書けないが、最後の連絡が中途半端な尻切れになってしまったことを悔やんでいる。でもきっと私はこれから肉親とさえもそんな別れ方をしたりするのだろう。私の人生に(生まれたときから!)ずっと閉じない窓が開いていてよかった。有難いことです。ありがとうございました。

続)私は実家の子供部屋で文字通り一日中ずっと坂本龍一のことだけ考えてる時間とかあったんですけど、そしてそれは主に「いかに倒すか」みたいな物騒さだったんですけど、や、これは世代とか関係なく、音楽家を志すか否かもあまり関係なく、みんなそうなのでは? 違うの?「親」ってそういう話です。

続)そんで生まれて初めてライブで観たときから「いやいやいやいや、ワレ、倒そうと思っとったんか? コレを?」と問い直すまでがワンセット。そういうものを一つ一つ喪ってからの大人の時間をどのように生きていくか、何度経験してもいつまで経っても、ぽっかりと心細く頼りない気持ちになりますね。

続)親がレコードを買わなくなり、んもーじゃあ以後の新譜は私がCDで管理する! となったのが1992年前後で、先日90年代半ばに録ったラジオのテープが大量に出土し、多くは時差ボケでプロモーションさせられて超不機嫌みたいな内容で、ひでえなあ、と笑った当時の教授の年齢に今もう自分がなっている。

そう、これです。「親はすっかり信者で坂本龍一に勝てないだろうけど子の私なら出会い頭に目潰しかませばワンチャンあるのでは?」とかずっと考えていた子供部屋で。もちろん目潰しというのは比喩表現で、そのために読書履歴などを血眼で追いかけたりしていたという意味です。
https://twitter.com/wonosatoru/status/1642518627495858177

続)そして私が好きになったもう少し下世代のミュージシャンたちはみんな戦闘力高く面構えが違うYMOチルドレンだったので、「おっ、いてこましたれ! タマ狙えタマ! SIDE-B魂や!」と思いながらそちらも聴いていました、子供部屋で。なんで追悼なのにこんな物騒なの。多大な影響ってそういうものよ。

https://twitter.com/okadaic/status/1642508967132778496

昼ごはんはツナとたまねぎのアーティチョークソーススパゲティ。穏便な味。「一番好きな曲」なんて選べないのだが、急に「sayonara」が聴きたくなって流していた。でも日本語詞だと気分が塞いできたので「Moving On」も流した。新譜としてリリースされた中学生のときから人生の節目にはよく聴いていて、生まれ育った場所を離れて一人で生きるという、俺の俺による「上京物語」プロジェクトの主題歌の一つだし、あるいは少女性の象徴みたいな楽曲で、大人になった今なお、自分にとってこのループは二つ目の心臓の鼓動のように響く。あの「サカモトサン? サカモトサン?」という箇所、「heartbeat」の「もーしもーしもーしもーし」と一緒によく口真似していた。きっとこれからもする。呼びかけ続ける。

I’ve got a train to catch and I can’t be late
I’m on my way to another state of mine
I’m leaving this one behind

It’s so far from home
I hope that I can make it alone
It’s all looking the same
New rules but a similar game

I’ve decided to tough it out
Giving up, I’ll never go that route
Not me, I have faith in my dreams

ryuichi sakamoto / Moving On
https://music.apple.com/jp/album/sweet-revenge/926711835

2日午後、Twitterのアーカイブリクエストが動いていなかったことが判明したので、以下のようなメッセージを最後に当面デジタルデトックスに入ることとする。Instagram同様、IFTTTのアプレットで投稿のバックアップを取る体制を整えたが、2013年2月から使ってて現在5000ちょっとの項目しか無いデータベースに、今から毎月数千を超えるようなtweetを全部取得してアホみたいに膨れさせるのは、ちょっと嫌だよな。考えちゃう。うーむ。そんなの公式が自動化してほしい。やくめでしょ?(byママドアユーゾッタ)

Twitter、アーカイブデータの取得に失敗した(2023年3月末申請)。Failedという表示のまま切り替わらず、再申請など次のアクションが起こせない。季節ごと、最近は毎月、同じ手順でtweetを保存してるのだけど(最後は2023年2月末)、こんなエラーメッセージが出たのは初めてで、とても嫌な予感がする。

続)問い合わせフォームもリンク切れで不穏さしかない。仕方なく自分で辿って直に請求したが、アカウントに紐づいた身分証明書を添付しろと言われてまた嫌な予感しかしない。今までVerified申請で身分証明の添付ファイルを何度も送ってすべて却下されたのを思い出す。返事が来るだけマシだったのかな。

続)私は以前TwitterBlueに課金して、あまり意味が無いと感じて解約した。有料プランは安定して動くかもしれないが、「無料プランのユーザーが自分のデータエクスポートも好きにできないサービスは極力使わない」という信条からいくと、問題解決まで今と同じペースで連投するのは当面控えておきます。

続)慌てて久しぶりにAll My Tweetsを使ってみたが、3200件制限があると私の場合は二週間分程度しか遡れないので、すでにして取得漏れがある。やんなるなぁ。Twilogが動いているうちに退避させておきます。問い合わせに返事が無いのはまぁ許せても、利用者が手元でアーカイブ取れないのは本当にダメ。

続)他は何が起きてもいいけど、こればかりは銀行に金を預けるのと同じ話なので、私は私のバックアップ問題が解決するまで利用を控える。こんなことで長年続いたTwitterとの関係を終わりにしたくないが、マジで嫌な予感も強いし。問い合わせへの返信とダウンロードボタンの復活、お待ちしております。

続)お、Download FailedボタンがRequesting Archivesに切り替わったかな!? いやしかしスマホアプリとブラウザで同じ画面の表示が違うのも大問題なのでは?? 私は日曜午後の貴重な時間をめちゃくちゃ古典的な手法でのログ取得作業に費やしているぞ。まったく信用ならないからな。ヤんなっちゃう。

この問題、ほんの数日で片付くかもしれないし、片付かないかもしれない。いい機会なのでデジタルデトックスすることにした。Instagramは投稿単位のバックアップが稼働中なのでおそらく更新を続けるはず、そちらへどうぞ。同じバックアップをTwitterにも仕込むことにした。これはその試行tweet第一弾。

https://twitter.com/okadaic/status/1642569675983798272

イーロンマスクに買収された後のTwitterはどんどん動作が不安定になっており、先月末のAPI仕様変更でとうとう「Twilog」も使えなくなる。私は長年、「最後の一人になってもTwitterに居続ける」と嘯いていたのだが、さすがに少し考えを改めないといけない。16年も手に馴染んだプラットフォームからすぐに離脱するのは難しいため、そのプラットフォームができる以前にしていたこと、「インターネット上に、ただ在るというだけの、公開日記形式の文章」の愉しみに何度でも立ち返って、「次」を見越した態勢を整える必要がある。

そういえば1990年代半ば、15歳前後の私にとって、「インターネット」という概念とのファーストコンタクトは「なんかニューヨークの坂本龍一がハマっているらしい、よくわからない最先端の、スゴイもの」だった。もちろん当時の実家にはパーソナルコンピュータなどなく、私は数学のテストで赤点を喰らいながら、感熱紙を吐き出すしか能が無いワードプロセッサでせっせと小説を書いては、深夜ラジオをエアチェックして翌週に聴くべき音楽がなんというアーティストのなんという曲かを教わって手書きで手帳にメモし、そして、10代で作家デビューして坂本龍一に帯の推薦文をもらうことだけが目標の、あらゆる意味で文系でアナログな高校生だった(お若い方は篠原一なんてもうご存じないですよね!)。

『ハジの多い人生』はじめエッセイにもさんざん書いたことだが、「蘭学を学ぶには長崎へ行くしかない」と同様、「インターネットをするには、インターネットの学校に行くしかない!」という時代だった。オペラ『1999』を観に行く頃にはSFCの学生で、自分が村井純というわけでもないのに「出遅れたけどなんとか追いつけたぜ」くらいに思っていた。見たことも聞いたことも触ったこともないのに、どうして「インターネット」なんてものにそこまで情熱を傾けるべきだと確信していたかというと、元を辿れば私の場合は「坂本龍一がそう言ってたから」なのだった。親の教えなんか全然アテにならないけど、未来のことは教授に聞けばいいと思っていた。そうした存在を喪うのは哀しい。

ハジの多い人生

Mine Has Been A Life of Much Margin
2014/2020 _ JP

巡り巡って2023年、4月3日。冒頭に書いたように「生産性の妨げになるほどSNSを見るのはほどほどにしよう」という気分が(今更!)高まってきたところへ、訃報に触れて「坂本龍一が開いた思索の窓としてのインターネットってこんな使用法でよかったんだっけか?」と厳しく問い直すとともに、今までは数日で送られてきたアーカイブリクエストの返信がもう2週間近く途絶えているところで、今日のTwitterで何が起きているかというと、「青い鳥のロゴがDOGEの柴犬かぼすちゃんに変わった!」とキャッキャ大騒ぎである。

202304_Twitter_DOGE

悪いけど、エイプリルフールも明けているし、2004年くらいのはてなや、2007年くらいのTwitterでなら楽しめたけど、2023年のTwitterでは、いっこも面白くないんだよ。インサイダー取引疑惑云々以前に、かつて「ここが我々の未来だ」と感じられたその土地に立つ国旗が引きずり下ろされ、後から来たつまらない奴に狼藉三昧されているという気分にもなる。私は私の財産をずっとTwitterに預けてきた。まずはその信頼関係の継続が確認できないことには、到底あそこで「新しいこと」をつぶやく気にはなれない。ひとまずはブログの更新情報だけを流し、千のナイフを研ぎながら、嵐が過ぎるのを待つ。

しかしTwitterと違って文字数制限がないと何でもかんでもこんなに長く書いちゃうの、これはこれで大問題では? 本当に早くどうにかしてくれ。


続報。Twitter側の問題で、今日の午前中からIFTTTも走っていないことが判明。つまりログは取れていない。アクションの仕様的には新APIとは関係ないはず、ですよね? ただの障害ですよね? いいかげんにして!

米ツイッターが4月から削除を始めるとしていた、利用者が本人であると示す「認証済みバッジ」をめぐり、米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)の公式アカウントから、実際に認証バッジが消えた。

ツイッターがNYTの「認証バッジ」を削除 サービス料支払いを拒否:朝日新聞デジタル

アイキャッチは「なんか深川に似てるなぁ」という理由で我が家に飾られているメアリーブレアの絵。

White Cat by Mary Blair
White Cat by Mary Blair